み「古今東西、山手線ゲーム!いくか?」
せ「暇ですからやりましょう。」
の「お題は何ですかしら?清四郎。」
ゆ「嫌だー!!!清四郎のお題なんか絶対嫌だ!」
せ「そんなに喜ばれては選び甲斐がありますね。フム・・・。」
び「僕、内臓希望。」
せ「では・・・王道の心臓にしましょうかね。解剖学的名称で。」
ゆ「嫌だって言ってるだろ!」
か「まあまあ。遊びで復習出来るんだからいいじゃないの。」
の「言った名称の場所も解剖図で示しませんこと?」
せ「賛成です。その方が良い。」
み「確かにな。名前覚えてるだけじゃ役に立たねえからな。」
清四郎が解剖図を机に広げた。
か「じゃ、ハンデで悠理からでいいわよ。」
ゆ「・・・・・左心室。」
悠理はぶすっとしながらも答え、解剖図を指差した。
み「おお〜。それは外せねーな。じゃ俺は左心房。」
び「右心室。」
か「右心房。」
美童、可憐が便乗して答える。
の「皆さん、それじゃあ面白くないんじゃありません?・・・左繊維三角。」
せ「そうきましたか。では分界稜。」
悠理は益々ぶすっとした顔になった。
ゆ「嫌味な奴らだなー。」
せ「いやいや、これくらい。」
の「当然の範囲ですわ。」
4「「「「・・・・・・・・・・。」」」」
の「さ、悠理の番ですわよ。」
ゆ「・・・・・三尖弁。」
み「おっまたまた良いとこ突いてきたな〜。なら僧帽弁。」
ゆ「なんだよ魅録。あたいの後ろくっ付いて〜。」
び「僕もくっ付いて行くよ〜。大動脈弁。」
か「あたしも。肺動脈弁。」
の「悠理が道標になっているなんてすごいですわね。心尖切痕。」
せ「右縁。」
ゆ「う〜心膜。」
せ「順調ですな。」
み「どうしようかな〜洞房結節。」
び「刺激伝道系できたね。なら房室結節。」
か「ヒス束。」
の「でしたらプルキンエ線維。」
か「ちょっと〜何突然平凡になってるの?」
び「そうだよ。僕らの分取らないでよ、野梨子。」
の「ほほほ。」
せ「ご希望に応えて、半月弁結節。」
ゆ「ぐう〜〜まだ続く?もう思いつかないじょ・・・・。」
せ「まだまだですよ。それなら・・・」
清四郎の声を遮るようにホットラインが鳴った。
皆の視線が一斉に集まった。
近くに居た研修医が受話器を取る。
「菊正宗先生!アッペ疑いだそうですけど受けますか?」
「アッペだ〜?なんでうちに回す?3次じゃなくていいだろーが。」
「なんでしょうね?下が詰まってるんですかね?まあ暇だからいいでしょう。
受けて下さい!」
医局は慌しくなった。
「さーてと仕事だ。おい、電話取った研修医!患者情報は?」
「21歳女性です。急に腹痛を訴え出したとのことで、開業医の先生からの依頼のようです。」
「若い女性ですか・・・・。」
「おーい、可憐!産婦人科の先生呼んで!」
「さて、アッペか外妊かはたまた茎捻転か・・・・。」
騒ぎに紛れてうやむやになった山手線ゲームに悠理はほっとした。
「まったく・・・ゲームすらウカウカやりたいなんて言えないな〜。」
美童が悠理の肩をポンッと叩いた。
「ぼやかない、ぼやかない。清四郎はさ〜悠理にもオペ看をしてほしいんだよ。」
「ええーっ!?」
「だから色々意識を高めようとしてるんだよ。」
「だったら外回りで十分だじょ・・・。」
美童はしょげる悠理がちょっと可愛いと思い、微笑んだ。
「でも僕も期待しているけど。悠理の野生の勘って何か役に立ちそうなんだよね〜。
オペでも。」
「そっか〜!?でもあたいは嫌だじょ?器具の名前覚えんのだって
考えただけで泣きそう・・・。」
「ふふ。そうだよね〜。」
「悠理!美童!救急車が着いたわよ!」
「おっといけね。可憐が怒ってるよ。」
「悠理行こう。」
二人は駆け出した。
二人の少し後ろで話を聞いていた魅録は思った。
”オペ看としての悠理の野生の勘が働く・・・見当たらない出血箇所が分かるとか、
癌の見えない転移場所が分かるとかなら良いけど、オペ中の患者のその生死が分かるとしたら・・・
あまり歓迎できない能力だよな・・・。そんなこと分かっちまったらオペ出来なくなるぜ・・・。
あいつにはこのままでいてもらいたいなあ。”
もっとも魅録の心配はいつまでも勉強する気にならない悠理によって
この先もずっと無用の長物となるのだが・・・・。