6DJ8ミニパワーアンプの製作

1. はじめに

  私のリスニング環境(マンションの一室、かつ、ニアフィールド)で,実際音楽を聴いているレベルでのアンプの出力を測定してみたら、何とピークでも30mWであることが判明しました。いつもより大き目のレベルでも60mW。これじゃヘッドホンアンプで十分かっ! 

  つい最近までメインで使用していたエレキットTU-872(キット屋版、2A3、3.5W)でも、長らく眠っていた物がEL34三結で復活したトライオードVP-mini88(キット屋版)ではさらに十分すぎるパワーです。

  そこで数100mWクラスのミニアンプで十分ではないかと、作ってみることにしました。

  ちなみにミニアンプと言えば「魅惑のミニアンプ」さんが有名かと思いますが、あちらは5極管なのでイマイチ。(ごめんなさい、3極管・三結好きなものなので)

  【 コンセプト】
        1. シンプル、デザイン重視
        2. ローコスト
        3. 電圧増幅管2本で構成
        4. 半分遊び、半分本気


2. 構想

  上記のコンセプトにあわせ、下図のようなデザインを考えました。





  現在お気に入りのOPアンプ使用のプリアンプに合わせることと、コストの点からもケースはタカチYM-300として、真空管の頭だけ上に出しトランス類はケース内に入れることにしました。ボリュームも無し、電源スイッチだけはフロントに付ける予定。プリアンプ等では見かけるスタイルですが、とても真空管パワーアンプとは思えない斬新なデザインにできそうです。

  出力トランスは小型の物でケースに入りそうなのは東栄と春日にあります。これはコストの点でも安いのでコンセプトにぴったりです。ただし、春日のものは、とあるホームページによると1次インダクタンスが小さく低音がまったく期待できそうにありません。東栄の物はAyumiさんのページにシミュレーション用のパラメーターがあり、それによると1次インダクタンスも大きく、とりあえずT-600と言う一番小型で安い物に決めました。

  電源トランスは、真空管アンプ用のものは大きいし高いので汎用のトランスでヒーターとB電源用に2個使用します。ヒーター用の6.3Vトランスは問題ないのですが、B電源用は当初100V対200V(240V) のトランスを考えたのですが、立てても寝かせてもケースに入りません。ケースの高さが50mm(内寸48mm)しかないのです。Rコアも入りません。高圧系で入るのは100V対100Vのアイソレーショントランスの小容量(AC50mA、ブリッジ整流で30mA強)のものだけでした。

  真空管は比較的低電圧でプレート抵抗も低く低域の伸びが期待できる6DJ8で決まりです。手持ちも何種類かあるので良しとします。当初、これも手持ちのある6SN7や12AX7、手持ちはありませんしコンセプトからもはずれますがちょっと欲を出して6BQ5三結も考えたのですが、6SN7はあまり光らないしMT管の方がデザイン的にスマートかなと言うことでボツ。12AX7はプレート抵抗が高すぎて低音がだめだめそうなのでボツ。6BQ5は電源トランスの問題でボツとなりました。


3. 回路



  2段C結合の普通(?)のアンプです。
  初段の動作点は59V1mA、終段は126V14mAです。
  100V対100VのAC50mA(DC30mA)の電源トランスではこのあたりが限界です。少しでもパワーを出すため終段の電流を多くとりたかったので、初段はケチってます。初段の負荷は47kΩと大き目ですが1mAでロード・ラインを引くとこの程度が適正なようです。
  終段の負荷は同様に7kΩあたりが良いようです。ロード・ラインから計算すると最大出力は300mW位になります。

  電源はRCのリップルフィルターでは所要リップルを得るには電圧降下が大き過ぎるので、MOSのリップルフィルターにしました。ついでに簡易定電圧化してみました。ただ、RCで電源に時定数を入れたほうがいかにも真空管らしい音になるのかなとも思い、1kΩ(R10)を入れてみました。ついでにチャンネル・セパレーションの改善にもなりそうですし。
  当初、MOSのリップルフィルターだけで残留リップルは0.05mVの予定でしたが、R10を入れたことでさらに改善され、計算上は0.7μV!。本当?、計算間違ってるかな?
  MOSの2SK2382には逆電流保護のダイオードが内蔵されていますので、外にはつけていません。

  LEDは真空管の明かりが足りない場合に、真空管ソケットの中央の穴に挿して真空管を光らせるためのものです。
  橙のLEDは逆耐圧が低いのですが、逆向きに接続することでAC点灯でもOKです。


4. シミュレーション

  上の回路をシミュレーションした結果が下のグラフです。トランスのデータはAyumiさんのものを使わせていただきました。
  左が周波数特性(F特)、右が歪(THD)です。
 
