side:K
今夜は忙しいと言っていた。
今夜はなんかの研究会の会合があると言っていた。
だから私は早くにベットに入った。
今日は電話は来ない。
でも、ちょっと、ほんのちょっとだけ期待する。
メールぐらいは来る?
毎日毎日会っている。
夜も、やつの見かけにしては、そこそこ電話やメールをくれる。
毎日ではないけど。
だから何もない日は普通にある。
なのに毎日待っている自分がいる。
今日は用事があるのを知っているのに。
早く寝てしまえばいいのに。
だって明日なればまた会えるのだから。
あいつの私以外の人との約束に寛大でありたい。
お互い束縛はけしていい結果を生まないから。
そんな表向きの私を、裏の私が嘲笑う。
本当は私だけを見て欲しい。
私のそばにだけいて欲しい。
野梨子に対するナイトぶりも、悠理に対する甘さも全て
葬り去ってしまいたい。
こんな私を誰か助けて。
こんなことを考えながら過ぎて行く夜はつら過ぎるから。
side:S
自分が自分でなくなるような恋。
相手にのめり込むような恋。
そんなものは暇人がすることだと思っていた。
この前までは。
超能力研究会の会合に出ているのに上の空。
こんなことはここ最近珍しくない。
毎日会っているのになお求めて止まない恋心を抑えることは
なんて難しいのだろう。
あの髪に触れたくて、あの声を聞きたくて。
会えないならせめて電話やメールだけでもと思うが、そんなことをしたら
絶対会いたくて堪らなくなるので出来ない。
彼女は今頃何を見て、何を考えているのか?
ただただ明日が早く来るのを待っている。
いっそのことのめり込んでしまえば良いのか?
そして彼女を束縛して、彼女は僕から離れていくだろう。
彼女の前ではプライドなんて必要ない・・・・と分かっているが
まだそれを捨てきれない自分がいる。
思わず陳腐な恋愛小説に手が伸びるのが可笑しい。
こんな僕を隣に住む幼馴染が知ったら、どう思うだろうか。
この感情を楽しめる余裕が欲しい。切実に。