9月も終わりに近づいてきた。
日中はまだ夏のような強い日差しが降り注ぐが、でも、空は高くなっている。
そして朝晩は涼しい風、秋の匂い。
あたいはこの季節が好きだ。
もちろん大好きな季節は夏!
照りつける太陽と輝く海!!
それが終わる秋にはちょっとセンチになるけど(でも食い物は美味いぞ!)、
でもなんだか嬉しい季節なんだ。
それはたぶん、あたい達が結婚した季節だから。
一緒に暮らし始めた幸せな気持ちがよみがえって来て、くすぐったい気分になるから。
10年を越えた今でも、やっぱりあの日は大切なんだと思う。
当時と変わらず、同じように過すあたい達。
あの学園時代のままの気持ちが色褪せない。
取り巻く環境は変わっても、二人の間に宝物ができても、あたい達は変わらず同じ。
初秋の風は甘酸っぱいんだ。
あの日、あたい達は本当に、普通に、日常的に暮らし始めた。
特別なこともせず、毎日がただ過ぎていく。
その途中にポンッと二人になっただけ。
キャンドルを灯したり、シャンパンで乾杯したり、そんなこと何もしなかったのに
甘い思い出がちゃんと刻まれてる。
その時はそんなこと気にもしなかったけど、当たり前のように暮らし始めたけど、
年を重ねるにつれて、ちゃんとあの時のあたいもこんなふうに風だけで思い起こせる
幸せな思いを感じていたんだって、なんだか不思議だ。
あいつはどうなのかな?
秋の風を感じているのかな?
今日帰ってきたら聞いてみようか
「風が秋になってきたの分かる?」って。
あいつはこう言うかな。
「もちろんですよ。」
そして
「あなたがそんな風流なことを言うなんて珍しいですね。」って
笑いながら付け加えるかもしれない。
そう、すごく優しい笑顔でね。