TDA7294: DMOSアンプ

1. はじめに

  ここしばらく真空管アンプばかり使ってきたので、たまには半導体アンプも作って見たくなりました。

  ディスクリートで設計する腕も無いので、ICを使うこととし、ネットでいろいろ調べて見ました。TDA1552, 1554やLM3886, 3875あたりが有名なようです。しかし、これらはバイポーラのアンプであり、MOSの方が何となく好みに合いそうな気がし、さらにパワーアンプICを探していたらTDA7294というDMOSという最新の素子を使ったICがありました。DMOSがどんな音がするのかは分かりませんが、面白そうなのでこれでいくことに決めました。


2. 構想

   パワーアンプとなると大容量の電源トランスが必要になり、新品を買うと結構高価です。遊びでもあるので安価に行きたいということでオークションでアンプを購入しトランスとケースを流用して安く上げることとしました。まあ、私の場合、小容量トランスでもパワーに不足することは無いと思いますが、半導体アンプの場合、電流増幅(変換?)なのであまり小さいと小音量でも音に影響するかも知れませんので、ほどほどあたりで行きたいところです。

  TDA7294の出力は連続で70W、ピークで100Wですが、電源電圧は±40V(最大定格で±50V)ですので、あまりハイパワーのアンプでは電源トランスの電圧が高すぎる可能性があり、パワーは小さめのアンプを狙いました。また、余分なツマミも無い方がすっきりしてよいので、できればセパレートのパワーアンプにしたいところです。

  何回か入札したのですが落札できず、やっとほどほどの値段で落札できたのがTechnicsのSE-A806でした。

 
  シンプル・コンパクトでなかなか良いデザインだと気に入りました。(ただし、シンプルすぎて電源スイッチも無いのでトグルスイッチを付けました。)
  出力は40W+40W(8Ω、1kHz)、35W+35W(8Ω、20Hz〜20kHz)だそうです。


3. 回路

  アンプの回路図です。片チャンネル分です。


  データシートのアプリケーションとほぼ同じですが、オリジナルではゲイン30dBのところを約25dBに落としてあります。(メーカー指定は24dB以上) また、入力インピーダンスを高くしたかったので、それらに伴う定数は変更しています。また、電源のパスコンの容量も大きくなっています。

  次に電源の回路図です。


  電源トランスの仕様は27V、98VAと書いてあります。整流後の無負荷電圧も約40Vと電圧の問題はありませんでした。
  ただし98VAでは左右合計で80Wも出るわけが無いし、電圧も27Vx2ですので総容量も98VAx2=196VAだと思います。
  片側だけ考えると電流はAC3.6A、DC2.3Aとなり、8Ωで42.3Wになり、これは半周期分なので、両側、全周期で42.3W+42.3W分とSE-A806の仕様ぎりぎりの容量しかないようです。

  従って、TDA7294でも40W+40Wくらいの出力しか出せないことになりますが、私には十分すぎます。その代わり平滑コンデンサ容量はアンプ側のパスコンを含めると13,500uFと微小パワーしか必要としない私にとっては少し奢ってあります。

  この電解コンは秋月で4個100円の激安品で足が短く切ってありました。どこかの余剰在庫品だと思いますので長期保存されていた可能性がありますが、気にしないことにします。

  ブートストラップとフィードバックの22uFはMuse FW、フィードバック周りの抵抗はタクマンREX、整流ダイオードはショットキーを使っています。その他の部品は汎用品です。出力の高域発振止めの抵抗は念のため1Wの金皮にしてあります。


4. 製作

  完成写真です。まず、フロント上方から。


  左が電源トランス、手前が電源基板、そして奥がアンプ基板です。
  写真では分かりにくいですが、中央部にコの字型のヒートシンクというかアルミ板があります。

  次は斜め後方からの写真です。
 

  コの字型のヒートシンクにICを固定しています。基板は固定していません。信頼性の問題はありますが、輸送するわけではないので、一応大丈夫だと思います。

  後方からの写真です。


  写真には写っていませんが、本来、下に置いたプリアンプからACを取る設計なのでしょうか、ACコードが短くて困ります。

  入力のピンジャックは元々付いていたものが基板から外すとねじ1本での固定しかできず不安定なので、底に当たる補助板(生基板を流用)にピンジャックを取り付けました。ピンジャックは特売品を使ったので、緑と青という変な色になってしまいました。

  スピーカー端子は元々付いていたものを流用しました。コードを差し込んでつまみを回転させて固定するタイプです。

  次は電源基板とアンプ基板の拡大写真です。
  

  TDA7294のフランジはマイナス電源につながっているので、放熱ゴムシートと絶縁ブッシュで絶縁しています。ゴムシートはTO-3P用がちょうど良い大きさでした。

  TDA7294取り付け部の拡大写真です。


  千鳥足のパッケージですが、足を少し曲げてやり、2.54mmピッチのユニバーサル基板に挿しています。


5. 試聴

  まだ出来たてですが軽く音を聴いてみました。

  ここ数年は真空管アンプばかり聴いて来たのですが、違和感がありません。思っていたよりソフトタッチな音です。

  音が奥に広がるような音で、特別ワイドレンジ・高解像度を感じさせるところはありません。

  エージングでどうなるか楽しみです。


ーーー追記ーーーーーーーーーーーーーーーーーー2010.05.06ーーー

  当初は高域が丸まっているような音でしたが、エージングで少し伸びが出てきたようです。ソフトな傾向は変わりません。へたな真空管アンプよりソフトな音調で気に入りました。現在、常用アンプになっています。(真空管は、DACのアナログ段だけになってしまいました。)

  高域に少し華が欲しい感じなので、ケーブルでのチューニングを考えました。高域を華やかにするなら銀メッキ線です。

  スピーカーケーブルをMonitorのCobraにするのが早いのでしょうが、狭い部屋の割りに(逆にそのせいで?) スピーカーとアンプが離れているため4m x 2は必要で、結構お金がかかってしまいます。

  そこで安く上げるためピンコードを変えてみることにしました。安いのを探してみたら、GarrettaudioでMILの¥350/mの銀メッキシールド線(外径2mm、細い!) が見つかり、他の部品を買うときついでに購入してピンコードを作ってみました。

  いけません。確かに高域が華やかになるのは良いのですが全域ガチガチの硬い音です。絶縁体はテフロンなのですが、これが良くないようです。ネットで当たってみるとやはりテフロンは音が硬いという評価がいくつかありました。

  手持ちのピンコードを当たっていたら大昔に買ったSAECのSL-1803が出てきたのでこれをつないで見ましたが、MIL線ほどではありませんが、音が硬めになり高域の伸びは出ますが華やかさはありません。

  結局オーディオテクニカの安い普通のOFCコードが、高域はイマイチですが全体の雰囲気は一番良いです。(我ながら糞耳ですね。)

  Garrettaudioのホームページをさらに見ていたら、銀メッキで被覆がPVCの線材がありました。シールド線ではないので、内部配線を変えるか、シールド無しでピンコードに仕上げるか、今度機会があればやってみたいと思います。


ーーー追記ーーーーーーーーーーーーーーーーーー2011.01.30ーーー

  Profoundのページに書きましたが、半導体アンプとしては良いアンプだと思いますが、音楽の表現力と言う点では真空管アンプにかないません。ということで2010年6月には、常用アンプはVP-mini88改に戻っています。