FMラジオ(レシーバー)の製作
1. はじめに
たまにはラジオを聴きたくなって、FMラジオを作ろうと思いました。実はFMチューナーも真空管FM/AM/MWラジオもあるのですが(掃除したらFMが受からなくなってしまい放ってあります)、ただ、何かを作りたかったのです。ちょうど手元にFM/AMのカッコいいバリコンがあったので、それを使いたかったのです。
しかし、FMラジオを作るといっても高周波の測定器は皆無ですので簡単なICラジオで、しかし、それなりに音の良いラジオを狙います。
2. FMらじおくん
手始めに、エレキットの「FMらじおくん」を組んで様子を見ることにしました。
スーパーヘテロダインのワンッチップ・ラジオIC+オーディオアンプICのラジオです。難易度5段階中、3の10歳以上を対象にしたキットですので、あっという間に出来てしまいました。
音はスピーカーが小さいこともあって、小型のポータブル・ラジオそのもので、そのままでは当然NGです。スピーカーをバッファローのPC用スピーカーの箱にデノンのサラウンド用スピーカーの8cmユニットを入れたものにつないで見ましたがこれもNGです。いわゆる「シ音」が耳につくのはいけません。オーディオアンプICを飛ばして、ラジオICの出力をエレキットの真空管アンプTU-870+Tang
Band W3-582SBをデノンのサラウンド・スピーカーの箱に入れたPC用システムに繋ぐと相当良くなりました。
当初、
[シ音」はクゥオドラチャー検波が原理的もつ3次歪が原因かと考えましたが、アンプが原因のようです。
バッファローのPC用スピーカーに内蔵されていたアンプもですが、ショボイ低電圧のオーディオアンプICは良くなさそうです。
3. 構想A
「FMらじおくん」の教訓を踏まえ、フロントエンドはICにまかせ、検波は低歪を目指しロジックICを使った遅延検波、オーディオアンプICももう少しまともなものを使うことにしました。
ブロックダイヤは下図の様になりました。

説明は省かせていただきます。なぜなら・・・
4.
製作A
失敗です。
まず、IFが出てきません。LOがどこか違う周波数で発振しているようです。何も繋がなくても50pFくらい表示するテスターの容量計で無理やりバリコンの容量を測って定数を決めたので、当然の結果でしょうか。同じテスターの周波数カウンターも60MHzまでなので測定不能。分周器も作ってみたのですがレベル不足で動作しません。74AC04でアンプを組んで見たのですがこれもうまくいきません。
おまけに、IFアンプのTA7061が発振しています。TA7061は1段当たり56dBも利得があるので2段も重ねれば仕方ないのかもしれません。ベタアースだけでなくシールドも必要なのでしょう。感度も考慮すると1段では不足なので2段にして、ATTで調整しようと考えていたのですが。セラフィルも3段で選択度を上げようとしていたのですが。
失敗です。測定器も無しにこんな回路を組もうというのが、そもそもの間違いのようです。
5.
構想B
今度は確実な線で行くことにしました。バリコンも素性の分かったタイトバリコンを買うことにしました。
FE/IFも検波もワンチップICのTA7792PGに任せることにしました。ずいぶんショボくなりました。
TA7792PGは本来はFM/AMのICですが、FM部分だけを使います。
下図がブロックダイヤです。

