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跳ね橋が下りるのを今か今かと待ちわびる達を邪魔するように突如として跳ね橋の下部分で大規模な爆発が起こった。
爆発の衝撃により下りかけていた跳ね橋が止まる。


「跳ね橋が止まった!」
「邪魔しやがって!誰だァーっ!!」


跳ね橋が下りない事には先に進めないのだ。
苛々と下に向かって叫ぶルフィ達を横目に仮面の男がロビンを連れ動き出そうとしていた。
早くしないとまた達から見えない所へと連れて行かれてしまう。


「ロビン!」
「取るに足らんあんな海賊!こっちにゃ暗殺集団CP9がいるんだ!兵器復活をもくろんだ学者の島の生き残りニコ・ロビンと
 その兵器の設計図を受け継いだ男カティ・フラム、この大権力を握るチャンスをみすみす逃してたまるか!」


高笑いをしロビンを連行しようとした仮面の男の前にフランキーが立ちはだかる。
達からは距離があり詳細なやり取りが汲めない。
そわそわとロビンに視線を送る達にとって酷くもどかしい時間だ。
跳ね橋はまだ動こうとしない。

フランキーが紙束の様なものを仮面の男の前に掲げた。
それを見た仮面の男とCP9達の顔色が変わる。どうやら重要なものらしい。
フランキーの言葉は小さく達までは届かないがそれでも雰囲気は伝わってくる。
おそらくあれはフランキーが連行された最大の理由となっているものなのだろう。
彼らの顔色を見ればそれは聞かずしてもわかる事だった。

爆音が収まりようやくフランキーの声が達にも届いた。


「なァスパンダ…トムさんやアイスバーグが命懸けで守ってきたものは、もし古代兵器がお前みてェなバカの手に渡り暴れ出した時
 ……もう一つの兵器を生み出しその独走を阻止してくれという設計者の願いだ!ニコ・ロビンを利用できれば確かに兵器を呼び起こせる!
 危険な女だ。だがこいつにはその身を守ってくれる仲間がいる!」

「だからおれァ賭けをする。おれが今この状況で設計者の想いをくんでやれる方法があるとすりゃ一つだ」


仮面の男の喚き声が聞こえる。
その直後、フランキーは掲げていた紙束を右手で滝の方向へと高く上げ、口から大きな火を噴いた。
見ていた全員が声を上げる間もなく紙束は真っ黒な塵となりひらひらと風に舞う。
青ざめた表情を浮かべるCP9の面々に、怒り狂ったように叫ぶ仮面の男。
ロビンさえ驚きの表情を浮かべていた。


「これで兵器に対抗する力は失くなった!ニコ・ロビンがこのままお前らの手に落ちれば絶望だ!
 そして麦わら達が勝てばお前らに残されるもんは何一つねェって事だ!おれはあいつらの勝利に賭けた!」


フランキーの大きな叫び声には口元に小さな笑みを浮かべた。
彼は自分達に全てを賭けたのだ。
自分達以外誰もが無謀と思っているこの戦いに、彼は達が勝つと信じてくれているのだ。


「勝たなくてはならない理由が増えたな」
「ああ」


ぽつりと漏らしたの言葉にゾロが頷く。
ゾロもまたフランキーの気持ちを汲んだのだろう。
フランキーの取った行動により緊迫した空気が流れる中、跳ね橋の下方から声が響いた。


「アニキー!フランキーのアニキー!!」
「アニキ助けに来たわいな!ソドムもゴモラも頑張ったんだー!!」
「アニキおれ達と帰りましょう!」


緊迫した空気を破ったのは跳ね橋を下ろしに行ったフランキー一家だった。
わいわいと声を上げフランキーの無事を喜ぶ彼らの声は明るい。
彼らの声を聞いたフランキーの目から大量の涙が溢れ出す。
それを見た彼らは更に大声でアニキコールを始めたが、事態が事態だ。
感動の再会を演じている暇などない。


「うるせェお前らァー!!ロビンが待ってんだ!早く橋をかけろ!」


完全に自分達の世界に入り切ってしまったフランキー一家達に対しルフィが大声で叫んだ。
その声にハッとした達もまたフランキー一家に対し叫び声をあげる。


「あァそうだなさっさとしろてめェら!」
「そうよね!あんたら急ぎなさいよブッ飛ばすわよ!」
「正直CP9よりナミの方が恐ろしいから早くした方がいいぞフランキー一家!」
「そんな取りとめもないナミさんもちゃんも好きだー!!」


