「――さァ5分たったよ。門が二つ開いてるハズら!!」
「突撃っ!突撃っ!!」
先発で飛び出していったフランキー一家が門を開けてくれるのを待つロケットマン。
車内にココロの声が響き渡った。
「ねえそげキング、この冷気の棒の使い方だけど…」
「ええい私に聞くな」
「それ何だ?」
「これは指輪と同じ物質で作られたブレスレットだ。錬成用の」
チョッパーが指さしたのはの腕にはめられた銀色に光る太めの腕輪。
錬成の中でも特に金属錬成を得意とするならではの武器の一つだった。
指輪では質量に限界がありある程度までならば対応出来るもののこれから先の戦いを見据えてそちらも使用する事にしたのだ。
「へぇ、綺麗ね…真ん中に赤い石がはめ込んである」
「それはちゃんの世界の宝石かい?見た事ねェ色合いだな」
チョッパーと共にナミとサンジもの腕輪を覗き込んでくる。
ナミの一言には一瞬肩を揺らしたがそれを隠してただ微笑んでいた。
…この赤い石がただの宝石だったらばどんなに良かった事か。
その赤い石の持つ意味を知っているのはだけ。
使用する事に躊躇いがないかと言われれば嘘になる。
軽く息を吐きだしたの背中がじわりと痛んだ。
鉄柵に囲まれたエニエス・ロビーに向かって進むロケットマン。
だいぶ速度の上がってきた所で車内にココロの声が響いた。
「おめェら作戦変更だそうらよ!全員車両にしっかりとしがみつけと言ってるよ!!」
「ん?」
作戦では先行したフランキー一家が門を開け、ロケットマンの先端部分で待機しているゾロが鉄柵を斬るというものだった。
それが走りだしてしまった今になって変更するのだという。
慌てたサンジが窓から身を乗り出してゾロに向かって叫んだ。
「おうアホ剣士!何かあったか!?」
「正門を閉められた!!」
「何だと!!」
「それはまずいんじゃないか?」
の言う通り、状態は非常にまずい。
止まれるはずもないロケットマン、このまま行けば確実に正面衝突は必至だった。
車内の雰囲気は一気に変わりナミとチョッパーがにしがみついて絶叫する。
「大変だー!門にぶつかるぞー!!」
「えーっ!どうすんだー!!」
「よけてよけてココロさーーん!!」
もう鉄柵は目前まで迫っている。
ロケットマンの車内はナミ達の絶叫に包まれていた。
その絶叫を背後に聞きながらもまた窓から身を乗り出してゾロに向かって大声を張り上げた。
「ゾロどうする?私が全員を抱えて飛んでも構わないがこの人数では…もって数秒程度だ」
「心配無用…道はある!!柵をつっぱれカエル!!」
の声に軽く答えるとゾロが先端部分に共に待機していたヨコヅナに掛け声をかけた。
目前に迫った鉄柵に向かってヨコヅナが手を張り出す。
ヨコヅナの力によってエニエス・ロビーの鉄柵はぐにゃりと斜めに曲がった。
だが、決して無くなったわけではない。
ただ鉄柵がほんの少し前のめりに曲がっただけで道は開けていないのだ。
ロケットマンは停まる事が出来ずそのままヨコヅナが曲げた鉄柵へと乗り上げていった。
「まさか…!この速度で鉄柵に乗り上げたら…!!」
速度の上がっていたロケットマンは鉄柵に乗り上げ、そのままの勢いで空へと飛び出した。
「海列車が…!!飛んだァアーーー!!」
高く飛びあがった海列車は正門を軽々と飛び越えエニエス・ロビーへと侵入していく。
ただし、道のない空中へと投げ出されたままで。
「うわああああ!!死ぬーーっ!!」
「えーー!死ぬのかー!?」
「打ち所が悪くなければ命の危険はないと思うが…」
「何呑気な事言ってんのよ!滝の大穴があるのよ?バカー!!」
「ナミさんちゃん早くおれの胸の中へ!!」
大パニックに陥ったそげキングとチョッパーがギャーギャーと騒ぐ。
腕を組んだまま無表情で事の成り行きを見守るの肩をこちらも大パニックしたナミがぶんぶん揺する。
