2月末に掲示板に記載したガマガエルを元のラブストーリーです^^ガマガエルに起きた恋の物語をどうぞお楽しみに。

                                                                                      第8章エンディング   あとがき
  
                                                                                   ハイライトシーン画像を追加しました。
                                                                                                                            
  ガマガエルの恋物語
              

 

第1章 森の池

 

木立ちの重なる森に、小さい池があった。

そこに一匹のガマガエルがいて、さっきから同じ方向をずっと見ている。

視線の先には、山つつじの枝が池に向かって伸びていて、よく見ると先の方に何かがいる。

それは小さい可愛いアマガエルで、枝の先からジッと水面を眺めているのだ。

ガマガエルは来る日も来る日も、そのアマガエルをそっと見ていた。

もう、半年もガマガエルは、そのアマガエルだけを見ていた。

つぶらな瞳、エメラルドグリーンの艶やかな肌。

どうしたら、あの子と親しくなれるだろうか・・

 

半年前、吹き荒れる雨と風の中で、ガマガエルが岩陰に隠れていると

小さい叫びが聞えた。そばに行くと、倒れた木の大きな葉の下で

何かが動いていて、声はその下から聞えるのだ。

葉の端には石や枝が重なり、中から出られないでいるようだった。

ガマガエルは迷わずそこに滑り込んだ。

中には、小さいアマガエルがいて、密閉された葉の中で震えていた。

「大丈夫?」ガマガエルが尋ねると、アマガエルは小さく頷いた。

雨は一層強くなり、ガマガエルとアマガエルはそのまま葉の中にいた。

小さい手はいつまでも震えていて、瞳は固く閉じている。

自分が守ってあげている・・ガマガエルは愛しい思いを感じ始めていた。

大分たって、雨が止み、ガマガエルは体を起こして、隙間を作ってあげることにした。

アマガエルはスルリと抜けて、「ありがとう。」と振り返りながら、去っていった。

 

ニ匹だけでいた時間は、どの位だったのか・・

雨が止まないでほしいと願ったあの時間はどれ位だったのか・・

ガマガエルにとって、忘れられない日となっていた。

二度目に見ることができたのは、森の中央にある池のほとりだった。

こんな所で暮らしていたのか・・

ガマガエルの住みかは、森のはずれで、涌き水のほとりだった。

秋になると、そばには白い浜菊が咲き、のどかでいい場所である。

森の奥はガマガエルには違う世界であり、今まで池に来ることはなかった。

でも、探し出したい思いが、ガマガエルの歩く範囲を広げたのだ。

あの アマガエルは自分を覚えていてくれるだろうか?

むやみに行って、驚かせてしまったら、嫌われたどうしよう・・。

そう思うと、ガマガエルはそばに行って、声をかけられなかった。

ただ、ジッと岩の陰から見つめるしかできなかった。

 

その時、急に風が強く吹いて、アマガエルは池に落ちた。

「アッ!」と思い、ガマガエルも池に飛び込んだ。

アマガエルだって泳げるカエルだったのに、とっさのことだった。

池の中で二匹は再会した。アマガエルは驚きながらも、微笑んでくれた。

「また、助けてくれようとしたのね。」

風が想い叶えて、贈り物をくれた気がした。

 

それからは毎日、毎日、その池に来て、ガマガエルは歌を歌った。

贈る物は何もないから、ガマガエルは歌ってあげたかったのだ。

アマガエルはそばには来なかったけれど、いつも目をつぶって聴いてくれていた。

ガマガエルは嬉しくて嬉しくて、毎日池のほとりに通っていた。

いつかこの距離も縮まるに違いない。そう思っていた。

 

ある日、ガマガエルは池に行く途中で、大きなヘビを見た。

森の奥に大きなアオダイショウがいると聞いたことはあったけれど、

見たのは初めてで、ガマガエルはその大きさに足がすくんだ。

でも、大変だ。ヘビは池の方に向かっている。

ガマガエルは音を立てて飛びあがった。ヘビはこっちを見て、

ゆっくりと方向を変えた。「そうだよ。こっちだよ。」

そして、池から随分離れた場所まで飛びながら進み、それから岩陰に隠れた。

ガマガエルは岩に似ているから、動かずにいると区別がつかないのだ。

追いかけて来たヘビはガマガエルを見つけられず、森の奥に去っていた。

 

