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〜5月のある日の放課後(間桐桜)〜
「ただいま〜ってみんなまだ帰ってないよね。先輩は今日は生徒会の手伝いがあるって、それに姉さんも一度家に帰ってくるって言ってたし。ライダーもまだアルバイトで、セイバーさんはまた大橋の公園でサッカーしてたし。藤村先生は今日は家庭訪問なんかで遅くなると朝言っていたし。ん〜そういえばいつもセイバーさんとサッカーしてる子達って誰なんだろ?」
と、自室に行く前に居間を通りかかると棚の上に一冊の雑誌が…
朝は全然気づかなかったけど、でもこの雑誌は…
結婚式場・ドレス・指輪・引出物などの情報や先輩カップルによる体験談、披露宴などにかかる費用の相場など、結婚準備に関する情報が掲載されている。別冊でインテリア専門や、海外ウエディング専門などの特別版も発売されているという結婚を前にするカップル達に人気の結婚情報誌『ゼク○ィ』!!
でも何で?何故この家にこんな情報誌が!?
ライダーは読書はするけどどちらかというと雑誌は読まないし…
ましてやこれは結婚情報誌!
だとすると結婚を考えてる人ってことだから…
藤村先生?!
「はは…」
ないよね…
そうこの家で『結婚』の二文字に一番関係ありそうな人と言えば…
「先輩と姉さんか…」
でもなんで?まだ高校も卒業してないし、前に付き合ってること報告した時は倫敦にも行くから結婚なんて今は全然考えてないって言ってたのに…
あ、そういえば…
最近姉さんあのバス停の前の角のあの店のレモンパイが美味しいってよく買って帰ってくる…
それに、いつもはミルクティーなのに最近よくレモンティー飲んでる…
あ!ここのとこ梅干しよく食べてたし、良くおかわりもしてた…
先輩だって最近になって急に思いついたようにバイトの日数増やしたし…
…これはつまり、『できちゃった結婚』!?
そんな…せめて倫敦に行くまではチャンスはあるって思ってたのに。
…でもそれなら今日からご飯のメニューちゃんとそういうモノにしなきゃ。きっと先輩はそういうの分かんないんだから私がしっかり勉強しとかなきゃ…
「はぁ〜」
先輩の子供か…きっと可愛いんだろうな。
〜5月のある日の放課後(遠坂凛)〜
「ただいま〜」
………
「あれ〜桜の靴あるから帰ってると思ったのに。何か足りなくなって買い物か何か?でも鍵を閉めずに?」
と、自室に行こうと今を通りかかった瞬間食卓の上に一冊の雑誌が…
「あれ?朝出る時雑誌なんて無かったはずだけど。さては、またセイバーが料理雑誌か何かを…ってこれは!」
結婚式場・ドレス・指輪・引出物などの以下省略…
『ゼクシ○』!!
でも何でこんなモノがここに!?
朝ここになかったってことは…
A.ライダーorセイバーが買ってきた。
B.先に帰ってるってことは桜が買ってきた。
C.どこか他の場所にあったのをセイバー、ライダー、桜が見つけて読んだ後ここに置いた。
消去法で行くと…
まず恐らくAはないと。ライダーがまさか結婚情報誌を買ってくるとは思えないし、何よりライダーは今日バイトで私達が出た後同じように家を出て帰ってきてないはず。そしてセイバーが買ってきたとは全く思えない。
次にB…桜が?誰と?
よし。これもなしと…
となるとCか…でも、それにしても誰が買って来たっていうんだろ?
一番それらしくあるはずなのは藤村先生だけど…ないな〜
他は…
まさか…士郎?
でも何で、どうして?!
「………」
あ!そういえば…
最近士郎バイトの日数急に増やしたみたいだけど…
先週の日曜日は何故か教会にいたし…
それに前、急に子供って良いよな〜なんて話ししてきたような。
よくよく考えてみれば最近やたらと優しい気が…
ってことはつまり…本当に!?
