Retry The LPA , Part I
1. はじめに
「非革命アンプ」のThe
LPAはPC用アンプとしては十分なのですが、何かもやもやしたものが心に残ったままです。TEA2025版を作り直してもたぶん変わらないでしょう。
そこで再度ICを探索しなおし、音質アップを図ろうと挑戦することにしました。
2. ICの再選定
前回と同じ条件で再度ネットを探索してみたところ、見落としていたICがあるものです。下表にまとめてみました。
|
型番 |
最大出力 (mW) |
THD+N (%) |
電源電圧 (V) |
備考 |
| TDA1517P TPA1517NE |
6000 |
0.1 |
14.5 |
DUAL |
| TDA1905 |
5500 |
0.1 |
18 |
SINGLE |
| LM4881 |
300 |
0.1(max.) |
5 |
DUAL |
| LM1877 |
2000 |
0.045 |
20 |
DUAL |
TDA1517PはNXP、TPA1517NEはTIのICで共にDIPパッケージでコンパチです。ただTDA1517はN3というヒートシンクに取り付けるパッケージもあり、本格派(?)のICですので、今回のコンセプトからは少し外れるような気がしてボツとしました。
TDA1905はパワーが大きく、ゲイン40dBでのTHD+Nも0.1%と期待大なのですが、問題はゲインをどこまで落としても発振しないか明記されていないのです。オシレーターが壊れた今、手を出すのは無謀なのでボツとします。
LM4881は本来はヘッドホン用のアンプらしく、ゲイン-1倍ではTHD+Nは非常に良い値(0.03%位)を示しますが、ゲイン-5倍では0.1%を超えてしまうようです。この手のバッファでしたらLME49600が極めて優秀ですが、高価です。実はゲインは1倍でも足りるのですが、オーソドックスなアンプICを試したいのでこれらもボツにします。
LM1877はゲイン34dBでTHD+Nは0.045%と非常に優秀で、しかもゲイン20dB以上で安定性を保証しています。したがって今回はこのICにトライしようと思います。
ただ、LM1877は歪が少ないのは中域だけで、低域・高域は大幅に劣化します。他のICも大なり小なり同様の傾向がありますが、LM1877は中域の歪が極めて少ないのでその差が目立つだけで数値的にはそこそこなのですが。フレッチャー・マンソン・カーブ(等ラウドネス曲線)やIHF-A(JIS−A)の補正カーブを考えれば、中域に対して低域・高域は耳の感度が低下すると言うことらしいので影響は少ないのかもしれませんが、ちょっと気になるところです。
3. 回路

回路は左図のようになります。
アプリケーションと同じ回路で定数のみ異なっています。
アプリケーションではゲインは34dBですが今回は約21dBにしています。1kHzのTHDだけなら34dBでも十分だと思いますが、低域・高域のTHDも出来るだけ改善したいので、限界の20dBに近い21dBにしています。1dB
は気分的なものを含めてマージンです。
カップリング・コンデンサも低域を延ばすため定数を大きくしています。低域のカットオフは約4Hzになります。ただし、入力カップリングのC101とC106は大きすぎます。これは、当初R101とR105を47kΩで設計していたのですが、ここでインピーダンスを下げる必要は無いと製作中に気付いて変更したため、こうなってしまいました。
データシートには±電源で、出力のカップリング・コンデンサを省略する回路も載っていますが、前回と条件を合わせるためと、電源も前回のものをそのまま使いたいので、単一電源で左図の回路にしました。
こうすると部品も前回のTEA2025で使用したものを再利用でき、あとは手持ちの部品を使えば、費用はIC代だけで済みます。
話は変わりますが、このICは店によって価格差が大きく驚きました。調べた範囲での最安値は¥161、最高値は¥840、これだけ価格差のある部品も珍しいのではないでしょうか。果たして¥161の音がするのか¥840の音がするのか楽しみです。
4. 製作
完成した基板です。
電解コンはすべてMUSE
FW、入力カップリング・コンデンサはMMTです。電源のデカップリングにパラってあるのはパナソニックの積層メタライズドフィルム(プラスチィック)のECQV、出力のスナバ回路のコンデンサはニッセイのメタライズド・ポリエステルです。
抵抗は秋月100本100円抵抗と一般の金皮です。
これもICにTO-220用小型ヒートシンクを接着できるようスペースを空けています。
電源、ケース等は前作と同じです。
5. 測定
まずは周波数特性です。
200Hz周辺のへこみとそれ以下の盛り上がりは測定したPCのサウンドの癖ですので、フラットと言ってよいと思います。
20kHz以上はオシレーターが壊れたため測定できないので不明です。
方形波応答も測定できませんので、想像も不可能です。
次は入出力特性です。
1Wあたりから飽和が始まるようです。
ICのスペックでは電源電圧20Vで2W出力ですが、今回は12V弱なので低めに出ているようです。(データシートでは12Vで1.3W)
ゲインは21.1dBでほぼ計算どおりです。

次は歪です。
これもPCのオンボードのノイズが多いのでTHD+NではなくTHDのみの値です。
0.1W以下ではノイズの影響か右肩下がりになっていますが、0.1Wでは0.03%以下と優秀な値で測定限界に近いレベルです。高域は6.3kHzで3次の高調波までしか取れていませんので実際にはこれより悪い可能性もあり、10kHz、20kHzもわかりませんが、強力なフィードバックのおかげで低域の歪みは押さえ込まれています。
カタログ・スペックどおりの優秀なICだと思います。
最大出力は1.13W (THD= 9.8%)で、データシートでは1.3W (typ., THD=
10%)ですのでまあまあでしょう。<
BR>
これくらいのパワーだと電源もだいぶ余力が出てきます。8Ω1.13Wに対して3.6Wの供給力で3.2倍、4Ωで1.8Wですので8Ωに対して1.6倍(理想は2倍、市販のアンプでは1.5倍くらいが多いと思います)
です。
次は0.1W出力時のスペクトラムです。
ハムは50Hzで信号に対し-51dBしか取れていません。50Hzですので電源トランスから直接拾っています。前作同様、配置が配置ですので仕方ありません。これでもフルボリュームでもハムは聞き取れません。
高調波歪みはなぜか3次より2次が大きくなっています。まるで真空管アンプみたいです。
20kHz付近にスペクトルが1本立っていますが何だか不明です。オシロで見る限りでは発振している様子はありません。
残留ノイズは1.3mV(無評価)で、オシロで見たところホワイトノイズが中心で、少し50Hzのハムが乗っていました。
6. 試聴
ファースト・インプレッションは丸っこいでした。ほとんどエージングしていない状態なので、やはり高域の伸びがありませんがLM380ほどではありません。低域は量がわずかに少なく、全体にかまぼこ型の印象です。3機種の中ではバランスも良く最も聴き易い音です。
10時間ほどエージングしてみました。基本的に大きく変わる点はありませんが、高域も伸びやかさや繊細感が少し出てきて、低音も量が増え、かまぼこ型というよりは軽いピラミッドバランスに近付きました。全体のイメージは、安定したウォームなサウンドです。解像度はイマイチですが(ウォームで丸い音なのでそう聞こえるだけかもしれない)、そこそこに広がりもあり、刺激感は無く心地よい音です。細かいことを気にしなければこれで十分音楽が楽しめると思います。
3機種の中では一番気に入りました。値段はいくらの音かと聞かれれば、360円の音でしょうか!?
これもICの熱は、テスト時は少し熱くなりましたが、通常の使用時ではほんのり暖かくなる程度で、ヒートシンクは必要ありませんでした。
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