秋も深まった11月中旬…
現在午後1時…昼ご飯を食べてから約2時間経った。
「……昼ご飯を早く食べすぎてしまったようです」
そんな中、ここ衛宮邸の縁側で一人の少女が悩んでいた。
「…困りました」
今日の朝ごはんが少なかったかといえばそういうわけではない。シロウとサクラが作ってくれた朝ごはんはいつもと変わらず申し分のない味で、おかわりも3杯した。いや、訂正しよう今となってみれば3杯しかできなかった。
「やはり、あの時ライダーの一言を気にしたのが間違いでした…」
今日の朝食時、3杯目を食べ終えた時、食卓のおかずを見ればまだ納豆に加え、先日柳洞寺の住職つまりは一成のお父上からシロウがもらってきた佃煮が少量残っていた。そこで、4杯目のおかわりを頂こうと茶碗を差し出そうとした時だった。
「はぁ…家にいるだけにしては実に燃費が悪いですね。最近世間ではエコブームだといいますが、彼女にはそんなもの全く関係ありませんね」
その言葉に彼女は差し出しかけた茶碗を引き下げたのだった。
「シロウは『気にしなくていいんだぞ』なんて言っていましたが…」
最近衛宮邸において彼女自身自分の立場が無くなってきている気がしていた。
というのも、かつて彼女と同じ位置には藤村大河という不動の存在がいたのだが、ここ最近になって主には魚時には野菜や何故か花など多彩なものを持ってくるようになった。特に魚を持ってくる時は、バケツ一杯の魚を持ってくるのだ。
少し前、一時的に開店休業中だと言って持ってこない日々があったが最近では再び持ってくるようになっていた。
「しかしタイガは一体どこからあの魚を得てきているのでしょか…」
バケツで持ってきているということや、入っている魚がほとんど同じだったり時にはすべて違ったり、量も日によって違うという辺りから考えるに、藤村組や魚屋というのはいまいち考えにくい。
「となるとタイガは釣りでも始めたんでしょうか?」
しかし、忍耐と集中力が必要である釣りをあのタイガができるとは思わない。しかし、それ以外にあの魚を得る方法があるとは思えない。
「…そうですね。今度私も港に行ってみましょう。何かヒントを得れるかもしれません」
まぁ、そんなこんなで最近は魚料理の日が増えたのだが、これがシロウは食費が浮くと、サクラやリンはヘルシーで良い!と大喜びなのだ。
もちろん、彼女も例外を除いて海鮮物は好きでありおいしく頂いている。
しかし、ここで一つの問題が起こったのである。
現在衛宮邸において、主人である衛宮士郎は義父である衛宮切嗣の残した財産だけに頼らず、自らアルバイトをするなどしている上に、掃除・洗濯・食事の準備と家事全般をこなすのだ。そして、遠坂凛・間桐桜の二人はそれぞれちゃんと食費や光熱費を納めている。しかも二人とも、主人である衛宮士郎と交代制で食事の準備を中心に家事をしているのだ。
それに加えこれまでは同じくただの居候的存在であった。ライダーがこれではシロウ達に迷惑をかけるばかりで申し訳ないと商店街の骨董屋でアルバイトを始め生活費を納め出したのだ。
更によくよく考えてみれば、あのイリヤでさえ時々怪しいものもあるが色々と差し入れを持ってきている。
つまり…
「私だけが何の生産性もないただの居候ということですか、、どうにかしないといけませんね、これは」
グ〜〜〜〜
そんな言葉とは裏腹にお腹は何か食べ物を!と要求の合図を鳴らしてくる。
かといってまさか冷蔵庫の中を漁るわけにはいかない。が、シロウ達が学校から帰るまではまだしばらくかかる。
どうしたものかと考えながら庭をみるとすっかり落ち葉がたまっていた。
「…そういえば」
少女はあることを思い出すと台所へと走って行った。
「ありました」
台所の隅。そこに置かれた段ボールの中にはサツマイモが山積みにされていた。
数日前、豚汁が食べたいとタイガが大量のサツマイモを持ってきたのだ。シロウは豚汁にこんなにサツマイモ使うか!なんて言っていた。まぁその後、桜がスイートポテトなるものやリンが大学芋なるものを作ってくれておいしく皆で頂いたのだが、それでも大量に余っているということをシロウが言っていたのを思い出したのだ。
流石にリンやサクラの様にああいったものを作ることはできるはずがありません。しかし…
そう、彼女にはそれがもう一つ他の方法でおいしく食べられるということを以前シロウから学んだのだ。
そして段ボールから数本取り出しそれを一時縁側に置き、庭に出ると少女は立てかけてあった熊手を使い一生懸命庭や玄関、門付近から落ち葉を集め始めた。
数十分後…
「こんなものでしょうか」
