悠理と清四郎が付き合い始めて三ヶ月ほど経ちました。
倶楽部内での二人は、特に変わらずに過ごしています。
ただ、美童に言わせれば、悠理の仕草が女らしくなり、
清四郎の悠理を見る眼差しが柔らかくなったようですが。
可憐は悠理がネックレスチェーンに指輪を通して大事にしているのを
知っています。清四郎からのプレゼントなのでしょう。
清四郎も意外とそういうことするのねっと微笑ましく思いました。
またそれを大切にしている悠理も可愛いと思いました。
野梨子は幼馴染の気持ちが自分とは別の存在に向けられるようになったことに
少し寂しい気持ちですが、清四郎から発せられる雰囲気が和らいだことを
嬉しく思っておりました。
魅録は悠理とバカをやる機会が減って、やはり寂しさがあるようです。
それでも悠理から寄ってくることはまだまだ多く、ダチとして最高の付き合いだと思っているみたいですが・・・。
さて、季節は秋。
聖プレジデント学園は来る学園祭に向けて盛り上がっています。
生徒会も大忙し。
文化部部長の野梨子を中心に、毎日放課後をまともな生徒会活動に勤しんでおりました。
毎年恒例のミスタープレジデント&ミスプレジデント投票も、今年もまた生徒たちは心待ちに
しております。
とはいっても、毎年ミスターもミスもやはり有閑倶楽部内から選ばれているのですが・・・。
倶楽部メンバーが一年のときは、美童と可憐が選ばれました。
選ばれた二人はダンスを披露することになっていますが、この二人の艶やかで華麗なステップは
皆をうっとりとさせました。
二年のときは、前年とは打って変わって渋いカップル、清四郎と野梨子が選ばれました。
美童と可憐ほどの腕前はないものの、この二人の凛としたダンスに、皆ため息をつきました。
昨年は美童と野梨子が選ばれました。
意外な組み合わせに思えたこのカップルのダンスは皆の目を引きつけました。
お互いの長所を伸ばし、お互いの短所をカバーし合いながら、優雅にしっとりと踊っておりました。
今年はいかに・・・。
学園祭当日。
結果から言うと、選ばれたのは清四郎となんと悠理でした。
実は今年から投票方法が変わったので、そのお陰でしょう。
生徒からの要望で、今まではミスターの投票権は女生徒のみに、ミスの投票権は男子生徒のみに
あったのですが、今年からはミスターとミスどちらとも全校生徒が投票権を持つことになったのでした。
悠理は女生徒に恐ろしく人気がありますので、このような結果になったようです。
ちなみにやはり同性から激しく人気がある魅録もかなりの票を得ましたが、僅差で清四郎に敗れてしまいました。
魅録はホッと胸をなでおろしました。
あんな全校生徒の前でダンスなんか踊れねーっつの!と・・・・。
生徒会室では・・・。
「いいよー!このままでいいってば!」
「だめよ悠理!せっかくミスに選ばれたのよ!おしゃれしなきゃ。」
「そうですわ。それに相手は清四郎なんですから、綺麗にして喜ばせて差し上げたら?」
「そんなん関係ないやいっ!あいつはそんなこと思わないって!」
「とにかく今年はこんなこともあろうかと悠理のドレスも用意しておいたんだから!
さっ着替えに行くわよ。野梨子そっち持って。」
可憐と野梨子に引きずられるようにして着替えに連れて行かれた悠理でした。
ミスター&ミスの表彰式が始まろうとしておりました。
清四郎はすでに舞台袖で待機しております。
そこへ可憐と野梨子に連れられて悠理がやって来ました。
「ヒュ〜♪」魅録と美童が口笛を鳴らします。
そこにはシンプルなドレスに身を包み、派手すぎないお化粧に顔を引きつらせた悠理がいました。
「おい、清四郎、何か言ってやれよ。」
肘で魅録がつつきますが、清四郎は言葉が出ません。
悠理があまりに綺麗で・・・・。
「ほら悠理の手を取って。」
可憐に促されて清四郎は手を差し伸べます。
「悠理。」
悠理はおずおずと手を重ね、二人は舞台へと出て行きました。
清四郎は気づきました。
悠理が今日は自分があげた指輪を指にはめていることを。
二人が登場するや否や生徒達は大騒ぎです。
特に悠理には投票しなかった男子生徒たちは大興奮です。
「剣菱さんってあんなに綺麗だったんだ。」
トロフィーが渡され、いよいよダンスの披露の時です。
もちろん悠理は社交ダンスはできません。
清四郎はなんとか一通りはこなせますので、清四郎がリードするしかありません。
悠理の手を取った清四郎は言いました。
「とにかく動きを合わせて下さい。ゆっくり動きますからね。急がずに。」
悠理は妙に素直に頷きます。
音楽とともに清四郎は動き始めました。
もともと運動神経はぴか一、リズム感もいい悠理なのでなんとか付いてきてくれています。
スポットライトに照らされた悠理はとても美しく、清四郎の目は釘付けになりました。
いつもと全く違う悠理の雰囲気に心臓が高鳴ります。
ゆるやかなワルツのリズムに乗って、ふわりふわり心地よく流れていきます。
「悠理、綺麗ですよ。驚きました。」
清四郎が囁きます。
悠理は顔を上げ「清四郎もかっこいいじょ。」と言うと、顔を赤らめ下を向いてしまいました。
そのしぐさに清四郎は完全にノックアウトされてしまいました。
急に足を止めた清四郎の胸に、悠理が飛び込む形でぶつかりました。
清四郎は驚いて顔を上げた悠理の腰と背中にすっと腕を回すと、唇を重ねました。
「きゃ〜〜!?」
「うそ〜〜〜!?」
会場内は大騒ぎどころじゃありません。
舞台袖で二人を見ていた有閑倶楽部のメンバー達も呆然としています。
「うそ・・・あの清四郎が・・・・。」
「こんな公衆の面前で・・どうなさったのかしら・・・。。清四郎らしくありませんわ。」
「やるなぁ。清四郎も。普段ああなのに大胆だよね〜。」
「あいつにこんなことさせるなんて、悠理すげえな・・・。」
舞台の真ん中には見詰め合っている二人がいます。
「あにするんだよっ!こんなところで恥ずかしいだろ!」
「すみませんね。悠理があまりにも魅力的で我慢できませんでした。
まったくあなたって人は・・・・。ぼくをこんな行動に走らせるなんて・・・・。」
清四郎はそう言うともう一度口付けをして、さらに会場内を混乱に陥れたのでした・・・・・。