今朝は早くから悠理がキッチンでゴソゴソと何かをしている。

普段、キッチンに長くいることなんて珍しいのに。

(食べ物を探すくらいで、料理はしない。)

今日はもうかれこれ2時間くらいになるかもしれない。

清四郎は遠巻きに様子を伺っていた。

なにはともあれ少しでも料理をする気になったのは良いことだ。

どんなものが出来上がってきてもとりあえず食べよう。

そして一通りダメだしをしたら、改善案を伝え、そして全部食べよう。

そう清四郎は考えた。

「これは強力な胃腸薬が必要かもしれませんね。」

清四郎は早速調合に取り掛かった。

「そうですね・・・半夏、黄連、黄ごん、人参・・・・半夏瀉心湯をベースに・・・。」

あーでもないこーでもないと調合に夢中になっていた清四郎のところに

悠理が大きな包みを持ってきた。

「清四郎、あたい弁当作ったんだ。父ちゃんの畑の向こうの芝の小山に行こうよ。チャリで。」

外はとてもいいお天気で、青空が広がっている。

「悠理がお弁当を?それは驚きですな。で、出来栄えはどうなんですか?」

悠理はニカーッと笑ってピースサインを清四郎の目の前に突き出した。

「バッチリだじょ!」

「ほほう。それは楽しみです。行きますか!」

心なしか清四郎もちょっとウキウキしている。

二人は自転車に乗り、小山を目指した。

剣菱家の敷地内とは言え、広い畑を越えた向こうなので

ちょっとした距離がある。

着くと悠理は早速お弁当を広げた。

そこにはラップにくるまれたおにぎりの山、山、山。

「これはすごいですね・・・・。」

「だろ?!いっぱい作ったんだ!さっ食おうぜ。どれにする?」

「では、これを。」

清四郎は山の中から1つ選び、手に取った。

「いただきます。」

一口食べると、口の中で弾ける食感。

「あ、いくらだ〜。」

「そうですね。」

笑顔の悠理に清四郎も微笑んだ。

形はいびつでも、塩加減はバラバラでも、美味しいおにぎり。

青い空に芝の緑。

いつも激務に追われ、一日中ビルの中の清四郎は、心も体もときほぐれていく。

「どうした?清四郎。なんだかニコニコだな。いいことあった?」

「ありましたよ。」

「なに?なに?」

「悠理が作ったおにぎりを食べて、のんびりとしていることですよ。」

「これがいいこと?」

「そうです。最高です。」

悠理はちょっと照れたように笑って、おにぎりを頬張った。

しばらくモゴモゴと食べていたが

「なあ、みんな呼ぼうか。こんなにたくさんあるから。」

清四郎は微笑みながら、ゆっくりと首を横に振った。

「いえ。今日はやめましょう。」

「なんで〜?余っちゃうよ?」

「僕が全部食べますよ。夕食もこれで良いですから。」

そう言うと清四郎は悠理の腕をグイッとひっぱり、その体を自分の

胸の中に抱え込んだ。

「悠理が僕のために作ってくれたものは誰にもあげたくありません。

たとえあいつらでも。だから僕が全部食べますよ。」

「うん・・・・・。」

「また作ってくれますか?」

「うん・・・・・。」

清四郎は悠理を抱き締めながら、おにぎりにまた手を伸ばした。

心の中で、調合した胃腸薬が必要なかったことに少々ほっとしながら。

 

 

 

 

 

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