集まった落ち葉を前に少女は満足そうな顔でうなずくと縁側に置いておいた数本のサツマイモとマッチを手に取った。
「後はこのサツマイモをこの枯れ葉の中に入れて」
「消し炭にでもするつもりなのか?」
火をつけようとした時だった。
「え?」
声のした方を見ると、玄関前にはいつの間にかアーチャーが立っていた。
「まぁそれでできないこともないが君が作るというのならそれでは恐らく消し炭を作るだけだぞ」
そして、やれやれなんて呆れた顔をしながらこちらへと歩みを進めてきた。
「な!何用ですかアーチャー!」
「全く、焼き芋に浮かれて侵入にも気付かないとはな。全く、そんなことで大丈夫なのか?まぁいい別に警戒しなくても大丈夫だ。私はただ凛に頼まれた彼女の私物を家から持ってきただけだからな」
そういうとアーチャーは落ち葉の中からサツマイモを取り出し着いた汚れを払い出した。
「では用が済んだなら立ち去ればいいではないですか。ま、まさかこの芋が狙いですか!?」
恥ずかしい姿みられたせいか顔を真っ赤にしながら見当違いなことを言う姿につい笑みがこぼれてしまう。
「いや、焼き芋を作りたいのだろセイバー」
そんな質問に少女は小さくこくこくと頷く。
「これでは、駄目だというのですかアーチャー?確かこういう風に以前シロウは作ってくれたと思うのですが」
「駄目だとは言わんがね」
そう言うとアーチャーは縁側から邸内にはいると、アルミホイルと水にぬらした新聞紙を持って出てきた。
「いいか、セイバー。まずこの芋をこの新聞紙でくるむんだ。そしてそれを今度はその上からアルミホイルでくるむ。これでOKだ」
「成程…」
「こうした方が確実でおいしい焼き芋が作れるだろう」
そう説明するアーチャーの横顔が少女には、シロウとかぶって見えた。いやその横顔はシロウそのものだった。
「後はこの大きさなら30分くらい焼いてそこにある火ばさみで取り出して、実際握ってみて柔らかくなっていれば出来上がりだ。あぁ勿論握るときには軍手をつけてだ」
「流石ですね…アーチャー」
「別に大したことではない」
そう照れたようにそっぽを向く彼は、どんなにその姿、声色が変わろうとやはりシロウなのだと少女に再確認させた。
「では、私は、」
帰ると言おうとした瞬間だった。
「アーチャー。食べていきませんか?」
「…」
「シロウもリンも学校ですし、ライダーもアルバイトでしばらくは帰ってきません。それに幾分多く焼きすぎたようです」
「まぁ君なら難なく全部食べれるような気もするがでは頂くとしようか。どうせ焼けるまではもうしばらくかかる。茶でも入れよう台所を借りるぞ。縁側に腰でもかけておけ」
そう言って邸内に入っていき手際よく茶の準備を始め出した。まさに勝手知ったる他人の庭(台所)。
「いえ違いますね…そこは貴方の慣れ親しんだ場所なのですよね」
そう、姿こそ変われどそこに違和感など一切ない。
「何か言ったか?セイバー」
「いえ、なんでもありません」
きっとそうしている姿は違和感などなくむしろ似合っているなどと言えば彼は怒ってしまうだろう。
でも事実。やはり貴方はシロウだ…
「ほら茶だ」
あ、
「どうした?あいつが入れるものより美味いことに驚いたか?」
そう、確かに微妙な差かもしれないそれでも彼の入れたモノの方が少しおいしく感じた。
「まさに経験の差ですね」
その答えに、彼はふっと笑うと自らも茶をすすった。
しばらく無言の時間が続いたが、このように天気良く穏やかな日だからだろうか。
「アーチャー貴方が『英雄(正義の味方)』になったのはやはりキリツグにあこがれてなのですか?」
そんな質問をしてしまったのわ…
対して、その質問に彼は一瞬苦そうな顔をした後ため息をついた。
「すみません。すべき質問ではなかったですね」
「…セイバー。以前も言ったが俺はねかつてのエミヤシロウの理想を抱いた頃の記憶はほとんどないんだ。ただかすかに残る幼い時のあの記憶…それだけを見ればそうなのかもしれない」
彼自身それは語るべきことではなかったのだ。ただそう…今日はなんとなくいいかもしれない。そんなことをふと思ってしまったのだ。
「では…」
「でも、俺がそこへ走り続けられたのはある少女に憧れ、そして会うためなんだ」
「少女?それは」
「美しいと思ったんだ。」
「え?」
「最期は決して報われる物でないと告げられながらも、それでも王となり、全てを捨て、傷つきながらもただ戦場を駆け抜けた。そして、死を前にしてなお彼女は国の為、民の為その身を世界に委ねまたも戦場へ赴いた。戦うと…王になったあの日の誓いを護る為に。そんな彼女の生き方を美しいと感じたんだよ…」
