朝の回診も終わり、医局でコーヒーブレイク。

今日はとても穏やかで、今のところ患者も運ばれてこない。

「なんだか気が抜けるわね・・・。」

可憐が窓の外を眺める。

桜の花がもう少しで満開だ。

「我々の仕事は暇な方が世の中平和ということですからね。」

「ねえ、このまま落ち着いてたらお昼は外で食べない?」

「花見か!もちろん賛成だじょ!」

「いいなあ、それも。」

「裏の桜ならいいですな。人目もないですし。」

「美童と野理子はオペに入ってるけど、終わるかしらね?」

「あたい内線してみる。」

悠理は言うや否や受話器を上げ、オペ室を呼び出していた。

慌てて清四郎が腕を伸ばし、電話を切る。

「バカか!邪魔すんなって!」

「まったくそんなことしたら野梨子の雷が落ちますよ。」

「・・・・・・・・・雷は嫌だ。」

「では・・・・」

清四郎は机の引き出しからガサガサと紙を出してきた。

「暇を持て余してもなんですので、悠理の復習に付き合いますか。」

「うげっ。」

「今日は脳神経にしますかね。第一脳神経は?」

「う〜鼻。」

「まあそうですが・・・・嗅索。第二脳神経は?」

「目。」

「そういう覚え方じゃなくて・・・視神経でしょう。」

「でも覚えてるのねえ。それなりに。で、次の第三脳神経はどうなるの?」

「目。」

「ふ、ふ〜ん。」

「覚えているとは言い難いですな。それでは。」

「なんだよ〜。そだ!魅録ちゃん確か解剖学苦手だったよね〜?!」

電子カルテをいじっていた魅録が顔を向ける。

「第四脳神経はなーんだ?」

「滑車神経。」

悠理は清四郎を見る。

「合ってますよ。」

「えーなんでえ?じゃあ第11脳神経はなーんだ?」

「副神経。」

また悠理は清四郎を見る。

「合ってます。」

「じゃ、じゃあ第17脳神経は?」

「・・・・・・・・・。」

「おっ分かんない?!」

スパーン!

医学雑誌を筒状に丸めたもので清四郎は悠理の頭を叩く。軽く。

「あにすんだよ!」

「脳神経は12までです。」

「悠理ったら〜。いくら苦手の魅録だってそんなの基礎の基礎だもの。」

「そもそも魅録の専門は脳外なのを忘れていませんか?さあ続き。

第五脳神経は?」

その時、消防庁のホットラインが鳴った。

マッハの速さで受話器を取る悠理に皆苦笑。

「おい!受けたからな!さっさと処置してお花見だ!」

医局を飛び出していった悠理の後に続く他のスタッフ達。

「おーし。いっちょ間に合わせますか昼に。」

魅録が立ち上がる。

「ええ。そうしましょう。」

清四郎も準備を始めた。

「ねえ、桜の枝病室に飾らない?患者さんにもお花見気分味わって貰いましょうよ。」

「それいいな、可憐。時間が出来たら手伝うぜ。」

「いいでしょう?清四郎。少しぐらい。」

「ええ。親父には僕から言っておきますよ。そのかわり表の桜はダメですよ。」

「分かってるわ。悠理にも手伝わせようっと。」

「適任ですな。」

三人は話しながら足早に処置室へ向った。

 

「悠理〜!魅録〜!気をつけて〜!」

「あと何本だ〜?!」

「あと6本ですわ〜!」

「おお、やってるねえ。」

「あら、おじ様。」

病室に飾る桜の枝を手が空いているメンバーで切りに来ている。

いつの間にか院長の菊正宗修平が見に来ていた。

「おーい、おっちゃ〜ん!」

悠理が木の上から手を振る。

「木の上は悠理くんと魅録くんか?」

「そうですわ。」

「清四郎はどうした?」

「美童と一緒に処置中ですの。でも、もし居てもあの二人に任せると思いますけど。」

野梨子の言葉に修平も頷く。

「二人とも気をつけろよー!落ちて運び込まれたら洒落にならんぞー!」

「大丈夫〜!!おっちゃんの部屋にも飾る〜?」

「そうだな。1つもらおうか!」

「降りるから回りから離れろー!」

ガサガサ  ストッ

桜の枝をいくつか抱えた魅録が飛び降りてきた。

「大丈夫ですの?!」

野梨子と可憐が駆け寄る。

「ああ。」

「いつも元気が良いねえ。なにより。この仕事、体力勝負だからね。」

「こんちは。おじさん・・・・あ、院長か。」

「ははは。いいよ、おじさんで。・・・・良い枝だ。患者さんも喜ぶだろう。」

「降りるぞー!!それっ!」

ガサガサガサ   ストンッ

悠理もいくつもの枝を抱え、飛び降りてきた。

「悠理くんも相変わらずパワフルだね。この後、花見をするんだって?

差し入れを届けさせるよ。」

「やったー!!何?何?」

「和菓子だよ。じゃあ桜の枝もその時秘書に渡しておいてくれ。」

そう言うと修平は病院へ戻っていった。

「さあ、野梨子。枝を病室に飾りに行きましょうよ!」

「ええ可憐。お二人はお花見の準備をよろしくお願いしますわ。」

「お〜い!」

「あら美童ですわ。終わったのかしら。」

「お疲れ。終わったのか?」

「うん。ちょっとてこずっちゃった。」

「清四郎は?」

「すぐ来るよ。」

美童は桜の木を見上げた。

「綺麗だなあ〜。これぞ日本の春だね。」

「毎年見てるけど、やっぱりいいもんだな。」

「桜最高!!あっ清四郎だ。清四郎ー!!」

悠理は清四郎にブンブンと手を振った。

清四郎も手を振り答えながら、歩いてくる。

「よーし!準備だ!」

「急ごうぜ。」

「そうだね。少しでも長く楽しめるように。」

 

・・・・・高校時代から変わらない6人の日常がここにもある。

 

 

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