ビ、サハラ、ジュンガル、バッドランド。
これらの砂漠は古くから、理想的な化石の宝庫として知られてきた。
不毛の地がかつて多様な生物の楽園であったという事実は、私たちを大いに驚かせる。

今回レポートする「恐竜2009−砂漠の奇跡」は、
砂漠で得られた新発見を中心に、恐竜研究の最前線をとりあげた展覧会だ。



 ゴビ砂漠の恐竜たち


 白亜紀のゴビは乾燥した気候ながら、総じて豊かな生物相を保っていた。このことは、ヴェロキラプトルのような捕食者や、ギガントラプトルのような大型恐竜が生息していた事実からも想像できる。

 今回の展示では、日本初公開となるギガントラプトルの全身復元骨格をはじめ、プロトケラトプスやヴェロキラプトルなど、当時のゴビを代表する恐竜が出そろった。20世紀に活躍したアンドリュース発掘隊の業績を筆頭に、ゴビをめぐる研究の流れも紹介された。

(図1)ギガントラプトル
生息地:中国(内モンゴル自治区)
生息年代:白亜紀後期
全長:8m




 ジュンガル盆地の恐竜たち



(図2)グアンロン
生息地:中国(ウイグル自治区)
生息年代:ジュラ紀後期
個体全長:3.7m
部位:頭骨
 ジュラ紀後期、けわしい山々にかこまれたジュンガル盆地では、造山運動が続いていた。造山運動は火山の噴火を引きおこし、火山灰は盆地をおおいつくした。

 そして現在、火山灰起源の地層からは最古級のティラノサウルス類、グアンロンが発見されている。さらにインロンの発見によって角竜の起源がジュンガルにあることも明らかになった。ジュンガルこそ、ジュラ紀から白亜紀へといたる恐竜進化のメッカだったのである。

 ジュンガルの魅力はそれだけではない。2001〜2006年に発掘されたマメンキサウルスの骨格は、復元の末に全長30mにおよぶことが推測され、想定されていた同属のサイズを大幅に塗りかえる結果となった。ジュンガルは恐竜巨大化の問題も、私たちに提起してくれるのである。
 サハラ砂漠の恐竜たち




(図3) スピノサウルス
生息地:アフリカ北部
生息年代:白亜紀後期
全長17m

 幻の巨大恐竜として知られるスピノサウルス。その化石が眠るエジプト北部は、乾燥の厳しい広大な原野である。だが9900万年前までさかのぼると、そこは豊かなマングローブ林であった。当時の海水面は現在よりも300m近く高かった。そのため内陸まで海水が入りこみ、大規模な汽水域を形成したのである。
 スピノサウルスは、その化石が第二次世界大戦時に焼失して以来、謎につつまれた存在であった。しかし近年、断片的な化石がいくつか見つかり、おぼろげながらその姿を明らかにしつつある。
 今回の展覧会では、3年間にわたる復元作業の末に完成した、スピノサウルスの全身骨格模型が公開された。カーネギー博物館のラマンナ博士らは、この展示にむけて既存のデータの再検証を進めた。戦前に執筆されたスピノサウルスの記載論文を分析し、さらにスピノサウルスの近縁種を研究することで、失われた情報をおぎなったのである。これらのデータ分析の意義は大きい。
 今回はもう一つ、注目すべき標本があった。それはモロッコから産出したスピノサウルスの亜成体の骨格である。全身の骨格のうち、60%が発掘できたという。成体にくらべれば小ぶりだが、ほぼ実物化石から構成された骨格は、独特の説得力と存在感をかもしだす。極めて美麗な標本である。


(図4)スピノサウルス亜成体
全長:7m


 バッドランドの恐竜たち



(図5) ティラノサウルス・レックス
生息地:北アメリカ
生息年代:白亜紀後期
個体全長:12m
部位:下顎部

 北米に広がる不毛地帯を、現地の人々はバッドランドと呼ぶ。この場所は恐竜の研究史上、最も多くの発見を人類にもたらしてきた。ここでの発掘がはじまるまで、恐竜の世界を詳細に想像できる者など、どこにもいなかった。この荒野は、恐竜時代の概観をはじめて人間に知らしめたのである。
 白亜紀当時、バッドランドは現在よりも湿潤で、ところどころに湿地も存在していた。およそ7200万年前に気候変動がはじまるまで、安定した気候がつづいたらしい。その状況下で、多くの恐竜たちが高度な進化をはたしたのである。

 また、白亜紀前期にアジアから多くの恐竜が進入してきた点も見逃せない。角竜やティラノサウルス類が北米に渡来し、いちじるしい進化をとげた。逆に一部のヨロイ竜は北米からアジアへと移動したことも分かってきた。

 今回の展示は、ティラノサウルス類の進化の系譜、そしてミイラ化石『ダコタ』の発見を軸に構成されていた。特にダコタの展示は今後の研究についての示唆に富み、新発見への期待がふくらむ。

(図6)ハドロサウルス類ミイラ化石『ダコタ』
生息地:北アメリカ
生息年代:白亜紀後期
個体全長:未確認
部位:胴体部




  

★ Copyright(c)2008 T. Hanai All Rights Reserved.  http://island.geocities.jp/paleont20/