春。
聖プレジデント学園にある大きな桜の木の下で、可憐はひらひらと落ちてくる桜の花びらを追いかけ、
クルクルとまわっていた。
スカートの裾がフワっと広がり可憐と一緒に舞う。
その光景を桜の木にもたれてタバコを手で弄びながら魅録が眺めていた。
ひらひらと散る花びら。
ひらひらと揺れるスカート。
「ねえ魅録。」
「ん?」
「来年はもうこの桜見れないのよね。」
「そう願いたいな。」
「あはは・・・・そうだけど・・・ね・・・。」
可憐は地面に落ちている桜の花びらをそっと掌ですくい上げて、魅録の頭上から降らせた。
「おいおい、やめろよ。」
魅録は笑いながら手で花びらを払い落とす。
可憐は魅録の横に座った。
クスッ。
可憐が小さく笑う。
「なんだよ。」
「花びらがついてるわよ。」
「どこに?」
「動かないで。取ってあげるから目を瞑って。」
「目?」
魅録は何か変な気もしたが、素直に目を閉じた。
唇に優しい感触。
そしてやわらかい何かがちろっと魅録の唇をなぞった。
それはほんの一瞬の出来事。
魅録は驚いて目を開けると、自分から離れていく可憐の顔が見えた。
「なっ・・!?!?」
可憐は悪戯な顔をして舌をべーっと出して見せた。
そこには一枚の桜の花びら。
「唇に付いてたのよ。」
魅録の顔が真っ赤に染まる。
「だっ・・・なっ・・手で取ればぃぃ・・・・。」
手で取ればいいじゃん・・・・魅録の言葉は途中で再び可憐の唇によって遮られた。
今度はちょっと長めのキス。
唇を離して可憐は言った。
「あんたったら全然私の気持ちに気付いてくれないんだから。」
「おまえの・・・気持ち?」
可憐はふーっと肩でため息をついた。
「もう分からないなんて言わせないわよ魅録。」
魅録は耳まで真っ赤だ。
「あんたの気持ち、聞かせて?」
そう言うと可憐は立ち上がった。
ひらひら舞い落ちる桜の花びら。
それに手を伸ばし、少し上を向いている可憐。
花吹雪の中の可憐はとても綺麗だ。
魅録はしばし見惚れる。
揺れるロングウェーブの髪。
綺麗に引かれた口紅。
あの唇がさっき・・・・。
魅録は目を閉じ、空を仰いだ。
何も迷うことはない。
ずっと好きだったのだ。
いつも可憐を目で追っていた。
だからそれを伝えればいい・・・・。
なのに口から言葉が出てこない。
嬉しさと驚きとでまだ混乱している魅録の頭の中。
深呼吸して息を整える。
そんな魅録を可憐は少し不安げに見ていた。
魅録は目を開けた。
立ち上がり、花びらの中をゆっくり可憐の前まで歩いた。
魅録の瞳をじっと見つめる可憐。
魅録はフッと微笑み、可憐の髪についている花びらを取った。
そして優しく可憐を抱きしめた。
「先越されたな・・・。」
「なによ・・・・。」
「好きだぜ可憐。」
可憐は腕を魅録の背中にまわした。
「もう、早く言ってよね。」
「悪い。遅くなっちまって。」
「あんたを思って眠れなかった夜を返して。」
「はは・・。じゃあこれからは二人で眠らない夜を過ごそうぜ。」
「・・・・・・・・ばか。」
魅録はふと可憐の肩越しに見える生徒会室の窓を見た。
四人がこっちを注目している。
魅録は片手で可憐を抱きしめたまま、片手を前に突き出し親指を立てて見せた。
悠理が大きく手を振る。
舞い散る花びらの中、もう少しこのままでいようと思った。