プルルルル
消防庁からのホットライン用の電話が鳴る。
医局に緊張が走った。
清四郎が取る。
「はい。」
「先生、交通事故なんですが。」
「状態は?」
「意識あり。脈も触れますが、内臓損傷疑いと言うことで・・・。」
「分かりました。連れて来て下さい。」
「ありがとうございます。10分ほどで到着します。」
電話を切ると清四郎は振り返り、皆に伝えた。
「交通事故患者です。外傷は無いようです。その分かえって厄介かもしれませんね。」
魅録が思いっきり伸びをした。
「よっし!仕事、仕事!」
腰が重い研修医たちを煽る。
その横で清四郎が悠理からお菓子を取り上げている。
可憐はすでに準備をしに処置室へと消えていた。
救急車が到着し後部ドアが開かれた時、待ち構えていた魅録と悠理は驚いた。
「お願いします!」
「なんだか物々しいじゃねえか・・・・。」
「あれ〜?!」
「さっき急に脈が触れなくなりまして・・・。」
救急隊が必死に人工呼吸と心臓マッサージを施していた。
「ちっ、やっぱり予想通りか。いくぞ!」
「おーし!」
ストレッチャーが疾走する。
「悠理!院内で交通事故なんて洒落になんないぞ!」
ストレッチャーの横を、心臓マッサージをしながら走る魅録が叫ぶ。
この速さを心臓マッサージをしながら併走できるのは魅録ぐらいだ。
「大丈夫だよ!」
処置室から清四郎が出てきてストレッチャーを上手く減速させ処置室へと滑り込ませた。
「心肺停止だ!」
「移します!1、2、3!」
処置台に移された患者の服は、鋏を持って待ち構えていた可憐によって切り刻まれ、
素っ裸になった。
「マッサージ代われ!」
魅録が研修医に叫ぶ。
「心電図!ライン確保!」
指示を出しながら清四郎は患者の体をくまなく診る。
「気管内挿管するぞ!野梨子呼べ!」
「外傷は無いが肋骨が相当酷い状態ですな。瞳孔がやや開いています。」
そこへ野梨子が駆け込んできた。
「お呼びですって?」
「ああ、挿管代わってくれ。」
「分かりました。」
魅録は挿管を野梨子に代わってもらい、
清四郎の目を見た。
「開胸します。」
「だな。」
可憐が素早く胸部を消毒する。
清四郎がメスを握り、あっという間に胸腔内に達した。
噴き出る大量の血液に皆一瞬後退りした。
清四郎は気にせず奥へと進んでいく。
魅録が開胸器を用い、さらに開いていった。
若手に流れる血液を吸引させながら、清四郎は手を入れ、心臓を確認した。
「心嚢は大丈夫そうです。」
「じゃあ心臓はオッケーか・・・。」
「と言うことは、大動脈ですかしら。この出血量・・・。」
患者の胸からは止め処なく血液が溢れている。
「・・・・・当たりです。」
魅録も覗き込む。
「うわ、こりゃダメだ・・・。ブッツリいっちゃってるよ。」
「下行大動脈断裂です。」
処置室の中が静まり返った。
「死亡時刻15時27分・・・・。」
清四郎の言葉を可憐は書きとめた。
「せっかく呼び出したのに悪かったな。」
一足先に落ち着いた医者連中。
お茶をすすりながら魅録が野梨子に言った。
「いえ・・・残念でしたわね。」
「まあ、あれだけはっきりとしているとね。諦めもつきますから。」
そこへ可憐と悠理が戻ってきた。
「お疲れ様。」
野梨子は二人を含む看護師達にお茶を出した。
「ありがとう。」
「サンキュ。」
可憐は一口飲み、ほーっと息を吐き出した。
「浄化されていくわ・・・。」
「血生臭かったですものね。」
「今日は皆定時上がりだよな?よし!飲もうぜ!」
「さっぱりと鍋でもしますかね。実家に蟹が余っていましてね。」
「蟹大好き〜!」
悠理が大喜びだ。
「おっ、いいな。いい酒開けるか。」
プルルルル
「げぇーっ!」
「来ましたな。」
電話に手を伸ばした清四郎を横目に、魅録はまた大きく伸びをした。