こんな状態でも目にハートを浮かべて両腕を広げるサンジを押しのけてナミがゾロに向かって叫んだ。
「ゾロあんた着地の事考えてあんでしょうね!?」
ナミの叫びにどっしりと構えたまま正面を見据えるゾロの姿は何だか頼もしく見える。
その姿に小さな希望を寄せるものの、その希望は一瞬にして打ち砕かれる事となった。
「任せろ!!……運に」
「運任せかァー!!」
凄まじいほどの速度でエニエス・ロビーへと落下していくロケットマン。
正門を乗り越えた時、の目に映ったのは信じられないほどの巨人の姿だった。
落下している事よりその巨人の大きさに呆気を取られるを乗せたロケットマンはその巨人の背中向かって突き進んでいく。
襲いかかる衝撃に備えは瞬時に羽を出すと出来るだけ広げ全員を抱え込んだ形で床に伏せる。
その瞬間、ロケットマンは巨人の背中に突っ込み物凄い衝撃と共に何とか着地した。
羽を広げてみれば、何とか全員無事なようでほっと息を吐きだした。
しかしよく見ればサンジがいない事に気づいたは慌てて車内を見渡したがその姿は見つからない。
まさか車外へ吹っ飛ばされたかと思い外を覗けば、そこにはピンピンしているサンジとゾロの姿を見つけ今度こそ安堵のため息をつく。
「ナミ、チョッパー、そげキング、大丈夫か?」
「ええ…何とか」
「生きてたー!!」
「ありがとう君」
「いや、それより早く車外へ出よう」
全員特に大きな怪我もなく、痛む場所もなさそうだ。
の言葉に頷きチョッパーとウソップが一歩踏み出した時、外から声が響いた。
「見ろ!!あの列車の中からまだ仲間が!!」
「ばれた!!」
「まだいる筈だ!!出てくる前に吹き飛ばせ!!」
「…走れ!!」
「おい待て!!中にはまだナミさんとちゃんが!!」
が叫んだ瞬間、ロケットマンが衝撃で揺れる。
外でサンジの大声が聞こえた気がしたが答えている暇はない。
四方八方からの銃撃で車内は盛大に煙に包まれた。
チョッパーとそげキングは足を踏み出しかけていたので衝撃によって外へ吹っ飛ばされてしまった。
周りの鉄製品をかき集め簡易的な盾を錬成したはナミと共にじっと銃撃が終わるのを待つ。
しばらくすると突然声が響き銃撃が止まった。
「やめろー!!お年寄りらぞー!!」
「子供と小動物だよーっ!か弱いよーっ!!」
「麦わらの一味に脅されて列車の操縦させられてたよーっ!!」
銃撃が収まったのはどうやらココロ達の機転のおかげのようだった。
完全に銃撃が収まったのを確認してとナミは静かに車外へ脱出する。
と同時にナミが武器を取り出し何かを始めた。
不思議そうに見つめるの上部に雲の様なものが出来ていく。
それが雷雲だと気づいた時には既に雷が不特定多数目掛けて襲いかかる所だった。
目の前の惨劇に一瞬ひきつった笑いを浮かべ、は自分が標的にならなかった幸運に感謝した。
見れば随分な数の海兵達が黒コゲになって倒れている。
その中にはゾロとサンジの姿もあったが、気にしない事にした。
どうせ放っておいてもすぐ復活するだろう。
がそう思った通り二人は瞬時に立ち上がるとこちらへ駆け寄ってきた。
文句を言うゾロにナミとに向かってハートをまき散らすサンジ。
チョッパーとそげキングもどうやら落雷を免れたようだ。
ようやく全員でエニエス・ロビーの地に足をつける事が出来た。
ギャーギャーと騒ぐところを見れば皆元気一杯というところだろう。
「――ところで先に突っ走ってったあのアホはどこにいるんだ」
「さァこの島も狭くはないから探すとなると…」
ナミが言いかけた瞬間、前方で建物が崩れ破壊音が響き渡った。
海兵の怒号が飛び交い、土煙りが上がっている。
「絶対あそこだ」
「だろうな。ではとりあえず目指すはあの場所という事だな」
の言葉に全員が視線を交わらせ頷く。
「それじゃ…追いかけるか」