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自然自然環境保護政策と矛盾するリニア計画 |
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| 左は南アルプス国立公園の範囲を示した地図です。中央を東西に横切るのがリニア中央新幹線建設が予定されている範囲。 朱色の線で囲まれたのが国立公園特別保護地域、赤紫色の線で囲まれたのは国立公園特別地域です。特別保護地域は原則として草木一本、石ころ1つを動かすだけでも環境大臣の許可を必要とする地域で、特別地域はそれに準じて強い保護制度が設けられています。以上の2地域が南アルプス国立公園の範囲です。 なお、左下の黄色い線で囲まれた部分は原生自然環境保全地域という、わが国の自然保護制度上最も厳しい管理がなされる場所で、立ち入りも禁止されています。 |
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| 終戦後の昭和20年代後半。全国で風光明媚な地を国立公園に指定し、観光客を呼び込もうという動きが巻き起こりました。その流れの中で南アルプスも国立公園に指定しようという運動がおき、紆余曲折を経て1964(昭和39)年、稜線部分を中心とした地域が国立公園に指定されました。ただ、国立公園に指定された範囲は、ほぼ稜線部分の高山帯に限られています。それは国立公園が設置された昭和30年代、国内の森林伐採が最も盛んであった時代に、山麓で行われていた林業との調整ができなかったためです。
国立公園すなわち保護地域が狭かったため、山麓では比較的規模の小さい水力発電所が多数設けられ、伐採のための林道も奥へと延ばされてゆきました。特に1970年代後半に山梨・長野県境の北沢峠を越えて造られた南アルプススーパー林道は、大規模な自然破壊を引き起こして大きな社会問題にまで発展しました。また南アルプスから流出する大井川や天竜川の中流部には巨大なダムがいくつも設けられ、河川環境は大きく悪化することを余儀なくされました。 |
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左は現在の南アルプスにおける自然保護地域です。 国立公園の指定からもれた地域を補完するように、周辺には県立公園として県立南アルプス巨摩自然公園(山梨)、奥大井県立自然公園(静岡:地図)が設けられています。さらに山梨県側には、県独自の条例により、自然環境や景観が保全されるべき地域として早川渓谷景観保存地区、保川渓谷景観保存地区、笊ケ岳自然保存地区などの自然環境保全地区が設置されています。 当初、地元としては観光・登山客誘致を目的として国立公園の指定を求め、県立公園が設けられたようですが、その自然環境は想像以上に貴重であることが次第に知られるようになり、中でも静岡県の大井川支流寸又(すまた)川源流部は、日本の自然保護制度上で最も厳重な環境保全の図られる原生自然環境保全地域に指定されました(大井川源流部原生自然環境保全地域)。指定地域は本州でただ一ヶ所、全国でも5ヶ所だけですが、古来より伐採や開発が行われていないという極めて貴重な場所です。 また、この原生自然環境保全地域周辺の国有林は、林野庁によって南アルプス南部光岳森林生態系保護地域という厳重な保護地域に指定され、また長野県側の森林地帯は広い範囲が同じく林野庁によって特定植物群落として指定され、伐採を免れ保護されています。 |
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このように全国各地の山岳地域と同様、南アルプスも開発と保護とが拮抗してきましたが、それでもなお、人工的な改変の少ない地域が広く残されているといえます。
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