「先生!救急車が到着します!」

「OK。すぐ行く!」

魅録はERの救急出入り口へ駆け出した。

すぐに赤いランプが見え、救急車が目の前で停止する。

「よし降ろせ。」

「魅録!」

悠理が走って来た。

「悠理!このまま処置室まで押せ!」

「ラジャー。おりゃ!!」

疾走するストッレッチャーの前方に清四郎の姿。

「おら、どけー。」

清四郎はひらりと避け、併走する。

「吐血か?」

患者の口の周りに血糊が付いている。

「そうだ。ブルス!ドルック!心電図!ライン確保!」

処置室に入るや否や魅録が叫ぶ。

「悠理!魅録!移しますよ!1、2、3!」

清四郎の掛け声で患者をストレッチャーから処置台へと移した。

あっという間に周りを取り囲むスタッフたち。

「心拍数150近くあります!」

ゴボッ

患者が再び吐血する。

「うげぇ・・・。油断した・・・。」

近くにいた悠理が被害を受けた。

「珍しいですな。悠理がまともに喰らうなんて。」

「脈はどうだ?」

「橈骨動脈はだめね。頚動脈でなんとか。」

可憐が渋い顔をした。

「大分吐いたっぽいな。」

魅録は控えている救急隊を見る。

「トイレの便器内と床一面でした。」

「眼瞼結膜はどうです?」

「真っ白だぜ。おい!輸血部に連絡!MAP4単位!」

「よし。動脈ライン確保しました。」

可憐がモニターを見る。

「血圧60だわ。」

魅録と清四郎は顔を見合わせた。

「静脈瘤破裂ですかね。」

「そうっぽいな。」

「潰瘍を否定する所見はなんでしょう?」

研修医が質問する。

「食道静脈瘤の原因になる有名な疾患は?」

「肝硬変・・・ですか?」

「正解。で、その所見は?」

「あ・・腹水、黄疸、くも状血管腫、手掌紅斑・・・・。」

「はい。ではその所見を自分達の目で確認してください。」

その横でなぜか悠理のテンションが下がっている。

「どうした?悠理。」

魅録が横目で見て言う。

「いや・・・なんか昔を思い出しちゃった・・・・。」

「今でも、常に悠理には必要なことですな。若手に笑われないように。」

「・・・・・・・ほっといてくれ。」

ゴボゴボッ

「うわぁ!」

今度は上手く避けた。

「こりゃダメだな。とにかく止血しようぜ、清四郎。」

「そうですな。魅録、SBチューブお願いします。」

「了解。可憐、SBチューブ用意して。」

魅録は吐血を続ける患者の鼻から器用にチューブを入れていく。

「いつもながらにすばらしい手つきですな。」

「よし。これで少しマシになるだろう。」

「血圧上がってきたわ。」

「んじゃ内視鏡するか。」

「では僕は家族に説明に行ってきます。」

ムンテラが苦手な魅録は快く清四郎を送り出した。

 

「一段落ですな。」

コーヒーの香りが医局中に漂う。

「あー疲れた。」

「そうね・・・あれだけしても助けられないもんね・・さっきの人。」

「まっ我々も酒に飲まれないよう気をつけなくてはいけませんね。」

「はがっ、ふごげがってが。」

「おい、悠理。食うかしゃべるかどっちかにしろ!」

悠理はクッキーの缶を抱きかかえて、凄い勢いで食べている。

清四郎は苦笑しながら言った。

「取り合えず寮に戻りますか。そろそろ交代の時間ですし。」

「飯作ってくれる?」

「ご飯・・・でしょう。作ってあげますよ。」

「よし!帰ろう!じゃね〜。」

悠理はもうドアを開けようとしている。

「ああ、はよ帰れ。」

「ではお疲れ様でした。何かあったら連絡下さい。」

「お疲れ〜。」

可憐が笑顔を見せる。

魅録は無言で片手を挙げた。

病院を出ると爽やかな朝だ。

さっきまでの血生臭さが洗い流されるようだ。

駆け出す悠理の背中を見ながら清四郎は独り言を言う。

「夜勤明けなのに元気ですな・・・あいつは。」

あのパワーに助けられることが沢山ある・・・・。

「何にしましょうかね。朝ごはん・・・・。」

清四郎は少し足を速めた。

 

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