  F特は-3dBで12Hz〜55kHz 、THD(1kHz)は150mWで2%、カーブが寝てきてますが10%で500mW位になってます。

  F特はNFB=3dBのものですが、実際は位相補償が必要になるでしょうから少し高域の落ちは早くなると思います。低域もおそらく電流を流していないときのモデルでしょうからこれも実際はもっと高いところで落ちることになると思います。

  THDはトランジスタアンプ並みに急激にクリップする感じですが、これいかに? 下は0.3%でへばりついてます。THDのシミュレーションはどこまで信頼できるかわかりませんが、ロード・ラインから計算で最大出力300mW位なので、それなりに目標の数100mWは出そうです。

  ところで、ネットを徘徊していたら東栄T-600のオリエント・コア版があるという情報が。東栄に電話して聞いたところ、遅ればせながら造りましたとの返事。巻き方などはまったく同じで単にコアを変えただけだそうです。1個¥998。早速購入しました。

  Ayumiさんのページを参考にデータを測定して、各パラメーターを算出してみました。1次7kΩ、2次8Ωのものです。

 項    目

 測    定    値

 1次側直流抵抗(Ω)

 392 

 2次側直流抵抗(Ω)

 1.2

 1次側インダクタンス(H)

 23.7

 鉄損(kΩ)

 315

 結合係数K

 0.9967651

 1次側浮遊容量(pF)

 73.8

 2次側浮遊容量(pF)

 1795.8


  このデータを基に再度シミュレーションした結果です。

  赤がAyumiさんのデータ、緑がオリエント・コア版です。低域は変わりありませんが高域の-3dBポイントは約30kHzと低くなっています。結合係数が小さくなっているため、こうなるのですが、なぜ小さいかは、コアの材質によるものか、単なるバラツキか、測定精度の問題かはわかりません。全体の損失もやや多めになっています。


5. 製作

(1) 部品

  今回は写真を多めにとってあります。
  まず、主な部品から。まずは、オリエント・コア版T-600です。とても小さなトランスです。


  タクマンのオーディオ用カーボンフィルム抵抗 'The Pink’ことREXです。直接信号経路となるR4, R9〜11に使います。
  抵抗の違いが私にわかるか自信はありませんが、1個¥24と安いので使ってみました。巷では金皮のREYの評判が良いようですが、カーボンの方が聴きやすい音がしそうなイメージがあったもので、REXにしてみました。


  EROのMKT1813です。カップリング・コンデンサC3に使います。設計上は0.22μFですが、あいにく在庫切れで同価格だった0.47μに変更しました。当初は東一のビタQを考えていたのですが、でかいし高いしで止めました。


  ニッセイのMMTです。入力のカップリングC1に使います。積層メタライズド・ポリエステルでASRC・DACに使って、なかなか良かったのでというか悪くなかったのでこれにしました。C3のカップリングに比べ、入力側は音への影響は少ないという話を聞いたことがあり、安いのでこれにしました。色もきれいです。


  カソードのデカップリング用の、泣く子も黙るBlack GateとMUSE FWで、手持ちがあったので使おうかと思いました。Black Gateは生産中止になり貴重品ですが、良く見たらもう1個は100μF/100Vでした。残念。結局手持ちの東信の普通の電解コン1000μFになりました。
    

  入力のRCAジャックです。これも手持ち品です。結構立派なものですが、秋月で1個¥150のものです。


  シャシに使うタカチYM-300です。


(2) 加工

  穴あけ加工済みのシャシです。カバーの丸穴は、円周に沿って小さな穴を明け、それをニッパで切り取った後、ヤスリで仕上げました。思ったよりきれいに仕上がったと自画自賛してます。ポイントは、両側とも針のコンパスで外周を傷つけて描き、それに合わせて削ったことだと思います。
    

  仮組みです。穴位置も問題ありませんでした。ラグ端子も種類が違うものがあるのは、これも手持ちの部品をかき集めたからです。真空管ソケットはスペーサーで浮かせています。


(3)ラグ端子組込

  それぞれのラグ端子に部品を取り付けた様子です。
  左が真空管周り、右がそのパスコン(デカップリング)部です。良くないとは思いつつ、手持ちのラグ端子の関係で分かれてしまいました。
 

 左が電源周り、右が電力増幅段のデカップリング部です。
  

(4) 総組込

  全体の組込がほぼ終わった状態です。


  完成です。まずフロント側。予定通りのシンプルなルックスです。


  上の写真では真空管の灯りかりが良くわからないので、部屋を少し暗くして撮ってみました。ピンボケですが真空管の灯りがわかると思います。


  次は背面です。

  スピーカー出力はお安く端子台にしました。ピン・ジャックが妙に豪華です。