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「全員すぐに脱出船へ!船を出すわよ!!」


海兵達の怒号とどよめきがあちこちで交錯する中ナミの声が響いた。
まだ喜びに浸るのは早い。
尚も襲いかかってくる海兵達の攻撃を掻い潜りながら達はじりじりと船へ近づいていく。
もうあの船は護送船ではない。
達の未来へと繋がる脱出船なのだ。
気を抜くなと戒めるものの、ルフィが勝ったという事実は仲間達の表情を柔らかくする。


『やったぜ麦わらさーん!うおーーー!!』
『バ…バカお前ら向こうまで聞こえちまうだろ!』
『いいんだ知らせてやるんだよ!』


船へと歩を進めている時だった。
どこからともなく突如響き渡った声に達は驚きに目を見開いて辺りを見回す。
その姿は確認出来ないが、声の主は間違いなく…彼らだった。
すぐ傍にいるフランキーなどまるで幽霊を見たかのように呆気に取られている。


『アニキー!!アニキーー!!』
『やめろ!このまま逃げりゃおれ達は死んだ事になってんのに!!』
『おれ達ァ全員無事ですよー!!逃走手段もあるんでこっちは大丈夫!後で生きて会いましょう!』


声の主は死んだと伝えられたフランキー一家達とガレーラの船大工達だった。
あの燃え盛る本島でどうにか生き延びたらしい。
ルフィが勝ったと艦隊の放送で聞こえ、我慢出来ずに叫び出したという所か。
声に聞き入っていたも思わず頬を緩めた。

生きていてくれて、本当に良かった。


「おめーらァー!バキヤローおべーらの心配なんざするかァバカー!!」


フランキーの目から滝のように涙が溢れ出す。
やはり相当彼らの事が心配だったのだろう。
大きな拳で顔を乱暴に拭いながら、すぐ傍にいたの首根っこを掴んでおいおいと泣くフランキーの声が耳に痛いほどだ。


「生ぎでたあのバカ共ー!生きてた!よがったよがった嬉しいおうおうー!!」
「本当によかったが…もう少しボリュームを下げてくれ……それと苦しいのだが」
「ぐっ……てめェおれを巻き込むな…!!」


泣きっぱなしのフランキーに首根っこを掴まれたが苦し紛れにゾロの襟首を掴み助けを求める。
ゾロが力任せにの手首を掴んで引っ張りようやくはフランキーから離れる事が出来た。
戦うより体力を消耗してしまった気がするが、嬉しさに咽び泣くフランキーを見れば文句は言えない。
攻撃を受け流し走りながらゾロがフランキーに向かって口を開いた。


「あいつらが助かったんだから…お前が死んじゃ意味ねェんじゃねェのか!?」
「うんうんそうだな!」


攻撃の手は一層激しくなっていく。
海兵とてもうここで逃がせば作戦が失敗に終わる事くらいわかっているのだ。
ここで達を生きて逃がすという事は、世界政府の面目が丸潰れになってしまう。
ようやく泣き止んだフランキーは力を取り戻したかのように張り切って攻撃を繰り出した。

後はもうここから脱出するだけだ。
達が残りの力を振り絞り海兵達と戦いながら船へと進む中、軍艦から再び海兵の声が響いた。


『海賊麦わらのルフィもまた致命傷の色濃く!その場から全く動きがありません!』


響いた声に達全員が慌ててためらいの橋の支柱へと振り返る。
ためらいの橋の支柱では影一つ動いていなかった。


「何だと!?」
「まずいな…この海兵の数に周りは海と軍艦だらけだ」


既に船の方へと進んできてしまった達の後ろには黒山程の海兵達がうじゃうじゃと蔓延っている。
前にも同様に海兵達が集まる状況でどうする事も出来ない。
第一前にはナミとロビンしかいないのだ。
船を動かす為には達がルフィを迎えに行っている余裕などない。
それは元より橋を埋め尽くさんばかりの海兵達がそう簡単に行かせてはくれないだろう。

橋の一番後方にいたウソップがルフィに向かって慌てて声を荒げた。


「おいルフィ!急いでこっちへ来いよ!逃げなきゃ助からねェんだ!ゴムゴムでこっちへ飛んで来い!後はおれが担いでやるから!」
「ダメだ……体がよ………!全然…動かねェ……!」
「バカ言ってんじゃねェよ!敵は倒したんじゃねェか!ロビンも取り返した。後はもう帰るだけじゃねェか!頼む、頑張れ!」


ウソップの叫び声に対しルフィの声はようやく絞り出した様に小さな声しか返ってこない。
海軍の軍艦が四方八方を取り囲み海に鎮座している状況でルフィが動けないとなればこちらから迎えに行くしかないのだ。
となれば引き返している余裕などない。
一刻も早く脱出船へ乗り込み全員でルフィを迎えにいくのが一番だろう。
ここでまた仲間がバラバラになれば今度こそお終いだ。


「ウソップ!ルフィのいる支柱へ船を回しましょう!全員急いで船へ!!」


ナミが叫んだ時だった。
軍艦から撃てという声が響いた瞬間、放たれた大砲が脱出船にぶち当たり爆炎を起こした。
あっという間に脱出船は燃え上がり激しい炎を撒き散らし海へと崩れていく。


「脱出船が!!」
「何てこった、絶望的だ!あの船以外にここからの脱出手段はねェんだぞ!」
「……まずい!船にはココロさんやトニー達が!!」


炎を上げ崩れ落ちていく脱出船にはココロにチムニーとゴンベ、それに動けないチョッパーが乗っていたのだ。
もう既に脱出船は原型を留めておらずただただ炎を舞い上げる残骸となり海面を赤く染めていく。
飛び出す事も適わずナミが叫び声をあげる中、煙に包まれる防波堤部分から誰かの足が見えた。


「ん、何とか無事だァー!」
「サンジ!」


煙の中から現れたのはココロ達を抱えたサンジだった。
どうやら間一髪でココロ達を船から救い出したらしい。
そのままの勢いで全員を抱えたままサンジが階段を駆け上がってくる。


「よかった…!サンジ君あんた一体どこにいたの!?」
「いや悪ィちょっとヤボ用で…こっち側はロビンちゃんがいるから砲撃はねェだろうと思ったのに船が!!」


ココロ達を地面に下ろしサンジが肩で息をする。
全員を抱え全力疾走してきたのだから無理もないだろう。
とりあえずココロ達が無事だった事にほっとしたのもつかの間、待ちうけていた海兵達がナミ達に向かって刀を向けた。
先に気づいたココロが海兵を吹き飛ばし今度はがチムニー達を抱え走り出す。

ためらいの橋への砲撃が始まったのだ。
橋を取り囲む軍艦から大量の砲弾がためらいの橋へと降り注ぎ達の足元を容赦なく削っていく。
みるみるうちにためらいの橋は崩れ落ち、橋の一部を残し他は全て砲撃により姿を消してしまった。


「くそっ!とうとう橋なんかなくなっちまった!支柱に追い込まれた」
「これ以上何もできねェぞー!」
「ここでコレ全部と戦うしか……!」
「バカ言え!もっと強ェのゴロゴロ出てくるぞ!?」


達の人数とほぼ同じ数の軍艦がじわりじわりと達へ近づいてくる。
大砲の数など達の人数の倍以上はあるだろう。


『第一支柱に一斉放火用意!』
『麦わらのルフィをただちに抹殺せよ!』


軍艦から声が響き、備え付けられている大砲が全てルフィのいる第一支柱へと向けられた。








08.01.18

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