中等部3年の春。
彼女と同じクラスになっただけでなく、一緒にクラス委員もやることになった。
いつもフワフワと飛び跳ねているくせっ毛。
良く食べる口。
キラキラしている(ただし授業中は除く)瞳。
男勝りの運動力。
体中パワーがみなぎっていて、僕でも圧倒されそうになることがある。
僕に真の男の姿を気付かせてくれた時と何も変わらない無垢な心。
天真爛漫な彼女には僕を引き付ける何かがある。
口は悪いし、乱暴だし、でも正義感が強いし、友達思いだし、
女子特有の(なんて言うと怒られそうだけど)つるまなきゃ行動できない
こともないし、ネチネチもしていないし、クラス委員の仕事はとてもやりやすい。
ある放課後、僕は教室の残って作業していると、彼女が来た。
「あれ?菊正宗。何かやることあったっけ?」
「いえ。クラスのではなく、生徒会の分ですので剣菱さんは関係ないですよ。」
「ふ〜ん、ならいいか。」
そう言うと僕の前の椅子をこっちに向けてドサッと座った。
「帰らないんですか?」
「うん。もうちょっといる。ダチが迎えに来んの遅くなるって言うからさ。」
「どこかへ行くんですか?」
「走りにな。」
彼女の髪の毛が夕日でキラキラと輝いていた。
フワフワ キラキラ
僕は思わず手を伸ばして、毛先に触れた。
「?なんかついてた?」
「えっええ・・・・ほこりが・・・・。」
嘘をついたが彼女はすんなり信じた。
僕はいったい何をやっているんだ!?
「おまえってさ〜。口うるさいだけかと思ってたけど、案外物分り良いのな。」
「なんですか突然。」
「別に。一緒にいてそう思っただけ。真面目でお堅い優等生だと思ってたからさ。」
彼女は足をブラブラさせながら言った。
「僕は真面目な優等生ですが、お堅くはないつもりですけど。」
「うん。それが分かったんだ。あたいのダチにさ〜、あっ今日これから一緒に走りに
行くやつなんだけど、族の頭やっててさ〜。あたいらと同じ中3なのに裏とかに通じてて。
なのにけっこう真面目で、頭良いんだ。お坊ちゃんだし。」
彼女はとても楽しそうに生き生きと話す。
突然バンと机を叩き
「けっこうおまえと合いそうだって思うんだ。今度紹介するよ。」
僕はかなり驚いた。
彼女が僕に友達を紹介してくれる?!
それは仲の良い友達に僕を会わせても良いと思っているわけで・・・
それだけ僕を認めているということだろう。
僕は柄にも無くちょっと胸がドキドキと弾んだ。
少なくともこの学園内で、僕は彼女の『特別』になれたのかもしれない。
彼女は学園内でちょっと浮いた存在だ。
お坊ちゃま、お嬢様の中で明らかに異色な存在の彼女。
憧れる生徒や、(力方面で)頼りにする生徒はいても、本当に友達としては
付き合いがたいようだ。
もっとも彼女の方でも、いわゆる良い子でお上品な友達は持て余すのだろう。
なので彼女は学園外に友達や、友達と過す時間を求めていた。
それが・・・・僕のことをある意味「気に入った」と言ってくれているのだ。
「あっ来た。」
彼女は座っていた窓枠から飛び降りて、鞄を取った。
どうやら迎えが来たらしい。
「じゃな〜。」
鞄をブンブン振って教室を出ようとしていた彼女がふと立ち止まり、振り向いた。
「あの黒髪のおかっぱも一緒でもいいぞ。」
「え?野梨子ですか?」
僕の問いには答えずに出て行った。
僕の頬が自然と緩む。
彼女は僕が思っている以上にイイやつで、魅力的だ。
僕は立ち上がり、窓の外を見た。
ちょうど彼女が走っていく先の校門には、一台のバイクとメットを脇に抱えた
ピンク色のツンツンヘア。
その色にちょっと驚いたが、彼の放っているオーラはただの暴走族ではなさそうな
ことだけは分かる。
夕日の中、僕は彼女をこっそりと見送りながら、僕もバイクの免許を取れば
もっと彼女と色々楽しめるなあとぼんやりと考えていた。