「アー…チャー?」
それは…
「だからひたすら走り続けたいつか、いつか追いついてみせると…」
こんなことをして何なるというのだ。そんな思いはもちろんあった。それでも彼は続けた。
「だからさ、俺はねセイバー…」
「んんっ?!」
そして、奪っていた。彼女の唇を…
自分自身情けなくなる。
振り切ったはずの自分、否定したはずの自分…それでもやはり、俺はお前のことを、この想いを忘れることなんてできなかったんだ。
だからこそ苛立った。再び違う世界とはいえ同じ間違いを続けている姿に。そこから解き放ってやりたいと思った。
しかし、それでもあの日再び彼女と会った時決して望んだ再会などではなかったが微かに胸が熱くなった。
「…すまない」
「…いきなりされて、二言目に謝られても困りますが。全く…いきなりこんなことをするなど最低ですよ、シロウ」
「あぁ全くだ。結局こういったあたりは変われなかったらしい」
かつてと今と同じような自分の行動をしたことを思い出すと呆れてしまう。
それでも、やはり俺はこの想いは抱き続けてたんだ。
今更、しかもあの時とは状況も何もかもが違うっていうのにな…
「そろそろ、焼けたでしょう」
そう言って立ち上がるとセイバーは軍手をつけ火ばさみで芋を取り出した。
「うん。焼けているようです」
そう言って一本新聞紙に包むと少女はそれを渡した。
そして再び二人縁側に座り焼きたての焼き芋食べ始めた。
「残りはリン達にのけておいてあげましょう」
「あぁそうだな」
「あぁ本当においしい…」
「そうだな…」
その後食後のお茶を再び飲んでいる中だった。
「貴方が知っているセイバーと私は同じくして違うのでしょう。それは私の良く知るシロウと貴方にも言えることです」
「あぁ…」
「それでも、一つだけ変わらないことはあります」
その瞬間彼の肩に優しい重みがかかった。
「私はエミヤシロウを想っているということです」
その言葉だけで彼は良かった。そう、例えその想いが自分に向けてではなくとも、それでも。
だから、もういいのだ。一瞬でもこうして再び彼女と過ごせたのだから。これ以上の贅沢など求めるべきではない。だからこそ戻る、エミヤシロウではなく、アーチャーとしての現在あるべき自分へ…
しかし、
「アーチャー、今度クレープでも食べに行きましょうか。リンが言っていました。フルーレに新商品が出たそうです」
彼女はそんなことを言ってきた。
「奴にでも連れて行ってもらえ」
「そうですね。しかしシロウにはリンがいますから。まぁ言えば連れて行ってくれるでしょうがその後が怖いので」
確かに…
不機嫌そうにやきもちを焼く彼女の姿は簡単に想像できる。
「そうだな。気が向けば、な」
「えぇ、期待しています………」
気付けばいつの間にか彼女は寄りかかったまま眠りについていた。
穏やかなその顔に、惹かれる想いはあったがしょうがないな。なんて苦笑し、居間へ運ぶと隅に畳んで置いてあった趣味の悪いトラ柄のタオルケットをかけた。
「もう凛達も帰ってくるだろう」
そして懐かしき地を後にする。
「じゃあな、セイバー。そうまたそのうち…」
「「ただいま〜」」
「ん?あれセイバー寝ちゃってるわね」
「あぁそうみたいだな。夕飯までは寝かしておいてあげよう。なんか幸せそうな寝顔だし」
「え〜み〜や〜く〜ん。女の子の寝顔じろじろ見るなんて褒められたことじゃないわよ」
「え!?いや別にそんなつもりじゃ!」
慌てふためく彼をいつものように楽しそうにからかう彼女。
「シロゥ…」
そんな中不意に発せられたやけに色気を持った幸せそうな寝言。
「ね〜?士郎ま・さ・か・浮気かしら??そうね、ちょ〜っと夕食準備前にいらっしゃい」
そうして真っ青な顔で、ぶんぶん首を振り全力で否定する少年を自室へと引きずっていく少女。
居間には再び幸せそうに眠る少女だけとなった。
Fin??
あとがき
え〜いつぶりかも不明な位ですいません。
やっと色々落ち着いてくれました。
またこれからはしっかり書いていこうと思いますので許してあげてください。
で。今作リハビリにしても酷い。何がってアーチャー崩壊…
ただね、士凛支持の自分としては弓剣は支持したいんですよ。ただむずかった。
まぁ当分はまた士凛中心になるかと。
でも、もう一回リハビリで短編で何か書くかもしれませんが、どうぞまたこれからもよろしくお願いします。
誤字脱字ありましたら。お願いします。
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