フランキー一家に負けず劣らずギャーギャーと騒ぎ始めた達の声が響く。
その声は全ての不安を振り払ってくれるかのように明るい。
まるでここが敵地である事など関係ないという様子だ。
今のペースは完全に達にある。
戦いは気持ちが大事だ。勢いに乗っている方にツキが回ってくる事が多い。
実力が同等、もしくはこちらが劣勢だとしても精神力で多少の戦力を上げる事は可能だ。

司法の塔にいるフランキーが達に向かって大声を張り上げた。


「麦わらァ!!子分達が世話んなった様だな…今度は棟梁のこのフランキー様がスーパーな大戦力となってやる!」
「勝手にしろォ!おれはまだウソップの事根に持ってんだからな!!」


その言葉にはルフィの隣にいたそげキングに視線を移した。
言うつもりはないらしい。
他の面々も口を噤んでいるという事は言う必要はなさそうだ。
そげキングから視線を外し再びが前を向いた瞬間、フランキーの後ろに仮面の男が見えた。
危ないと口を開きかけた時には既にフランキーの体が宙を躍り真っ逆さまに滝へと落ちていく所だった。


「うわァー!アニキー!!」
「アニキが滝へ落ちるー!!」


フランキー一家達の叫び声が響き、フランキーの体がどんどん落下していく。
下が見えない程の滝だ。落ちればまず助かりはしないだろう。
このまま放っておくわけにはいかなかった。
一息吐きだしたは自らもまた足を踏み出す。


「……まったく世話がやける」
!!」
ちゃん!あんなアホの為にっ!!」


フランキーの体が宙を舞った直後も滝へと体を躍らせた。
今度はフランキー一家達の絶叫に交じってルフィ達の絶叫も共に響き渡る。
の行動にCP9達もまた滝を覗き込んだ。


淡い光に包まれた真白い大きな羽がふわりふわりと柔らかい曲線を描き羽ばたいている。
その羽の持ち主は、
の手にはフランキーの服が掴まれており二人は宙で落下を止めて浮いていた。
その光景に目を丸くする者、そして口元に笑みを浮かべる者。
CP9のに対する警戒感が上がったのは間違いなかった。

一方落下が止まった事に気付いたフランキーが上を仰ぎ見る。
そこには自分の服を掴んでいるの姿があった。
一度海列車の屋根での羽を見ているもののこれほど近くで見るのは初めてで思わず息をのむ。


「お前っ!!」
「死なれたら寝覚めが悪いからな。それに迎えが来た」
「え?」


上から絶叫が響き上を見れば今度はルフィ達全員が飛び降りてくる。
その光景に唖然とするのもつかの間、今度は裁判所からロケットマンが突っ込んできた。
裁判所の壁を突き破り突進してきたロケットマンにしがみつく。
だが、前には司法の塔の壁。
当然開いているわけもなく、ルフィ達を乗せたロケットマンは勢いよく司法の塔の壁へと突撃した。
壁を突き破り瓦礫が崩落する音とルフィ達の絶叫が木霊する。
激しい音を立て司法の塔の壁を破ったロケットマンは横倒しになってようやく止まった。

いち早く立ち直ったフランキーがココロ達を見つけ声をかける。
ココロ達もまた軽傷を負っているものの無事だった。


「よっしゃー着いたーっ!おいおめェらさっさと立ち上がれ!こんなもん平気だろうが!」


瓦礫の山からルフィが立ち上がり雄たけびを上げる。
他の面々は姿が見えない。
どうやら瓦礫の下敷きになってしまったようだ。
それもそうだろう。中に乗っていたわけではなくロケットマンの上に乗ったまま突入したのだ。


「ゴ…ゴムのお前と一緒にすんじゃねェ…生身の人間が…こんな突入させられて!……無事でいられるわけ…」


弱弱しい声が瓦礫の下から聞こえたかと思った瞬間、瓦礫の山が崩れ落ちる。


「あるかァー!!」
「全員無事だ」
「無事で何よりだ」
「お、とナミも無事だったんだな」
「フランキーをロケットマンに乗せた後ナミだけ連れて脱出し穴が開いた所を通ってきた」
のおかげで壁に突っ込まなくて済んでよかったわ。さて行きましょう!」


瓦礫の下から拳を突き出し立ちあがったのはチョッパー、ゾロ、サンジだった。
いつの間にかルフィの隣に立っていたとナミは後から突入したらしくピンピンしている。
とりあえず誰も欠ける事なく司法の塔に着く事が出来た事に安堵する。
この司法の塔にロビンが、そしてそれを待ち受けるCP9達もいるのだ。
全員顔を見合わせ拳を突き出し口元に笑みを浮かべた。

必ずロビンを連れて帰る。
気合いを入れ達は動き出した。








07.12.01

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