「どうしよう、結婚なんて。でも、まだ士郎って決まったわけじゃない。けど…でもその時はやっぱり士郎が遠坂になって貰わないといけないわけで…」
― Some time of some days ―
「衛宮。またお主に世話をかけて済まなかった」
一成から頼まれた数台の扇風機の修理を終えた頃、あっちも仕事を終えたらしく帰り支度を済ませ修理するのに借りてた視聴覚室に入ってきた。
「いや、別にこれくらいたいしたことないさ」
「ふむ。予算の都合上冷房器具を購入するだけの資金を文化部に回せないもので、こうして修理しながら使わねばならんのだ。全く持って全ての元凶は…」
「遠坂か」
なんでも部費の配分に関してそれまでは美綴と蒔寺が(いや蒔寺は騒ぐだけでたいした効力は持ってないが)運動部の予算を増やせと言っていたのだが、最近になってそこに遠坂の奴が助太刀するようになったおかげで配分のバランスが大きく運動部に傾いてしまったとか…(敢えてもう一度言おう。遠坂が加わろうが、加わるまいが蒔寺はうるさいだけで影響力は皆無である)
それで生徒会の会計担当の役員達からはビューティーデビルスだとか何だとかって恐れられてるとか…(しつこいようだが確認しておく。『ス』というのは複数形だがこれは遠坂と美綴を指しているのであって間違っても蒔寺は含まれていない。ただ本人は含まれていると五月蠅いのだが…)
「全くあ奴のおかげで会計担当の生徒が何度辞表を出してきたことか…」
辞表か…分からんでも無いよな。あの二人に色々とごり押しされて、その後ろで藤ねえに匹敵する猛獣もとい珍獣がギャーギャー騒いでんだかんな〜
「まぁ、今更どうこう言ってもしょうがない。だが、必ずやこの生徒会をあ奴らに対抗できるものとせねば…」
とまぁ結局帰りの間そんな話しを延々としながら帰ることになったのだった。
「ただいま〜」
「お帰りなさいシロウ。今調度配膳をしているところです」
今から顔を覗かせたセイバーに言われ、居間に入ると既に夕飯の準備はほとんど終わりかけていた。
「悪いな桜準備任せちゃって」
「へ!?あ、だ・大丈夫ですよ。もうこれ運んだら終わりなんで先輩は座ってて下さい」
ん?何か桜おかしくないか?
でもまぁ今はもう台所にいてもしょうがないわけだし言われたとおり座って待たせて貰うべきなんだろう。
と、ふと遠坂と目があって、そらされた。
…って、なんでさ?
そして始まったいつも通りの夕食のはずだった。のだが…
なぜか白米が玄米に変わっており、ほうれん草とあさりの菜種和えそして、イカの甘酢炒めにこんにゃくの炒め物それにレバー炒めなんだが…
あまりにも桜らしくないというか、昨日買い出しの時言っていたメニューと全品違う上にこのメニューを見る限り昨日買った物では作れないモノばかりなわけで。
まぁ確かに健康にはいかにも良さそうなんだけれども何故なんだか意図が分からない…
それに加えて…
「あの〜すみませんがおかわりを」
申し訳なさそうに小声で控えめにお茶碗を差し出すセイバー。言っておこうまだ一杯目のおかわりであると。
では何故一杯目にもかかわらずセイバーがこんなにも控えめなのか。それは全てこの妙な雰囲気のせいなんだろう。
そう、もう一つがこれなのだ。そして、このおかしな雰囲気を作り上げているのは間違いなく遠坂と桜だった…
帰ってきた時から何かおかしな二人だったがここに来て一段とたどたどしいというか何というか兎に角明らかに何か変だ。
「何かあったのですか?リン・サクラ?」
この状況を打開すべくまさに一閃を振り抜いたのはセイバーだった。
その隣で静かにご飯を食べていたライダーも気になっていたらしく今は二人に視線を向けている。
「「!!?」」
で?何故二人して俺を見るんだ?
「シロウ…また何かしたのですか?」
「いや全く分からないんだが」
そもそもセイバー、そんな呆れられたように言われても思い当たる節が全くない。だってそうだろ?学校ではいつも通りだったんだからさ。
「サクラ。何かあったのですか?夕食を作ってる時からどこかおかしい様に見えましたが、それにリンも先程からため息が多いようですし食事も進んでないみたいですが?」
そんなライダーの言葉に二人は困ったような顔をして、やはりそれぞれ俺を何故か見てくる。
「あのさ、遠坂・桜俺何かしたか?」
「「・・・・・・・・・・・・・・」」
しばしの沈黙の後集まる視線に二人はまるで覚悟を決めるように一息ついた…
そして、
「「結婚…(するんですよね)」」
へ!?
そして一斉に集まる視線…
「…って。なんでさ?!」
「シ、シロウ、そうなのですか?」
いや待てセイバーそんな話し俺も初耳だ!
「ちょっと待てって、一体どういうことなんだよ二人とも?!」
「だって…」
桜?
「だって姉さん赤ちゃん出来てしまったんですよね!?」
は、はい!?って!マジなのか?!
で、遠坂を見るとそこには驚いてブンブン首をふってる姿が。
「ちょっ!桜!何でそうなるのよ?!」
「だって最近姉さん最近バス停の前の角のあの店のレモンパイが美味しいってよく買って帰ってくるし、それに、いつもはミルクティーなのに最近よくレモンティー飲んでるしそれに、ここのとこ梅干しよく食べてたし、良くおかわりもしてたじゃないですか。後、先輩だって最近になって急に思いついたようにバイトの日数増やしたし…」
「違うから!!!」
「え!?」
「だから私妊娠なんてしてないから。レモンパイだってただはまってるだけだし、レモンティーもただの気分転換。梅干しも最近疲れてるからクエン酸取るためだから!」
遠坂の怒濤の理由説明の嵐はもはや暴風警報でも発令されそうなほど激しくなっていた…
「そう、なんですか?」
「そうよ!って、そこ!ほっとしない!」
「一つ解決した中すみませんがリンは何故おかしかったのですか?」
いつもの食事風景に戻りかけていた中、我らが王はまたこの場をほじくり返すというのか…
「そうですね…確かリンも結婚と…」
って!ライダーも!!!
