「来たぞ〜!」

いつものことながら悠理の押すストレッチャーは暴走し、魅録は舵を取りながら

併走する。

処置室に入ったとたん群がるスタッフ。

「ブルス130微弱、血圧60、意識レベル300!」

「目立った外傷無し。野梨子、挿管してオペ準備!」

「分かりましたわ。可憐、輸血部にMAPを!塩酸ドパミン用意!」

「腹かな。」

「多分。結構な出血量っぽいですな。悠理、エコー。」

「あいよっ!」

悠理がエコーを清四郎の方に蹴り飛ばす。

「それは止めなさいと言ってるでしょう!」

魅録がエコーを当てる。

「Morison窩だぜ。なんも見えねー。」

「腹腔内出血・・・大事ですね。」

「ショックスコア3、ショック指数2、2ですわ。」

「悠理!オペ室へ運べ!」

「了解!」

 

「準備オッケーですわ。」

「では始めます。ドレーン挿入。開腹。」

「おわっ。血だらけだな。どこだ?」

「ん〜ぱっと見た目3箇所ですね。下大静脈。肝臓背面。」

「んじゃ・・・。」

「PRINGLE法でいきます。」

「おうよ!。」

「魅録は引き続き損傷箇所の確認を。」

「了解。」

「はい、血管鉗子でしょ。」

「どうも。」

「清四郎はこういう難しいオペになると目が違うよね。キラキラしてさ。」

「美童うるさいですよ。門脈止血終了。」

「邪魔になってないみたいだけど。」

「肝部分切除終了。バルーンカテーテル挿入。」

「血圧下がっていますわ。60−40」

「下大静脈縫合。魅録どうですか?」

「・・・・・分かんねー。」

可憐が魅録の汗を拭く。

「さ、深呼吸してもう一度。」

「二箇所目縫合終了。」

「血圧まだ下がっていますわ!」

「ありますね。まだ。」

「ああ。もうちょい時間かかりそうだ。・・・美童、チューブくれ。」

「SCHROCKシャント作るの?」

「ああ。」

「その方が良いでしょうな。落ち着いて探せる。三箇所目縫合終了。僕も探しましょう。

野梨子、血圧維持任せましたよ。」

「シャント作ったのなら、なんとかなりますわ。」

「みんな頑張れ〜。」

「・・・悠理、かえって力抜けるし。」

「悠理、仕事して下さいよ。」

「してるよ!なんだよ、もう・・・。」

「みんなを和ませるのも大事な仕事だよね。」

美童が笑いながら言う。

「これだ!清四郎!」

「すぐ縫合します。」

「良かったわね。見つかって。」

手術室内に安堵の空気が広がった。

 

「今日はちょっと冷や冷やしたわね。」

緑茶をすすりながら可憐は笑った。

「僕は冷や冷やなんかしませんでしたよ。」

それでも疲れたのだろう。

清四郎は積極的にどら焼きにかぶりついていた。

もちろん悠理は何個も頬張っている。

「あんたは変態なのよ。」

「失敬な。皆を信頼していますから。」

「あら、嬉しいことを言って下さいますのね。」

野梨子も緑茶を口に運んでいる。

「当然ですよ。」

清四郎は魅録を見る。

魅録も視線を返す。

「でも本当だよ。たまに違うメンバーでのオペに付き合うことがあるけどさ。

そういう時の清四郎はちょっと雰囲気違うもん。ね?」

美童は清四郎を見た。

「そうかもしれませんね。」

「清四郎と魅録が一緒のオペって、執刀医と第一助手がごちゃ混ぜよね。

だけどそれで上手く進んでいくのよね。普通は有り得ないけど。」

「魅録は技術もあるけど、清四郎に遠慮することがないから、それが秘訣かもね。」

「俺、苦労してんのよ。」

泣くまねをする魅録を苦笑して見る清四郎は、どこか楽しげだ。

「あたいも苦労してるじょ!」

「「「「「どこが?!」」」」」

「ひっどーいじょ!!!」

医局に笑いが溢れる午後。

皆の願いは1つ。

その願いの元に皆の心は1つになり奇跡も起こせるのだ。

 

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