OPアンプ プリアンプ

1. まえがき

  ずっと以前はパイオニアやケンウッドのインテグレーテッド・アンプを使用してましたが、半導体アンプはAura DesignのVA-50を最後に、真空管アンプに転向しました。
  転向のきっかけはエレキットのTU-870で、遊びで買ったもののそのそのかわいらしさと真空管の灯火、そしてその音にも魅了されてしまいました。その後、同じエレキットのTU-872(2A3シングル)、 トライオードのVP-mini88(KT-88シングル)、そしてオークションでラックスキットのA-3500(6CA7pp)を入手、オーバーホールして使っていました。

  一方プリアンプは、キット屋SV-3、6DJ8自作、そしてデザインに惹かれて中華アンプを使ってきました。
  この中華アンプはひどいもので、設計にミスはあるは、フォノイコライザーの偏差が+4dB、-3dB(0.4dB、0.3dBではありません!!)もあるは、ハイインピーダンスで受けないと低域が延びない(100kΩでもだめです、出力のカップリング・コンデンサーの容量が0.1μFしかないのです。)、トーンコントロールもCR型であるにもかかわらずボリュームにBカーブを使っており、変化のカーブがむちゃくちゃと大変な代物でした。

  SV-3にもどして使っていた頃、何を考えたのか覚えていませんが、CDプレーヤーとパワーアンプ直結してみたところ、これが何と瑞々しい音がするではありませんか。SV-3は良く言えば真空管らしい温かみのある音という事もできますが、情報の欠落も多いようです。しかし、私の場合トーンコントロールが必須なのです。私が好きなブリティッシュ・ロックは低音が薄いしJ-POPは高音がうるさいし、気持ちよく音楽を聴くためにはどうしてもトーンコントロールは必要なのです。

  そこでカビが生えたような表現ですがストレート・ワイヤー・ウィズ・ゲインを目指したプリアンプを作ることにしました。(トーンコントロール付なのにストレート・ワイヤー・ウィズ・ゲインはおかしい?気にしないでください。)


2. 構想

  パワーアンプ直結に近づけるには味のある真空管より無味乾燥な(?)半導体が良いだろうと思い、シンプルな半導体回路で行こうと決めました。
当初は、ディスクリートも考えましたが、デバイスも回路もこうすればこうなるというノウハウが無いため、安直にOPアンプで作ることにしました。OPアンプならソケット化しておけば簡単に交換して音を選べます。


3. 回路



  CR型トーンコントロールをOPアンプで挟んだだけの回路です。
  トーンコントロールはNF(BAX)型でも良いのですが、フィードバック量を変化させるのが気に入らなかったのでCR型にしました。嘘です。手持ちのミニデテント・ボリュームがAカーブだったので必然的にCR型になっただけです。

  回路図では2段目がゲインがあるようになってますが、実際はボルテージ・フォロワーでJP102はショート、JP103〜106は取り付けてありません。スペースだけとっています。これをユニバーサル基板に組み込みました。

  従ってこのプリアンプのゲインはトーン・コントロール回路の減衰分がそのまま出てきますので-16dB位になります。世にも珍しいマイナス・ゲインのアンプです。というか、これではアンプではなくアッテネーターですね。結果として通常のプリアンプに比べ、常にボリュームを上げた状態で使うことになり、ボリュームを絞ったときの音質劣化(音が曇る)から逃れられます。欠点は大音量を出せなくなる可能性がありますが、私の場合、二アフィールド・リスニングなので多分問題にならないでしょう。

  ボルテージ・フォロワーなのでDCオフセットは問題にならないだろうと言う事で、音に大きく影響するカップリングコンデンサは入れていません。

  JP101とJP107は発振止めと広帯域OPアンプを使ったときの余分な高域カット、R104はこれも広帯域OPアンプを使ったときの発振止めです。

  ターンオーバーはBASSが約500Hz、Trebleが約3kHzくらいです。BASSのターンオーバーが高すぎるような気がしましたが、たしか、SV-3のカーブを参考ににこのあたりがいいだろうと決めたような気がします。

  R103は変化量の制限のため入れてあります。


4. 主な部品

  抵抗: DALE RN-55
  フィルムコンデンサ: ニッセイ APS (ポリプロピレン)
  電解コンデンサー: エルナー RFO
  整流ダイオード: ショットキーダイオード
  可変抵抗: アルプス ミニデテント
  セレクタスイッチ: アルプス オープン型の普通のロータリースイッチ
  OPアンプ: ナショナル・セミコンダクタ LME49720
  電源トランス: 豊澄のHT-3002 (EIコアの普通のトランス)

  それなりに贅沢な部品も使ってますが、ミニデテントは手持ちがあったのでそれを使いました。
  OPアンプはナショセミの最新鋭オーディオ用OPアンプですが、秋月で買うと激安です。



5. シミュレーション



  シミュレーションするほどの回路でもないのですが、変化カーブの確認を行ないました。
  トーンコントロールがセンター位置のフラットネスも0.13dBとなってます。


6. 製作
 
  左がメイン基板(片チャンネル分)、右が電源基板です。オレンジのコンデンサAPSが美しいです。


  プリアンプ内部です。シンプルというかスカスカです。


  フロントパネルです。ツマミは統一しました。パイロット・ランプは写真ではわかりにくいですが橙色です。このデザインはすっきりしていて気に入ってます。高級感はまったくありませんが、チープで軽い感じが好きです。

7. 測定データ

 周波数特性の実測データ(R ch)です。
 青がトーンコントロールがセンター位置、ピンクがBass, Trebleとも最大、黄色が最小です。

 ほぼシミュレーション通りと言っていいと思います。

方形波応答です。
   
            100Hz                               1kHz                                   10kHz

 広帯域DCアンプですので、サグもオーバーシュートもありません。
 10kHzの立ち上がりが少し鈍ってますが、多分ポンコツ・オシロのせいだと思います。

 項目  測定データ
 ゲイン  -16.5dB
 周波数特性  +0.14dB/-0.45dB (5Hz〜500kHz)
 トーンコントロール  ±11dB (100Hz)    +9dB/-7dB(10kHz)
 THD  0.01%以下(測定限界)
 残留ノイズ  0.002mV

  周波数特性(フラットネス)はシミュレーションに比べて大きくなってますが、部品の誤差、測定誤差を考えれば、この程度かと思います。シミュレーションのグラフではわからないと思いますが、低域が下がり気味で高域が上がり気味の傾向は一致しています。高域のカットオフはシミュレーション上は1.9MHzですが(高すぎたかな?AM放送の帯域まで延びてしまっている。)、オシレターが500kHzまでなので測定できません。

  THDはさすが0.00003%を謳うLME49720、中古のRCオシレターと安物サウンドカード+Wave Spectraでは歯が立ちません。

  残留ノイズはプリアンプを付けて測定した値からプリアンプのノイズを引いた値です。マイナス・ゲインにローノイズOPアンプですから、低いのは当然でしょう。


8. 試聴

  色付けの無いクリアな音のアンプだと思います。情報量も私には十分です。もくろみ通りの音で一安心です。
  問題のゲインもボリューム12時〜3時で十分な音量が出るのでOKでした。
  トーン・コントロールも低音を2時〜3時(+2〜+3dB)にして聴くことが多いのですが、ボーカルには影響も無く自然でいい感じの効き具合です。
  TU-872(2A3)との組み合わせだと少し音が硬めに感じられましたが、VP-mini88改(EL34三結)だと、なぜか硬さは感じません。まあ、色気はまったくありませんので、もっと色気が欲しくなればOPアンプをLME49720からOPA2604に変えてみようと思います。