成田は霧雨が降っていた。
わたくしはパリから戻ってくる魅録の便を待っている。
あと五分ほどで到着する予定だ。
雨に濡れたデッキに出て空を見ると、旋回している機が見える。
あれかしら?
しばらく旋回すると、その機は滑走路を目指して降下してきた。
視界が悪いこんな日は、魅録はコーパイに任せず自分で操縦しているはず。
どうか最後まで無事に降りてきて。
もう何十回も見ているのに、毎回祈る気持ちになってしまう。
そんなわたくしの心配はいつも無用ですけど。
ロビーに到着のアナウンスが流れた。
やはり魅録が乗っている便だ。
ロビーのガラス張りの窓に機首が近づく。
ぞろぞろと降りてくる乗客たち。
皆さん快適な空の旅だったかしら?
ついお節介なことを思ってしまう。
お客さんが途切れるとしばらくしてクルーたちが降りてきた。
魅録!
パイロットの制服に身を包んだ魅録が、他のクルーたちと笑いあいながら歩いてきた。
魅録は本当にかっこいい。
わたくしの夫ですのよ!ってここにいる人達に叫んで教えたい!
わたくしに気付くとこちらへ来た。
「ただいま。野梨子。」
「お帰りなさい。魅録。」
魅録は優しく微笑み、ロビーの多くの人が行き交っている中、わたくしを抱きしめてくれる。
恥ずかしいけど、心地いい瞬間。
あなたの帰りを待っている時のわたくしは、きっと世界の誰よりも恋をして輝いているはずですわ。