我が家はCATVが引き込まれておりFMもそこから取ります。CATVは多チャンネルのTV信号も一緒に入ってくるため、RF段の歪を低減するために、まず可変のATTとLCのBPFを通します。RF
OUTは内部でミキサーにも接続されており、ここのBPFはFCZコイルとパラにコンデンサをぶら下げているだけです。ここはデータシートのアプリケーション通りです。
FM
OSCのチューニングには20pFのタイトバリコンにシリパラにコンデンサを接続し、チューニング幅を狭めてチューニングし易くします。(バーニヤは高いので止めました。)
このICはIFT省略型のため特性の異なるセラフィルをシリーズ接続すると特性の改善が図れるとデータシートに書いてあるので、その通りとします。
検波(FM DET)はクォドラチャ検波ですが、タンク回路にパラに半固定抵抗を接続することで歪を改善します。(S/Nは犠牲になります。)
測定器(FM信号発生器)が無いので、ここは耳で聴きながら調整します。
音声出力(AF
OUT)にはディエンファシス後、ハイカットの半固定トーンコントロールとボリュームを通してアンプに入ります。
アンプICは東芝のTA7240AP、13.2Vでデュアルで5.8Wx2、BTLで19Wというカーオーディオ向けのアンプです。THDは0.03%(BTL)と低電圧のアンプICと比べて一桁良い値となっています。巷で高音質といわれるパワーアンプICは他にありますが、そこまでの高音質は狙っていないので(そんな高音質チューナーは作れないので・・・)、手ごろな価格でこれにしてみました。
また、実用性は余りありませんが、シグナルレベルメーターも付けています。
ついでに、1時間のお休みタイマーも付けておきました。
電源はお手軽にスイッチング電源です。古い外付けのHDDから外した物です。
6.
回路
なぜか最終版の回路図が残っていません。残っていた回路図を寄せ集めて合体させたのが下の回路図です。したがって多々間違いがあるかもしれません。(特にメーター周りの回路が怪しいです。)
チューナー部の回路図です。回路は「電子マスカット」さんのホームページを参考にさせていただきました。

入力端子はF型のレセプタクル(ジャック)です。
C101で念のためDCカットした後、T型の簡易可変アッテネータに入ります。減衰量は約8dB〜20dBです。12dBで約80Ωとなる定数なので、それ以外の減衰量ではインピーダンスは変化しますが(56Ω〜105Ω、VSWRで1.3〜1.4)、実用上は問題ない範囲です。
しかし、何故か75Ωで終端せずTA7792の入力インピーダンス260Ωでそのまま受けてしまっているので、減衰量4dB〜18dB、インピーダンス57Ω〜180Ω、VSWR1.3〜2.4(フィルターでもう少し劣化するかもしれない)と、変わってしまい、VSWRはあまり良い値とは言えませんが、実用上問題になることは無いでしょう。(家庭用ケーブルテレビ・ブースターのVSWRの規格は2.5以下くらいだったと思います。)
次に、LCによるHPFとLPFでBPFとして、余分な信号を減衰させています。測定器が無く調整は不可能なので無調整です。コイルは0.1μHのチップコイルです。
シミュレーション上は下図の様な特性になっています。赤はATT最大、緑はATT最小、青は参考までFCZコイル144MHzと15pFコンデンサをパラにしたBPF(ATT無し)の特性です。

フィルターもたぶん75Ωで定数を出していると思いますので、形が少し崩れているようです。
FCZコイル144MHzと15pFコンデンサのパラ接続よりはHPF+LPF=BPFの方が切れが良いです。が、それでもCATVの信号を落とすには不十分かもしれません。ただ、これ以上切れを良くするには多段のフィルターが必要になり、小インダクタンスのコイルが手に入られないので、空芯コイルを使わざるを得ず、そうなると測定器なしでは実現不可能でしょう。
FM
OSCのところのVCは、VC101がタイトバリコンであとの二つはトリマーコンデンサです。タイトバリコンの最小容量も分からないことですし、チューニング範囲は調整で追い込んでいきます。
F101とF102のセラミックフィルターは、帯域180kHzの物と230kHzの物を組み合わせています。また、FM IF
IN端子から信号を取り出し、メータードライブ回路へ送ります。
FM
DETのタンク回路はFCZの10.7MHzで、これに半固定抵抗をパラに接続して歪の改善を図ります。これは耳で聴いての調整となります。ここがこのラジオのポイントの一つになります。
AF OUTに繋がる1kΩは良く分かりませんがデータシートに載っていたので入れてあります。AF
OUTの出力インピーダンス1.4kΩとこの1kΩとC112でディエンファシスの時定数が決まります。実際にはその後に繋がる回路のインピーダンスも関係しますので、シミュレーションで定数を決めました。ここの部分だけだと仕様の50μsecに対して65μsecになっています。ただ、簡易トーンコントロールがは入っているため、トータルでフラットという訳にはいきませんでした。
アンプ部の回路図です。

