今日は清四郎と夜にデートだ。
ディナーを食べ、今はホテルのバーでグラスを傾けている。
私は思いっきりお洒落をしている。
少しでも綺麗に見えるように、少しでも清四郎に綺麗って
思ってもらえるように。
今の私はそれが全てだ。
清四郎の雰囲気に合うように、少し落ち着きがある大人の感じに。
でも意外と清四郎はどんな雰囲気の私も受け止められる。
美童の様な華やかさが無い分、相手の雰囲気を選ばないのかも。
「可憐、今日も綺麗ですよ。」
清四郎が言う。
それだけで私の心は舞い上がる。
「そのお洒落は僕のためですよね?」
そうよ!その通りよ!・・・なのにどうしてかしら?
見透かされると、真正面から言われると素直になれない。
「それもあるし、私自身のためでもあるわ。何時何処で
どんな出会いがあるか分からないもの。」
私の答えに清四郎は余裕の表情で微笑む。
ああ、どうして?
そんな清四郎に胸がキュンってするのは。
「そうですか。それは少し残念ですな。ところで、
明日は休みですし、もちろん泊まっていきますよね?」
清四郎はピラピラとカードキーを私の目の前でちらつかせて見せた。
「さあ?どうかしら?」
バカな私。
本当は思いっきり期待してきているのに。
「おや、用事でも?」
「そうじゃないわ。ただ・・・。」
「どうせ断れませんよ。可憐は。」
「随分自信満々ね。」
「もちろん。だってあなたの瞳はもう潤んでいますよ。」
!
嫌なやつ。
なんなの?この男は。
なんでこんなにかっこいいの?
清四郎が顔を近づけ、耳元で囁く。
「この前のお礼もしてもらわないとですね。」
清四郎はククっと笑って
「あの時は本当にびっくりしましたよ。まさかあそこまでするとはね。」
私もフフっと笑って
「あの後あいつら大変だったわね。」
「そりゃそうですよ。あんな濃いキスを見せられたらね。」
「清四郎も感じたでしょ?」
「あの続きを期待していますよ。」
ホテルの部屋から夜景を眺める。
清四郎は高校生の癖に、こういうことは本当にスマートだ。
昼間は学生服に身を包み、真面目な生徒会長をやっている
その姿とのギャップが、また良い。
後ろから清四郎が抱きしめてきた。
私は身を任せ、また窓の外を眺める。
クリスマスが近いので、キラキラとしたイルミネーションが
嫌でも気分を盛り上げてくれる。
「さ、僕は先にシャワーを浴びてきますよ。」
清四郎はそう言って、シャワールームへと消えた。
胸が高まる。
これから過ごす一夜のことを思って・・・。
清四郎が出て、今度は私が入る。
私は必ず一人で入ることにしている。
大好きな人に一番綺麗な状態で向き合いたいので、
この時間が最後の、自分を磨く大切な時間だ。
その代わり、終わった後のシャワーは、一緒に入る。
その余韻に浸っている時は、少しの間でも傍を離れたくないからだ。
シャワーから出ると、清四郎がルームサービスを頼んだらしく、
テーブルの上にシャンパンとオードブル、フルーツが並んでいた。
私は少し憮然とした。
何で?
だってこれから・・・・。
清四郎は涼しい顔で言った。
「もう少し飲みましょう。」
スポンッと音をさせシャンパンを開けた。
どうしよう・・・。
ここは大人な振りをして付き合う?
でも、もう私、あなたを求めているのに!
「どうしました?」
清四郎は不敵な笑いをした。
その瞳の奥に意地悪く光るものが見える。
私は全身が熱くなった。
そういうことね。
どうする?私。
言ってしまおうか。
抱いて欲しいと。今すぐその腕に抱きしめて欲しいと。
喉まで出掛かったその言葉を飲み込んでしまった。
「いいわね。」
清四郎の正面に座る。
バスローブの下の私の美しい、清四郎のための体が泣いている。
グラスに注がれていくシャンパン。
それを見ながら・・・・私はボロボロと涙を零していた。
清四郎はひどく驚いていた。
「可憐・・・・・・。」
私の涙は止まらない。
自分でも驚いている。
こんなに切なくなるなんて。
清四郎がこっちへ来て、そっと私を抱きしめる。
「どうしたんですか?可憐。そんなに泣かないで下さい。」
私は清四郎の背中に腕をまわした。
「すみません・・・。ちょっと意地悪でしたね。この前の仕返しに
少し困らせてやろうと思ったんですが・・・。」
「ひどいわ・・・清四郎。」
弱弱しい声で私が言う。
「すみません・・・・まさかこんなに可憐が・・・・。でも正直、とても
嬉しいです。こんなにも僕を求めていてくれたなんて・・・。
いつも僕ばかりが求めているのかと・・・。だから、困らせて、
聞きたかったんです。可憐が僕を求めてくれる言葉を。」
私は驚いた。
清四郎がこんなこと思っていたなんて。
思いを溢れさせているのは私ばかりだと思っていた。
でも清四郎も同じだったなんて。
多分こんなくらいで私が動揺するなんて思ってもいなかったのね。
私自身も思っていなかったわ。
今日は捨てよう。
プライドなんて。
素直にぶつければいいんだわ。
恋人同士に駆け引きなんていらない。
私は涙で濡れたそのままの顔を上げて、清四郎を見た。
清四郎はにっこり笑って言った。
「可愛いですよ。そんな顔も。」
「清四郎、私を抱いて。お願い。あなたが欲しいの。」
自分が言った言葉に、顔が真っ赤になるのが分かる。
恥ずかしい。
でも顔は伏せないで、清四郎をじっと見つめた。
「可憐。そんな風に言われたら・・・・・。」
清四郎が腕に力を入れる。
そして強く蕩けそうにキスをした。
求めていたものに、胸が高鳴る。
清四郎の匂い。
清四郎の肌の匂いを知っているのは私だけ。
私は自分でバスローブを脱いだ。
清四郎のバスローブも解く。
素肌が触れ合う感触のその心地よさに浸るために
うっとりと目を閉じ、清四郎の甘い囁きを聞いた。
今夜はきっと最高の夜になるわ。