「桜が散りましたね。」
「ええ。寂しいですけど、これでまた来年の春が待ち遠しいですわ。」
「貴女とはいつもこうやって季節の移り変わりを眺めてきましたね。」
「でもそれももう終わりですわね。」
「寂しいですか?」
「寂しいですわ。」
「僕もですよ。」
「でも貴方はこれから先、何十年と一緒に季節を感じていく方がいらっしゃるでしょう?」
「どうでしょう?そういう趣はあまり期待できませんが・・・。」
「でも選んだのでしょう?」
「はい。選びました。寂しいですか?」
「寂しいですわ。」
「僕もですよ。貴女とのこういう時間は永遠のような気がしますよ。」
「たまにはこの庭を愛でに来て下さいな。もちろんご一緒に。」
「ええ。あいつには食べ物を与えておけば、静かにまた貴女と過ごせる。」
「・・・・貴方のこと好きですわ、清四郎。」
「僕も好きですよ、野梨子。」
「ふふふ・・・・でもそれ以上は進まないんですのよね。わたくし達。」
「それでいいじゃないですか。ある意味”永遠”ですよ。」
「永遠・・・ではなくて幻。」
「幻・・・・なるほど。」
「納得なさるんですね。」
「ふむ・・・・・。いえ、僕達は・・・そうかもしれないと。」
「それもまた幸せかと。」
「野梨子は幸せですか?」
「はい。清四郎と同じくらい幸せですわ。」
「では今夜はこれで。」
「おやすみなさい、清四郎。」
「おやすみなさい、野梨子。」