「FMらじおくん」の実験から、そのままでは高音がシャカシャカして耳障りなのでVR201とC201によるハイカットのトーンコントロールを付けました。ディエンファシスからアンプ入力までのf特のシミュレーションを下図に示します。トーンの最小から最大まで4ポジションのカーブです。

レベルの絶対値は無視してください。(プリエンファシス回路の損失が含まれています。)
トーン最小でも決してフラットとは言えずドンシャリ傾向、トーンの効きも癖があります。まあ、簡易型なので仕方ありません。低域の盛り上がりも8cmスピーカーにはちょうど良いかもしれません。(?)
TA7240はデーターシート通りのBTL接続にしています。パワー的はまったく必要ないのですが、1回路余らせておくのももったいないのと、BTLにすると出力のDCカット用の大容量電解コンが省略できるからです。ゲインは40dBです。
シグナル・レベル・メーターの回路図です。

チューナーICのFM IF
INから取り出した信号をTA7061(IFアンプIC)と2SC1815のアンプで増幅した後、検波して直流に変換してメーターを振らせます。この程度だとTA7061も発振せずに済みました。
入力インピーダンスを決めるR301は1kΩになっていますが低すぎるように思います。チューナーICのFM IF
INの入力インピーダンスが300Ωでしょうからせめて10倍の3kΩ位の方が良かったと思います。
出力インピーダンスはR302で決まり75オームで同軸ケーブルで接続しているのですが(実は基板が分かれています)、受けが75Ωになっていません。R304は75オームですがこれではただのダンピング抵抗です。おそらくTA7061はセラフィルにあわせ300Ωで設計されているのだろうと思い、75Ωをドライブできるかどうか分からなかったのでこうしたのだと思います。
その後はショットキーダイオードで検波(整流)し、メーターをドライブしています。VR301でメーターの振れを調整します。絶対値を測るわけでもなく、単なる目安のアクセサリーですので適当に振れるように調整するだけです。
最後は電源とタイマーの回路図です。

電源そのものは前述したとおりスイッチング電源です。+5V、+12Vそれぞれにトランジスタ・スイッチでON/OFFします。
タイマー・スイッチOFFのときはトランジスタ・スイッチは常時ONとなります。タイマー・スイッチをONにすると555のタイマーが動作をはじめ、約1時間後にトランジスタ・スイッチをOFFにします。
この555による長時間タイマーは「ブレッドボードラジオ」さんのホームページから拝借しました。
6. 調整と試聴
早速完成写真です。

ラジオ(レシーバー)本体とスピーカーです。
ラジオの左上がシグナル・レベル・メーター、その下が電源とタイマーのスイッチとインジケーターです。中央がチューニング、右がボリュームです。
当初は、下図に様な文字入りのデザイン(フィルムラベルシートにプリントして張り付ける)を考えていたのですが、めんどくさいので止めました。

写真はありませんが製作はユニバーサル基板3枚に組み込み、RF/IF部は銅テープを使いベタアースにしています。
調整は受信周波数からです。
CATVで来ているFM波は下表の通りです。直接波妨害を避けるため、放送波とは周波数を変えてあります。全部受信しても聞かないと思うので、NACK5からNHK(東京)までを受信することにしました。(私の居住地がばれてしまいますね。)
| 局名 | 周波数(MHz) |
| Inter FM | 76.5 |
| 放送大学 | 77.1 |
| NACK5 | 79.0 |
| TOKYO FM | 80.5 |
| J-WAVE | 81.3 |
| bayfm | 82.1 |
| NHK(東京) | 83.1 |
| NHK(埼玉) | 85.1 |
| FM-FUJI | 85.7 |