今日、俺は野梨子と結婚した。
これからの人生、二人で歩んでいく。
野梨子との結婚は、予想外で、でも自分の中では自然な流れだった。
野梨子のことを昔から好きだったのかもしれない。
ただ清四郎の存在が、そのことを自覚させないようにさせていたのかも
しれない・・・・今となっては分からないけど。
俺は聖プレジデント学園の高等部を卒業すると、
そのままエスカレーターで大学へ進み、基礎工学をみっちり勉強した後、航空大学校へ入った。
大学の時は、聖プレジデントにはない医学部へ進んだ清四郎以外は
皆、そのまま聖プレジデントの大学部へ進んだので、
敷地内に小さな有閑倶楽部の部室を悠理の親父さんに建ててもらい、高校の時と同じように過ごした。
清四郎もちょくちょくやって来て、さもあたり前のようにそこに居たので、
本当に生徒会室が移ってきた感じだった。
それにしても清四郎のやつ、あんなに忙しい医学部に通いながら
よくあれだけの余裕が、時間的にも、精神的にもあったもんだといまさらながら思う。
なぜなら、俺は航空大学校に入ってからはそんな余裕は無かったから。
航空大学校はそのスケジュール自体が非常にハードだったし、
興味があることだらけで、俺は夢中だった。
それにここで出会った仲間たちがまた最高だった。
俺の世界はよりいっそう広がった。
そもそも学校が宮崎・帯広・仙台を回る全寮制だから、皆にそう簡単に会えるわけでもなかった。
俺がその世界に浸っている間、清四郎はまだ学生だったが、
他の4人は大学を卒業して、社会に出ていて、これまたしょっちゅうつるんでいるようだった。
が、俺は有閑倶楽部とはちょっと疎遠になっていた。
そんな時でも、野梨子は定期的にメールをくれた。
そのほとんどは皆の近況だったが、時折、野梨子自身のことも書いてあった。
俺の返事はいつも素っ気無かったのに、野梨子は気にせずにまた送ってくれた。
そのメールがあったから、俺はあいつらから遠く離れているわけではないと
いつも思っていられたのかもしれない。
一回だけ、俺は皆を旅行に誘ったことがあった。
行き先は沖縄の宮古列島の中にある下地島。
そう、下地島空港で行われるパイロット訓練を見に来ないかと誘ったのだ。
もちろん、驚くほど綺麗な綺麗な海と空を楽しんでもらいたかったからだが、
やはり俺のやっていることも見てもらいたかったのもある。
でも遠ざかっていた俺の誘いなんか無理かな・・・って思っていたのに、
全員都合をつけて、剣菱マークのジェットで飛んできてくれたときは、本当に嬉しかった。
俺の操縦する訓練機のタッチアンドゴーを皆は地上から眺めていた。
後で清四郎に「魅録、本当にすごいですね。好きもここまでくれば
見事です。今日、見れてよかった。鳥肌が立ちましたよ。」と
言ってもらった時には、くすぐったいような誇らしいような変な気分だった。
あいつらに認めてもらえるのは、何より嬉しいし、励みになる。
ましてや清四郎に言われたら、大きな自信につながる。
野梨子はあの時もメールをくれた。
「今日は凄い迫力で驚きましたわ。あれは本当に魅録が
操縦していらしたの?車の運転ならまだしも、飛行機の操縦なんて
想像もできませんわ。わたくしどうして飛行機が飛ぶのか未だに
理解できません。とにかく事故にだけは気を付けてくださいね。
魅録がパイロットになれる日を楽しみにしています。」
なぜかこのメールはすごく嬉しくて、今も保存してある。