…でも俺も気にはなるんだよな。
「え、いや、そのね…」
「たっだいま〜!!お腹減ったよ〜」
そんな中嵐のようにいきなり飛び込んできた虎…
「ん?今日のメニュー何かやけに健康的なのね〜。って、あ〜こんなとこに置いてたんだいや〜どこに忘れたのかと思ってたよ」
「「「「へ?」」」」
驚く俺達を尻目に棚の上に置かれた一冊の雑誌を手に取り一人納得している虎…
「え?あぁ、いやねお爺様が『これでも読んでさっさと婿でも探せ!!』って渡してきたんだけどね〜まぁちょっとばかし?私も花も恥じらう乙女なんだし?まぁ見てみようと思ってここに持ってきてんだけど、そのまま忘れてたみたい」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
その時確実に居間の空気が凍った…まぁでも今回は俺には無害のようだしな。
・・・
・・
・
「「紛らわしいことしないで下さい!!!!!!」」
その後、意味も分からず怒り心頭の姉妹にこってりと藤ねえが絞られ一応この場における今回の事件?は無事解決したのだった。
夕食も終え、みんながそれぞれの時間を過ごす中縁側に目を向けると遠坂の姿があった。
「ほらお茶いるか?」
ありがとうとお茶を受け取った遠坂の隣に腰を下ろすと、ふとさっきのことが思い出された。
「なぁ遠坂。さっきの結局遠坂のって何だったんだ?」
「何でもないわよ、別に…」
そう言ってぷいっと顔を背けられたんだが、結婚って言葉はな〜。
「何でもなくはないだろ?」
「…やけに食い下がるわね」
「だって…結婚ってさ」
気にならない方がおかしいってもんだ。仮にも遠坂は、その。俺の彼女なんだから。
「・・・・・・・・・・・・・」
「…笑ったら殺すから」
一時の沈黙の後放たれたのはそんな脅し文句だった…
いや、笑ったら殺すって…
「あ、あぁ」
「最近士郎さ、バイトの日数急に増やしたし、先週の日曜日は何故か教会にいたし、それに前、急に子供って良いよな〜なんて話ししてきたじゃない。で、よくよく考えてみれば最近やたらと優しい気がして…その、もしかしてって思って…」
・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
「でも、私達これから倫敦に行くし、そんな中で子供がもし出来ちゃったら大変だし。何よりまだ私達高校も卒業してないじゃない?」
なるほど…
「そうだったのか」
「あ!やっぱり笑ったじゃない!」
「え?いやちょい待ってくれって。違うって」
「何が違うってのよ?」
そうこれは遠坂の勘違いがおもしろかったわけじゃなく
「いや、その、嬉しくてさ」
そう、これは喜び。『幸せ』だと心から思える暖かな気持ち…
「え?」
驚いた表情でこっちを見てる遠坂にこの嬉しさ、幸せさをちゃんと伝えたくて言葉を探す。
「例え勘違いでもさ、遠坂がそういうことを真剣に悩んでくれたなんて、凄く幸せなことだなって思ったんだ」
「・・・・・・・・・」
そして、少し早いけれど偽らざる気持ちを
「そうだな。でもいつかは…ってそう思ってる」
「え!?」
「も、勿論ちゃんと養っていけるようになったりしてからになるけど、そのさ…」
そんな言葉に遠坂は最高の微笑みで返してくれた。
「でもそうね〜私の夫になるつもりならせめて隣に立てるくらいにはなって貰わないとね」
そんな言葉と共に。
「あぁ頑張るよ」
そう、何時かちゃんとその言葉を伝えれるように。
「よろしい。…でも、、、」
ん?
「待ってるからね。士郎」
そう言う遠坂の笑顔は、反則級なまでに可愛い笑顔だった。そして交わされる優しい口づけ…
「ふふ、好きよ。士郎」
それは幸せをもたらしてくれる一言…
「なぁ遠坂…夏休みどっか旅行行くか。その、二人でさ」
「そうね。楽しみにしてる」
〜そのころ〜
「う〜羨ましいです…」
居間からのぞき見る影が3つ…
「全くもう少し他の者のことを考えて欲しいものです」
「あ、でも結局先輩がバイトの日数増やした理由って何だったんですかね?」
「あぁそれはですねサクラ…」
「え?ライダー知ってるの?」
「えぇ、私やセイバーの部屋に冷房器具がないからどうにかするためだそうです。私は大丈夫だと言ったんですけどね…まぁ他にも考えはあるみたいですけどね」
「そうだったんですか」
「それにしてもいつまであぁしているつもりなんでしょうか。あそこであぁされていてはお風呂にも行けませんよ全く…」
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