初夏に近い日の放課後。
今日は職員会議とやらで授業が早く終わった。
あまりに外の空気が気持ちいいので、俺は芝生にゴロンと転がりボーっとしていた。
その内眠ってしまっていたらしい。
目が覚めると体を起こし、思いっきり伸びをした。
ふと横を見ると野梨子が文庫本を開いて座っていた。
「目が覚めまして?魅録。」
野梨子が微笑む。
「ああ。今日は気持ちいい天気だよなあ。」
「本当に。」
野梨子は空を見上げ目を閉じた。
そのスッと伸びた首筋に目を奪われる。
コクンッ。
俺の喉が小さく鳴った。
げぇー、何考えてんだ!?俺!
いつも見てるだろーが。野梨子の横顔なんて。
何欲情してんだ・・・・落ち着け!俺!
赤くなって一人でジタバタしている俺に気付いた野梨子がこっちを見る。
「どうなさったの?」
「!!・・・別に・・・・なんとも。」
表面を冷静に取り繕ったつもりだが、上手くいかなかったのだろう。
野梨子は訝しげな顔をする。
俺はもう一度ゴロンと寝転び目を閉じた。
脳裏に清四郎の怒りに満ちた顔を思い浮かべる。
そうだ。あいつにバレたら殺されるかも。
ふと自分の上に影を感じた。
ん?と思って目を開けるとそこには野梨子のどアップ。
俺の心臓は跳ね上がった。
野梨子は芝に上に膝と手を付き、俺の顔を覗き込んでいる。
「魅録、熱がありますの?顔が赤いですわ。」
野梨子が俺の顔に横に正座し、額に手を当てた。
「ちょっと・・・熱いですかしら?」
「ねーよ。熱なんて。ちょっと暑いだけさ。」
俺は特に暑くもなかったのだが、起き上がり、そうらしく上着を脱いで見せた。
下は普通に黒のTシャツ。
野梨子の顔を見るとなぜだか赤く染まっていた。
んん?野梨子こそ熱がある?
気温はそこそこあるとはいえ、風で体を冷やしちまったか?
「どうした?野梨子も顔赤いぞ?大丈夫か?」
俺はとりあえず今脱いだ俺の上着を野梨子の肩にかけてやった。
野梨子は俯き、おれの制服を胸の前で交差した両手で掴んだ。
そして俺に顔を見せ、言った。
「あの・・・・わたくし先に戻りますわ。」
立ち上がり小走りにかけていく。
俺はその後姿をそのまま見送った。