茜色に染まって

 駆け足で階段を上がってきた幸雄は
踊り場に佇んでいる優美子を見かけた

  『おーい、星野〜 まだ帰らないのか〜?』

 振り返った優美子の手にはすすきの穂が一本握られていた

  『すすき 採りに来たのか?』

    『ううん、拾ったの 昨日の台風で飛ばされてしまったみたい』

 夕日を背にして立つ優美子の表情は良くわからなかったが
幸雄の目にはその姿が少し寂しげな様子に写った

  『夕日 綺麗だな・・』
 そういいながら優美子の隣に立ち茜色に染まった空を眩しそうに見つめた

    『ここから見る夕焼けの景色が好きなの すすきの穂が風に揺れて
     まるで黄金色の海みたいでしょ』

 風が優美子の髪をなでていく

  『いい景色だな』

    『そうでしょ でもこの景色とも もうすぐお別れ』

 そういいながら優美子はマンションの建設予定地と書かれた看板に目をやった

  『そうか〜残念だな すすきもこの辺りじゃめっきり減ったしな』

    『でも、いいの 稲葉君とこの景色見れたから
     はい、これあげる じゃ また明日ね』

 そういうと優美子は握っていたすすきの穂を幸雄に手渡し
駆け足で階段を上っていった

 そして一段上の踊り場で優美子は振り返り幸雄に大きく手を振った
優美子の笑顔が赤いのは夕日のせいだけではないようだった



出演 星野優美子
    稲葉幸雄(未承諾出演)

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