昼休み。
二人でお茶を淹れている時に、野梨子は可憐のピンキーリングに気付いた。
「あら、可憐。その指輪。」
「うふ。気付いた?昨日、魅録から貰ったの。」
「まあ、なんだかんだ愛されていますのね。」
野梨子は可憐の左手を取り、その指輪をよく見た。
「シルバーですかしら?」
「そう。あいつの手作りよ。」
「え?魅録がこれを作ったんですの?」
「そう。あいつ本当に器用よね。」
「本当ですわ。凄いですわね。この花模様も魅録が?」
「そっ。これも自分で彫ったみたいよ。何の花だかは分からないけど。」
可憐が微笑む。
「あいつのは葉模様なの。」
「ペアなんですの?」
「そう。可愛いでしょ。あいつ。」
その時生徒会室のドアが開いて、魅録が入ってきた。
「ちーす。」
「ふふ。噂をすればですわね。」
二人はお茶をテーブルに運んだ。
野梨子は魅録にお茶を差し出し、話しかけた。
「サンキュー野梨子。」
「魅録、指輪見せてくださいな。」
「えっ?」
「可憐から聞きましたわ。」
「もう?」
魅録の顔が赤らむ。
「ええ。可憐のはさっき見せてもらいましたの。魅録、本当にすごいですわ。
とっても綺麗ですわね。魅録のは柄が違うんでしょう?」
魅録はちょっと困った顔をした。
「・・・・えっと、今は無いんだ。」
野梨子は魅録の手に視線を走らせた。
そこに指輪ははまっていなかった。
「あら着けてないんですの?」
「ああ。」
答えて、魅録はちらっと可憐を見た。
可憐はちょっと肩をすくめて見せた。
怒ってはいないようで、魅録はほっとした。
「どうしてですの?」
「えっ・・・恥ずいし・・・邪魔だし・・。」
そこへ悠理が割り込んできた。
「なに?なに?魅録、指輪作ったの?見せて可憐。」
ほらっと可憐は左手を悠理の前に出した。
「すげーな。これ。模様無いとかっちょいいかも。そうだ!あたいにも作ってよ!」
一足先にお弁当を食べ終わっていた清四郎がチラリと悠理を見て、魅録を見た。
その視線の動きに魅録は気がついた。
「はあ?おまえ何言ってんだよ。誰がおまえに作るかよ。」
「なんで〜?魅録ちゃんの意地悪〜。」
悠理は大げさに拗ねて見せた。
「おまえ、そういうことは清四郎に頼めよ。」
「え〜清四郎は作れないじょ・・・。」
清四郎のこめかみが引き攣った。
「天下無敵の清四郎に出来ないことなんてあんのかよ。」
魅録が容赦なく清四郎のプライドを刺激してくる。
「でもこういうことは魅録の方がお得意ですわよね。」
野梨子が澄ました顔で言う。
また清四郎の顔が引き攣る。
「だけど今の魅録は可憐以外の人に作る気はないんじゃない?」
美童が魅録に助け舟を出す。
「私は別に構わないけど・・・・。でも作るなら違うデザインにしてよね。」
そう言って魅録を見た可憐に、魅録は
〜おまえ以外のやつには作らねーよ〜
と目で伝えた。
・・・上手く伝わったかどうかは分からないが。
悠理は不満げに魅録を見ていた。
「悠理、しょうがないよ。アクセサリーってやっぱり恋人同士がいいよ。
ましてや手作りならね。」
美童が悠理に諭す様に言った。
清四郎が口を開く。
「分かりました。僕が作ってあげましょう。悠理。」
「ええ〜おまえが〜?」
「なんですか。その嫌そうな顔は。美童の言う通り恋人から貰うのが一番でしょう。」
「恋人っておまえのこと〜?」
「外に誰がいるというんです。」
「だって・・・・おまえセンス悪そうだもん。」
「失礼な。おまえのようにセンスがあっても、不器用で
そのセンスが上手く生かされないよりはマシです。」
「まあまあ、よかったじゃん悠理。楽しみだね。」
美童が悠理の肩をポンとたたく。
「そうですわね。わたくしも楽しみですわ。」
野梨子はチラッと清四郎を見た。
「おや、野梨子にも作って差し上げましょうか?」
含み笑顔で清四郎が言う。
「遠慮させて頂きます。指にはめたら棘が刺さりそうですから。」
「それはそれは。邪推ですよ。」
「そうですかしら?」
「まあまあ、じゃあ野梨子には僕からプレゼントしようか?手作りは無理だけど。」
野梨子は少し考えていた。
「美童、先程の御自分の発言をお忘れではないんですわよね?」
「もちろん。」
「それなら・・・・頂きますわ。」
美童は勢いよく椅子から立ち上がった。
「なら膳は急げだね。野梨子、これから選びに行こう!」
「いいですわ。では皆さん一足お先に失礼します。御機嫌よう。」
「じゃね〜。」
さっさと鞄を手にスカートを翻し出て行く野梨子。
手をヒラヒラさせて出て行く美童。
他の4人は二人の背中を呆然と見送った。
「・・・・・・えっと〜。つまりあの二人、付き合うってこと?」
「どうもそのようですな・・・・。」
「えーっ?!そうなの?!」
悠理は事の成り行きを全然分かっていないらしい。
「案外お似合いかもな。」
「美童もこれで世界の恋人は返上ね。」
「でも清算するのに大変そうだなあ。」
「案外そうでもないかもしれませんよ。」
「うん。だいたいの彼女とが大人の関係で本気じゃないからね。
さてと。あたし今日はお店手伝わなくちゃいけないから帰るわ。」
可憐は鞄を持った。
「送ってくよ。」
魅録も鞄に手を掛けた。
「魅録、夜に家に伺ってもいいですか?」
「いいぜ。家に着いたらメール入れるよ。」
「よろしく。」
「何々?あたいも行く!」
「悠理ったら。今日は止めておきなさいって。」
「そうですよ。出来上がるまで内緒です。」
「ちぇ〜。」
「ま、楽しみにしていて下さい。」