スパイダーコイル・ラジオの製作

1. 初めに

  インターネットを徘徊していると、スパイダーコイル・ラジオなるものを見つけました。スパイダーコイルはなかなかかっこいい物で、これでラジオを作ってみたくなりました。初めは、ICを使ったAMラジオを考えていたのですが、さらにインターネットを徘徊していると、無電源でスピーカーを鳴らすゲルマニウム・ラジオなるものも見つけました。これも面白そうなので、この二つを組み合わせたラジオを作ってみることにしました。

  トランジスタ(IC)のAMラジオは持っていないので、古い真空管ラジオ(フェライト・バー・アンテナ)でAMを受信してみるとNHKと文化放送しか受信できません。マンション住まいのため、室内での電波状況は良いとは言えないので、果たしてうまくいくかどうか分かりませんが、とにかく作ってみることにしました。


2. 構想

  無電源でスピーカーを鳴らす方法にも2種類あるようです。一つはトランスでインピーダンス・マッチングをとる方法、二つ目は受信・検波した電波の直流分でトランジスタをドライブするもの。

  トランジスタを使う方法はいろいろ問題もあるようで、電波が弱いと動作しないため、我が家の電波状況では不安が残ります。その点、トランスを使う方法は電波があまり強くなくても蚊の鳴くような音なら出るかもしれないようなのでこちらを採用します。

 小型のスパイダーコイルだけではアンテナの役目を果たさないようなので、外部アンテナをどうするかです。マンションでは電灯線アンテナの効果は無いようですし、私の部屋は通路側なのでアンテナを屋外に出すこともできません。仕方ないので、ビニール線を這わすか、ミニコン用のループアンテナ(中古を安く買えます)を使ってみることにします。うまくいくかどうかは分かりません。

 次に問題になるのはスピーカーです。出来るだけ能率(出力音圧レベル)が高いものが良いのですが、一般に能率が高いものは大型になってしまうのでボツ。能率の高さでいえばトランペット・スピーカー一番ですが、これも大きいものが多く、いい値段がします。といっていろいろ探していたら、あるところにはあるんですね、中古・ノーブランドの小型(口径約10cm)のトランペット・スピーカーが手に入りました。おそらく車のボンネット内に設置してゴッド・ファーザーのテーマ曲でも流す用途でしょう。(今時いないか) 小型ですので能率はあまり期待できないでしょうが、手持ちの8cmコーンスピーカーよりはましでしょう。


3. 回路

 
 回路は一般的な倍電圧検波ですが、トランスによるマッチングとトランペット・スピーカーを使うというアイディアも含め 「7L3AXT/7 & JM7OCK」さんのホームページ内の「真空管ラジオ修復記」の「究極のエコラジオ製作計画」を参考にさせていただきました。

 ただしアンテナ、同調回路はスパイダーコイルに合わせて変更してあります。オリジナルにあるイヤホンジャックは不要なので取り去り、代わりにスピーカーのON/OFFスイッチを付けています。


4. シミュレーション

  ゲルマニウム・ラジオの出力インピーダンスは数k〜数百kΩとも言われているようですが、実際のところどうなのかシミュレーションしてみることにしました。この値によって、出力トランスの最適値も違ってきます。

  下図の回路でシミュレーションしてみました。

  左1/3はAM変調とバッファの回路です。C3から右側がゲルマニウム・ラジオの検波回路になります。信号はキャリア1MHzを1kHzで約30%の変調を掛けたものとしています。

  信号源インピーダンスはR6、信号レベルはVR1で変化させます。

  負荷R4が1MΩの時を開放電圧として、R4=10kΩの時との電圧差で概略の出力インピーダンスを求めます。

  検波回路の入力レベルを600mVpp一定とした時の、信号源インピーダンス対出力インピーダンスのグラフです。

  信号源インピーダンス100Ω〜100kオームに対し、出力インピーダンスは13kΩ〜230kΩと大きく変化しています。

  信号源インピーダンスはアンテナと同調回路によって決まりますが、実際の値はどうなのでしょう。

  同調回路のインピーダンスだけなら計算できますが、科学教材社のスパイダー・コイルでは70ターン中20ターン目にタップを出すようになっており、普通のコイルならいざ知らず、スパイダー・コイルでは内周と外周ではコイルの径が異なるため、インピーダンス比をどうやって出せば良いか解らないし、ループアンテナのインピーダンスも解りません。勉強不足です。

  どなたか解る方がいらしたら、教えてください。
  

  いずれにせよ、出力インピーダンスが数k〜数百kΩというのは正しいようで、トランスの1次インピーダンスは高いほうが良いようです。

  このシミュレーションをやる前に部品を手配してしまったもので、出力トランスは1次インピーダンス7kΩのものにしてしまいました。「ラジオ少年」には20kΩのトランスがあるので、これのほうが音量が取れるかもしれません。


  ちなみに、入力信号レベル変化による出力インピーダンスもシミュレートしてみました。

  左図がそのグラフです。シミュレーションの都合上、最大で960mVppまでしか取れませんでしたが、それほど大きい変化は無いようです。

   入力レベル500mVpp付近ではダイオードのスレショルドを切り始め、(R4=10kΩでは)波形がつぶれていましたので、その影響でインピーダンスがあがって見えるのだと思います。

