「あっちいなあ〜。」
悠理はキャミソールをパタパタと扇ぎ、少しでも多くの風を送り込もうと頑張った。
「悠理!」
「なに?」
「中が見えますよ!」
悠理はキシシと笑い
「嬉しい?」
と聞いた。
「そういうことではなく!はしたないですよ。あなたも和尚のところへ
通っている身なら心頭滅却すれば火もまた涼しです。」
「うえ〜。」
清四郎のベットの上でゴロゴロしている悠理は大げさに顔をしかめて見せた。
「そもそも男の部屋で、そんな格好でベットでゴロゴロしているなんてどうなんです?!」
「どうなんです・・・って?」
「少しは女性としての自覚を持ったらどうなんです?もっともあなたを襲うほどの
腕がある男もなかなかいませんが。」
「そうだじょ!みんなあたいのこと女に見えないって言うし。」
清四郎は眉間に皺を寄せた。
「中には物好きがいるかもしれません。」
悠理はまたキシシと笑い、ふざけてみた。
「それっておまえのこと?」
「その通りですよ。」
「えっ?!」
次の瞬間、悠理は清四郎にベットの上で組み敷かれていた。
「先程あなたを襲える男は中々いないと言いましたが・・・・僕はあなたを襲える
数少ない男のうちの一人ですよ。」
「ちょっ、まて、清四郎。」
「覚悟はできているんでしょうね?」
「か、覚悟って何?」
何時に無く真剣な眼差しの清四郎に悠理は戸惑っていた。
「僕を受け入れる覚悟ですよ。僕の愛を・・・・・ね。」
「はあ?!ちょっとどうしちゃったんだよ清四郎!」
その場でのあまりの緊張感と”愛”という言葉に悠理の頭は爆発状態だ。
「おまえ今日おかしいぞ?あたいのことなんか」
悠理はそこで口を閉じた。
見上げた清四郎の瞳が少し寂しげに見えたからだ。
「・・・・・・・・・。」
「悠理」
清四郎は低く静かな声で名前を呼んだ。
悠理はその声になぜだかドキッとする。
「おまえにそう簡単に受け入れてもらえるとは思っていません。
ですが僕はおまえが好きなんです。」
「あたいが・・・・好き?」
「そうです。」
「それって・・・・女として?」
「そうです。」
自分で発した”女”という単語が自分の耳から入ってきたとたん、
突然、胸元とショートパンツからスラリと伸びている二本の足が
スースーとしている気がして、何かで覆いたくなった。
「あ・・・の・・・・えーと・・・・・。」
戸惑いの色が強くなった悠理の瞳を見た清四郎は、そっと悠理の上から体をどけた。
「いいんですよ、悠理。僕達は友達、親友、仲間だ。それでいいんです。
でもあまり挑発的な格好をしていると・・・・。」
唇の端を上げ、にやりと笑った清四郎に悠理はゾクゾクした。
悠理は起き上がり、清四郎の前へ行くと、その両頬を温かい手のひらで包み
(というか押さえ付け)、不器用に唇を清四郎のそれに押し当てた。
「!?」
悠理は唇を離すとプイッと後ろを向いた。
「あたい前から気になってたんだ。・・・・おまえの腕・・・とか、その・・・・色々。」
「腕・・・?」
悠理はコクンと頷いた。
「魅録の腕はなんとも思わないのに・・・・・。」
「ほお。」
「で、さっき、おまえの腕に押さえられてさ・・。」
「悠理・・・・・。」
清四郎はもう一度ずいっと悠理に近付いた。
「ちょ、まて、だからって」
「分かっていますよ。でも、どうやら拒絶はされていないようですね。」
「・・・・・・うん。」
「さっきのキスは・・・そのまま受け取っていいんですね?」
「・・・・・・うん。で、でも!」
清四郎は悠理の髪をくしゃっと優しく掴んだ。
「大丈夫だって言ったでしょう?分かってるって。
・・・・まったくあなたって人は。いきなりキスしてきたと思えば
とたんに消極的になって。」
「だって・・・。さっきはなんだかああしたかったんだもん。」
「まあ、それも嬉しいですけど。本能の部分で僕を求めてくれたんでしょうから。
悠理のペースに合わせていきますよ。でもやっぱりその格好は何とかしてもらわないと。」
そう言うと清四郎はクローゼットを開けて、ワンピースを取り出した。
「昨日、姉貴がいらないものを捨てていたのですが、その中から悠理に似合いそうなのを
失敬しておきました。僕の部屋ではこれを着てください。」
「えーワンピースなんてヤダよお。動きにくいし・・。こっぱずかしいし。
そうだ!おまえのジャージとかないの?中等部のとか。」
「ありますけど・・・・。」
「それ!それとTシャツでいい!」
「また色気も何もないものを・・・・。」
清四郎はブツブツ言いながら、ジャージを出してきた。
「サンキュー。」
さっそくジャージを着る悠理だが、当然のこと大きい。
「やっぱりでかいなあ。」
清四郎のブカブカなジャージを着ている自分をグルッと見回している悠理。
そんな悠理が清四郎はとても可愛く思えた。
「ま、色気は無いけど、これはこれで可愛いので良しとしましょう。」
悠理はズボンの裾をクルクルと巻き上げながら、清四郎に向かって
にこっと笑った。
「なんだよ。色気出すなって言ったのおまえだろ。」
「そうですけどね。」
清四郎もにっこりとした。
悠理は再びベットの上に転がる。
「悠理」
清四郎は優しい声で呼びかけた。
「何?」
「今日からあなたは僕のものですね。」
「バーカ。あたいは所有物じゃないやい。」
「はいはい。分かっていますよ。でも、僕のものです。」
誰にも縛られない、誰も縛ることのできない自由奔放な悠理だが、
清四郎の”僕のもの”宣言に心が和らぎ、そのまま夢の中へと落ちていった。
隣で清四郎が送る柔らかな視線に包まれて・・・・。