魅録から腕時計をもらった。

シンプルな、本当にシンプルな銀の時計。

キラキラとした飾りとか、色とか全く入っていない

シンプルな魅録らしい時計。

ただ、わたくしの腕に合わせて華奢なデザインになっている。

魅録とお付き合いを始めて半年ほど経った。

わたくし達はお互いのペースを乱すことなく、ゆるりゆるりと時を重ねている。

わたくしもお茶の関係で色々忙しいし、魅録も交友関係で忙しいので

それを妨げないよう、お互い過している。

もちろん倶楽部内でも今まで通り。

そんな関係は少々寂しく思うこともあるが、わたくしには合っていると思う。

魅録もわたくしも、はっきりとした自分の世界を持っているので、束縛は

二人の関係に何の得にもならない。

 

 

そう・・・・そうなのだが。

 

 

どこか心の奥底で、束縛してくれることを望んでいる自分に

わたくしは気付いている。

”おまえは俺のもの”という言葉は嫌いなのに、わたくしはわたくしでしかないのに、

それを魅録の口から聞きたいと願っている自分がいる。

魅録は絶対に言わないのは分かっているけど。

なので時計をもらったとき、とても嬉しかった。

わたくしの時を魅録がくれた時計が刻んでいく。

わたくしの全ての時間を魅録の時計が見ている。

見えない聞こえない束縛を感じて嬉しかった。

 

「俺のあげた時計、いつもしてくれてるのな。」

魅録がわたくしの手首を見て言った。

「ええ。寝ている時もつけてますのよ。」

「気に入ってくれてよかったよ。」

「だからいつも魅録といっしょですわ。」

魅録は一瞬ためらったようだったが、口を開いた。

「ああ。・・・・・・だからあげたんだ。」

「どういうことですの?」

「野梨子は自由だから。俺の腕の中にいることが少ないから。

俺がそばにいないときも、一緒にいる気分になれるようにさ。」

「わたくしが?」

「いや、俺が。俺が野梨子のそばにいるって俺自身で思いたいから。

ん〜上手く言えねえな。言ってること分かるか?」

わたくしはちょっと緊張して頷いた。

胸がドキドキする。

じわじわと嬉しさが込み上げてくる。

気付くとわたくしは微笑んでいた。

「魅録、大好きですわ。」

「な、なんだよ突然。」

わたくしはうんと背伸びをして魅録の首に腕を回して抱きついた。

「ねぇ、『おまえは俺のものだ』って言って下さいな。」

「え?!」

「『お・ま・え・は・お・れ・の・も・の』、ですわ。」

「な、なんで・・・・。」

「聞きたいんですの。」

「・・・・・そんなこと口にしちゃったら俺・・・・。」

「なんですの?」

「おまえを離したくなくなるから。」

「離す予定ですの?」

「いや、何て言うか、距離を取れなくなる。野梨子、嫌だろ?」

「いいんですの。そうして欲しいんですの。」

一呼吸置いて、魅録はわたくしの腰に腕を回し、力を込めた。

わたくしはそれに従い、魅録に体を預ける。

「野梨子、おまえは俺のものだ。離さなねーぞ。」

優しく、ゆっくりと言う魅録の声にわたくしは全てをゆだねた。

心地良く響く魅録の声がわたくしを包み込んでくれる。

幸せ。

 

 

 

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