有閑倶楽部のいつもの放課後。

「素敵ね〜。」

可憐は溜息をついた。

読んでいる雑誌にブランドジュエリーの新作の特集が組まれていた。

「あら、確かに素敵ですわね。」

野梨子が覗き込む。

「僕も見たよ。いくつか惹かれるものがあったなあ。」

「相変わらずですわね・・・。どなたかにプレゼントする為の調査ですの。」

「流行には敏感じゃないとね。野梨子も興味はあるんだね。」

野梨子は湯飲みに両手を添えた。

「ええ。綺麗なものはやはり心惹かれますもの。身に着けるかどうかは別ですけど。

これなんか可憐に似合いそうですわね。」

野梨子がルビーとダイヤのリングを指して言った。

「どれどれ。」

美童も覗き込む。

「うん。可憐らしいね。」

可憐はほうっとため息をつく。

「いいわ。とても。欲しいなあ。」

可憐はチラリと魅録を見る。

当の魅録はバイク雑誌に夢中だ。

はぁ・・・可憐はもう一度小さくため息をついた。

そんな可憐を美童は目を細めて見る。

「可憐、もっと可愛くおねだりしなくちゃ。」

「だめよ。まったく興味ないんだから。」

またチラリと魅録を見る。

魅録はその視線に気付いて顔を上げた。

そして可憐の見ている雑誌に視線を這わす。

可憐は魅録が気付いたので、もう一度視線を送ってみた。

「ふ〜ん。」

魅録は後で灰皿にしようと飲みかけていた缶コーヒーの

プルトップをパキっと折り、可憐に手渡す。

「ほれ。これやるよ。」

可憐は手の平の上に乗せられたそれをジーっと見つめて、言った。

「ほらね〜。もう魅録ったらまったくいつの時代の歌よ。プルトップなんて。

女心を全く分かってないわ。今時ギャグにもなんないんだから。」

そこまで言って、可憐はしまったと言う顔をして、手で口を塞いだ。

なぜなら魅録の眉間の皺がみるみるうちに深くなっていったからだ。

「俺、帰るわ。」

魅録は雑誌を鞄にしまうと、さっさと生徒会室を後にした。

「可憐〜さすがに言いすぎじゃない?」

「魅録けっこう怒ってたじょ。」

それまでそんな話題は全く関係ないとばかりに色とりどりの和菓子に

夢中になっていた悠理が口を挟む。

可憐は罰の悪そうな顔をして緑茶を飲み干した。

「分かってるわ。後で謝まるわよ。でも」

可憐はテーブルの上に肘を付き、手を組んで、その上に顎を乗せた。

「素敵なアクセサリーをもらうのは女の子の憧れよぉ。それをこんなプルトップなんてさ。」

右手をヒラヒラさせた。

いつの間にかさっきのプルトップが指にはまっている。

「可憐、魅録にもいろいろ考えるところがあるんじゃありません?

今、急におねだりされても・・・。」

「そうだね。やっぱり記念日とかイベントとかにって考えるもんね。普通。」

「記念日やイベントにはやっぱりケーキだじょ!!」

煎餅を頬張りながら叫ぶ悠理は見事に無視された。

それまで黙っていた清四郎が新聞に目を落としたまま

「ま、魅録も大変ですな。」

と呟いた。

もしこの場に魅録がいたら、猿を飼ってるおまえに言われたくないと言うだろうが。

その夜、可憐は魅録に電話をした。

「ごめん、今日は言い過ぎたわ。」

「別に気にしちゃいねえよ。苦手なの事実だし。

それより明日からちょっと忙しくなるから、しばらく会えねえかも。」

「忙しいって何かあるの?」

「いや、まあ、族のやつらといろいろと。」

「ふ〜ん、分かったわ。メールくらい頂戴ね。」

「OK」

「ねえ・・・・魅録、好きだからね。」

「はっ?!分かってるよ・・・。」

照れている魅録に満足して可憐は電話を切った。

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