電波が見えるアンテナ

この研究(?)は、通信のためのアンテナの研究ではありません。通信には役の立ちません。
このアンテナ(上左の写真、その右隅のはめ込み写真は、LED部を拡大)は、見えない電波を「見せたい」ためのものです。見えない電波を理解するのはなかなか難しいことです。しかし、ただの針金(ステーワイヤ:ビニール被服鉄線)につけたLEDが突然明るく点灯すると感動的です。電波を端的に感じ取れるのではないでしょうか。144MHz帯トランシーバ(出力30dBm)を使い、最大5.4m先のアンテナのLEDを点灯させることができまます。
ここでは、まず、@LEDの性質を調べ、ALEDを効率よく点灯させる、すなわち、LEDにパワーを効率よく送れる信号源としてのアンテナとしてはどんなものがよいのかを調べてみました。

なお、ここに掲示したデータは、記録をのこすため、すべて自作計測器で得たものです。これらの機器は、信頼できる計測器で校正をしているものではありません。ここに掲示したデータは、「おおよそ」、または「傾向」を見ていただく程度と理解してください。

LED+ショットキダイオードの特性

VHFでLEDを良く点灯させるには、まず赤色高輝度発光ダイオード(メーカー、型番不詳)の特性を知る必要がある。計測機器のページのインピーダンスブリッジを使ってインピーダンスを計測してみた。直接、ブリッジで測ろうとするとブリッジの計測可能範囲を越えてしまうので、手元にあった173cm(物理長)の同軸ケーブルをインピーダンス変換器として間に入れて計測した。変換器としての同軸ケーブルの電気長を算出するため、FRMSでケーブルの速度係数計測(ケプストラム解析)を行った。

インピーダンスの測定の様子
左より、レベルメータ、インピーダンスブリッジ、シグナルジェネレータとして使っているFRMS/FREXです。 手前が173cmの同軸ケーブルの先端につけたLED+ショットキダーオード。
計測用同軸ケーブル速度係数の測定
これは、長さ3.52mの同軸ケーブルを測定した場合の例で、遅れ時間3.534E-8秒を表示している。これより、このケーブルの速度係数は0.6645であることが分かる。
LED+ダイオードのインピーダンス周波数特性
144MHz、145MHz、146MHzの3点で測定した。 上より(ライン各2本)、インピーダンス、抵抗、リアクタンスを示す。 抵抗分は非常に小さく、リアクタンスは容量性でほぼ150Ωを示す。あらためて「ダイオードはコンデンサ」を実感した。<拡大>

インピーダンスは、測定点で得られた値をスミスチャートで負荷側の値に変換したものだ。なお、測定点で得られた抵抗値は、非常に小さく計測範囲を超えてしまうので、仮に「1Ω」としいる。
念のため、それぞれ2つのデータは、LED+ダイオードの接続を逆にして計測したもの。大きな差異はないようだ。 なお、ダイオードの容量性リアクタンスをキャンセルできないかとそのリアクタンスに相当するインダクタンスを 入れてみたが効果は思わしくなかった。

LEDを点灯させるアンテナ

LEDを良く点灯させるアンテナとはどんなアンテナか。たまたま手元にあった実験用のオメガマッチダイポールアンテナ(または、変形折返しダイポールアンテナ、以下FDアンテナと記す。)とJ型アンテナを持ち出し、インピーダンスブリッジを使って給電点のインピーダンスを計測してみた。ダイポールアンテナについては、折返しの位置を変更し、アンテナ給電点におけるインピーダンス、LED点灯の様子を観測した。

FDアンテナ給電点インピーダンスの計算
168cm(物理長)の同軸ケーブルを経由して、測定したので、測定点(図の「0」「1」「2」「3」の位置)でのインピーダンスは、スミスチャートで電気長λ=1.212としてアンテナ給電点のインピーダンス(図の「4」「5」「6」「7」の位置)を求めている。
FDアンテナ:折返し位置とインピーダンス
折返し位置とインピーダンスの変化を整理した。図は、折り返点が、右からλ/2(先端)、3λ/8、λ/4、λ/8におけるデータを示す。先端近くで折り返した場合、リアクタンスは容量性を示し、中間点近くで誘導性を示している。<拡大>

上の結果は、「アンテナハンドブック」p315(CQ出版社、昭和49年版)と同じ傾向を示している。
ミドリ破線の位置でLEDは明るく点灯する。上右図のアオ破線(λ/5の位置)は、リアクタンス=0、インピーダンス300Ω、通常の通信用のアンテナとしては、この状態で設定することになる。給電点インピーダンスの計算は、smith chart計算ツール「Mr.smith」を使用した。鉛筆、コンパス、定規、電卓を持ち出さなくても良い、非常に便利だ。

FDアンテナ:折返しエレメント間隔とインピーダンス
折返しエレメントの間隔(3cm〜10cm)を変更し、給電点におけるインピーダンスを測定した。大きな差異は認められなかったが、強いて言えば、間隔が広い方が良い結果のように見えた。<拡大>

J型アンテナ給電点インピーダンスの計算
λ/4ショートスタブをつけたλ/2J型アンテナで、スタブ接続点(ショートバーを基点として3cm〜6cm)を変更しながら、測定点におけるデータをスミスチャートを使ってアンテナ給電点インピーダンスを計算した。
J型アンテナ:スタブ接続位置と給電点インピダンス
λ/4ショートスタブをつけたλ/2J型アンテナで、スタブ接続点(ショートバーを基点として3cm〜6cm)を変更、給電点におけるインピーダンスの変化を示す。ミドリ破線の位置「6cm」が最も明るく点灯する。<拡大>

上右図のアオ破線(位置5cm)は、リアクタンス=0、インピーダンス75Ω、通常の通信用アンテナとしては、この状態で使用する。

LEDにかかるパワー

LEDとそれを明るく点灯させる相性の良いアンテナはわかり始めた。144MHz帯ハンディトランシーバの送信波をアンテナで受け、LEDかかるパワー(電圧、電流の大きさ)を計測した。送信用トランシーバ(出力25dBm:FCZ・パワー計で計測)とは2.3m離しておいた。

測定の様子
拡大できます。
電流値は、LEDの接続線に取り付けたトランス出力をアンプ(電界強度計)を通し、ディジタル電圧計で読み取った。電圧は、LEDにダイオードアダプタを経由して、アンプ、ディジタル電圧計で読み取った。(上の図は拡大できます)
LEDにかかる電圧と電流の大きさ
折り返点が、@λ/2(電流の大きさ:アオ、電圧の大きさ:ピンク)、A3λ/8、Bλ/4、Cλ/8においてLEDにかかる電圧、電流の大きさ(V)を示す。@折返し位置λ/2が最もパワーが大きい。<拡大>

なお、電流観測用のトランスは、T37-77コア、0.4φラッピング線10tしたもので、1:10のトランスを構成している。

まとめ

・データを見て
LEDとアンテナがほぼインピーダンスマッチングがとれることが分かりました。
LED発光の明るさ順と順位が一致するのは、リアクタンスが大きく容量性といったところのようです。なお、LEDの容量性リアクタンスをインダクタンスでキャンセルできないか、同等のリアクタンスを持つコイルを入れてみたが効果は見られませんでした。ただし、ただの針金以外に何か仕掛けをつけたものでは感動を呼ばない。

・結果
144MHz帯トランシーバ(出力30dBm)を使い、最大5.4m先の144MHz帯λ/2変形ダイポールアンテナのLEDを点灯させることができました。このアンテナの作り方はこちら(33KB)を参照してください。