  それを除いても、入力レベルが大きくなるとインピーダンスは少し下がる傾向が見えます。が、現実的には気にしなくて良い変化量だと思います。





5. 主要部品

  「科学教材社」のスパイダーコイル巻き枠とコイル用ホルダーです。

  巻き枠を売っている店は他にもありますが、ホルダーはここでしか見つかりませんでした。

  チープな部品ですが、金具を加工するよりはかっこいいと思います。








  「ラジオ少年」で購入したエアー・バリコンです。豪勢です。

  アルプス製だそうです。











  ゲルマニウム・ダイオードです。

  ユニゾンの1K60(1N60相当品)で、国産らしいです。

  ピンボケですが、内部構造が見えると思います。









  これも「ラジオ少年」で購入した7k, 5k:8Ωのトランスです。1Wだそうです。

  小さいです。でも、次に紹介するトランペット・スピーカーに対しては、これでも十分過ぎるでしょう。













  トランペット・スピーカーです。

  口径10cmで隣に写った100円ライターと比べても、その小ささがわかると思います。

  何しろ正体不明のスピーカーですので軽く特性をとってみました。











  まず周波数特性です。

  恐ろしく狭帯域です。-10dB帯域だとせいぜい1kHz〜2.4kHzといったところでしょうか。と思いきや、ユニペックスの仕様書を見ていたら、f特は偏差20dB以内で規定されていました。それでいくと、420Hz〜3.6kHzとなります。

  これでRadiko(ラジオのインターネット配信実験)を聴いてみたところ、それなりに聞こえます。声は男性・女性とも声質は変わりますが内容ははっきり聞き取れます。音楽は、まあ、音楽としては聞こえます。ゲルマニウムラジオには十分でしょう。

  次にインピーダンスです。

  7Ωくらいです。f0は約500Hz、インピーダンスの山が低いですが、測定用に直列に入れた抵抗が8Ωと大きかったため(それより小さい抵抗がなかった)、ダンプされているのだと思います。

  能率はどうか、8cmコーンのTang Band製W3-582SB(をUSC-A300の箱に入れたもの。公称インピーダンス8Ω)と比較してみました。

  黒がトランペット・スピーカー、赤がW3-582SBです。
   W3-582SBの能率は86dBとなっていますので、トランペット・スピーカーは100dBと言ったところでしょうか。期待していたより能率は良さそうです。

  直接は関係ないことですが、W3-582SBの12kHz〜13kHzのピークはマイクの癖だと思います。マイクユニットはパナソニックのWM-62PCというデータ上20Hz〜16kHz位までフラットなユニットなのですが、これをPC付属のマイクのユニットと入れ替えたものなので、マイクのケースが共振しているのかもしれません。ほかのスピーカーを測定しても同じような傾向が出ます。


6. 製作  

  巻き終わったスパイダー・コイルです。説明書通り70ターンで、20ターンでタップを出しているつもりです。数え間違いがあるかもしれませんので、あまり自信がありません。

  羽2枚おきに巻いていくことになっていますが、3枚になっているところもありました。まあ、あまり気にしないことにします。









  回路部分はたったこれだけです。













  全体の写真です。

  ありあわせのベーク板の上に組み込みました。























  ところがです、まったく受信できません。3m程のビニール線アンテナ(短すぎる!)、このためにゲットしたミニコン用ループアンテナでもだめです。

  マンションの北側の部屋(窓は金網入りガラス)ではだめかと思い、南側のベランダに持ち出してみましたがNGです。

  ちなみにNHK送信所は北側20kmくらい、文化放送は南東約20kmなのですが。

  ゲルマニウム・ダイオードはテスターで計った順方向電圧降下が0.27V、ショットキー・ダイオードは0.13Vだったのでショットキーにも変えてみましたが、NG。倍電圧検波から半波検波に変えてもNG。回路を接続した状態でダイオードにダイオード測定モードでテスター棒を当てると小さなノイズは出るので、回路は動作しているようです。ダイオードを取り外して見ても壊れていません。

  検波回路への信号取り出しも、スパイダー・コイルのタップではなくアンテナ端子部からに変えてもNG。

  ラジオ側ではこれ以上どうしようもありません。アンテナをなめていたようです。もっと大型のアンテナにすれば何とか受信できるかもしれませんが、ベランダで受信できない中、鉄筋コンクリートのマンション内の一室で完結させるのは困難かと思い、このプロジェクトは断念することとしました。


7. ICラジオの製作

  仕方ないので、ここは単3電池1本で動く3端子ラジオICに変更することにしました。 使うICはLMF501です。有名らしいです。

  下図が回路図です。


  ゲルマニウム検波器をLMF501に置き換えただけのものです。

  ICの応用例ではイヤホンを鳴らすのにもトランジスタのアンプが入れてあります。この回路で直接スピーカーを駆動できるかどうかわかりませんが、とにかく作ってみました。

  ラジオ本体の写真です。


  とりあえずアンテナを付けずに電源を入れると、かすかに、本当にかすかにノイズが聞こえます。バリコンを回していくと英語らしきものが聞こえました!? 本当にかすかな音で、スピーカーに耳を近づけないと聞こえないくらいのわずかな音量です。他に聞こえないかとさらにバリコンを回していきましたが、聞こえるのはノイズだけです。

  ループアンテナをつないで見ましたが、感度の向上は見られません。向きを変えても同じです。ミニコン用のループアンテナごときでは役に立たないようです。

  先ほど聞こえた英語は実は英会話の番組だったようです。受信できたのは結局NHK1局だけでした。

  とりあえず動作はしたのでこれで完了とします。もともと実用にする気はありませんでしたし、だいたい普段はAMは聞かないのでこれで良しです。あとは、部屋の飾りということで・・・