「なんか寂しくなっちゃったな・・・。」
がらんとした部屋を見て悠理は言った。
「は?!何言ってんだあたい。あんな嫌な目にあったのに!そうだ!清々した!
あいつがいなくなって。うん。」
主がいないベットにどすんと座る。
「だいたいあたいが結婚なんてありえないし。しかも相手はシュワちゃんじゃなくて
あの嫌味ったらしい清四郎だなんてさ!」
・・・・・・・・・・。
「でも、あいつ頑張ってたよなぁ。あんまり寝てなかったみたいだし。
父ちゃんと母ちゃんもひどいよな〜。ぽいっと会社清四郎に預けちゃってさ〜。」
・・・・・・・・・・。
「別に一緒に過ごしてたわけじゃないけど、いないとなるとな〜。なんかな〜。」
・・・・・・・・・。
「会いたいな・・・。」
ぽつりとつぶやいたその言葉に自分で驚いた。
はぁ?!べ、別に会いたくなんかないぞ!今日もガッコで会ったばかりだし!
心の中でおもいっきり否定するとなぜだか逆にどんどん会いたくなってきた。
なんだか胸が苦しい。
「あ〜〜もうっ!」
携帯を手に取ると清四郎を呼び出す。
「もしもし」
「あ〜あたい」
「悠理どうしました?」
「あのさ、今からうちに来れるかな?」
「剣菱にですか?う〜ん正直なところ今はあまり伺いたくはないですが・・・。
急用ですか?」
「えっ。いやっ急用っつーか。その、ほら、まだ礼もしてないし・・・。」
「礼?何のですか?」
「えっとーだからうちの会社でいろいろ世話になったし・・・。」
「ああ、もうその話は勘弁して下さい。反省していますから。」
「だから、違くて、お礼だよ。」
「お礼なんて困りますよ、悠理。悠理なりの嫌味ですか?」
「違うって!とにかくすぐに来いよ!」
プツッ
電話を一方的に切って悠理は憮然とした。
どうも上手く伝わらない。
あの時のことは清四郎もかなり気にしているようだ。
今日は家族の皆は出かけていて悠理だけなので、清四郎が暮らしていた部屋に
夕食を用意させた。
強引な誘いに諦めたのか清四郎がやって来た。
「悠理、いったいどうしたんですか?」
怪訝そうに覗き込む。
「ぼくは悠理にすっかり嫌われていると思っていたからびっくりしましたよ。」
悠理は清四郎の顔を見たとたん何だかフワァ〜っと心に広がったのを感じた。
「別に嫌ってなんかないやいっ!あんなこともう二度とごめんだけどな。」
笑って清四郎を見上げる。
「分かっていますよ。やっぱり悠理らしくないですよ。女らしい悠理なんて。」
「う〜〜なんて返したらいいのか分からないじょ。」
「おや、多少は女性らしいと言われたいのですか?」
清四郎も微笑む。
「で、用件は?」
「用というか・・・清四郎がうちにいた時も話とかできなかったし、バタバタと
帰っちゃったし、なんか・・・・・。」
少し呼吸を置いて
「寂しい気がしたからさ・・・。」
清四郎は思いがけない悠理の言葉に少し驚いた。
「それはそれは光栄ですな。」
「あの時もう少し一緒にバカできるとおもったじょ。」
「バカ・・・はぼくはしませんが・・・。そうですね。二人の時間は全く持てませんでしたね。
婚約者だというのに。」
「うん・・・。もう違うけどな。」
チリッ・・・と胸が痛む。
「悠理はさぞかしほっとしたことでしょう。」
「う、うん・・・。」
何だか鼻の奥がつんとする。
一瞬目の前が霞むがなんとか引っ込めた。
「あ、のさ、えーと、清四郎はさ・・・。」
「何ですか?」
「あの時、本当に結婚するつもりだったのか?あたいとさ・・・・・。」
「それはもちろんそのつもりでいましたよ。」
「えっと・・・だから・・・剣菱とは別で・・・その・・・。」
悠理が言わんとしていることを清四郎は理解した。
確かにあの時・・・清四郎は目の前にある輝く剣菱財閥会長の椅子に大いなる魅力を
感じて結婚を決断した。
でもそれとは別に、悠理と結婚することが嫌ではなかった。
いやむしろ積極的な気持ちだった。
悠理となら生涯を共にできると思ったからこそ・・・。
結局話が壊れるまで悠理と清四郎の関係を鋭く突っ込まれることはなかったので
その部分はうやむやのまま過ぎてしまったが。
悠理が言うように二人の時間が取れなかったことも災いした。
でも本当はプロポーズすることも考えていたのだ。
今となってまじまじと悠理にそのことを聞かれると思っていなかったので返事に戸惑った。
なぜ悠理は今このことを聞くのか?
清四郎の心がざわざわする。