再び、池に向かうと、今度は雨が降って来た。

風が強く吹き出し、落ち葉が舞って、思うように進めない。

普段通らない道なのに、暗くなってきて、方向も定かでない。

今日はここで休もう・・ガマガエルは目を閉じた。

 

目が覚めた時はまだ薄暗く寒かった。でも、ガマガエルは迷わず歩きだした。

いつもはまだ寝ている時間だけど、アマガエルの姿が見たかった。

ただ、それだけを思って、落ち葉や小枝の重なる道を歩き出していた。

そう言えば、もう数日、何も食べていない。飛びはねる力がない・・。

でも、この先に、あの可愛いアマガエルがいる。それだけで生きていける。

ガマガエルはひたすら歩き続けた。

 

 

第2章 恋の事実 

 

 

やっと池のほとりにたどり着いた時、ガマガエルは疲れて眠ってしまった。

しばらくして、木々の間から朝の光が差してきて、ガマガエルは体を起こした。

いつもの時間より、ずっと早いけれど、今はただ会いたかった。

一歩、歩き出そうとしたその時、池の方から歌が聞えた。

軽やかなアマガエルの歌だった。

でも、歌っているのは、あの可愛いアマガエルではない。

別のアマガエルが見上げるように、スイレンの葉の上で歌っていたのだ。

思わず、ガマガエルは岩陰の穴に体を沈めた。

 

「素敵な声ね。」

可愛いアマガエルは、ウットリと下を見下ろし、そして・・

ガマガエルは固まって、ビクとも動けなくなった。

あの小さいアマガエルが勢いよく飛んで、スイレンの葉に降りたのだ。

「君の所には、毎日、毎日、ガマガエル君が来てるから、

今まで歌えなかったんだよ。昨日は来なかったね。」

可愛いアマガエルはまわりを見渡してから、そっと話し出した。

「やっとあきらめてくれたかとホッとしているのよ。

何しろ、助けてくれたカエルだから、冷たくできないでしょう?

かわいそうだから、相手をしてあげていたの。

でも、見たことあるんでしょう?あの怖い顔、ひどい声・・

なるべく見ないように目をつぶっているのよ。

初めて会った時も、一緒にいるのが怖くて怖くて、私は震えてしまったの 。

どうやったら、あきらめてくれるのか、いっそ、貴方と遠い池に逃げてしまいたい。」

 

ガマガエルは、我が耳と目を疑った。

動けないまま、ずっとずっと、岩陰の穴に隠れて固まっていた。

そうだったのか・・何も知らなかった。

そんな風に嫌われていると知らずに、僕は毎日、ここで歌を歌っていたんだ。

 

夕暮れになっても、ガマガエルは動けなかった。

アマガエル達の姿ももう無い。

木枯らしが吹き始めて、ガマガエルの体も心も冷え切った。

このまま凍えてしまいたい。

ガマガエルは目を閉じた。

その上に、枯葉が舞い降り、何枚も何枚も重なった。

それから、数日後に霜が降り、まもなく、森に冬がやって来た。

 

 

第3章 心の傷


 

鳥のさえずりが森に響く朝

いつもより、春の訪れが早かった2月の朝。

ガマガエルは再び目が覚めた。

日差しは暖かく、池のほとりの梅の木もほころんでいた。

ガマガエルの住みかにも梅の木があって、 ウグイスが春を教えてくれていた。

いつも見る冬眠明けの姿だけど、何の感動も起きない。

香り漂う紅白の梅さえ、どんよりとした霞のようにぼやけて見える。

「僕はまだ、生きていたのか・・。」

ガマガエルは、落ち葉から体を出して、まわりを眺めた。

まだ、森に住むアマガエルやトカゲや亀は起きていないようだ。

僕はここから離れないといけない。それだけが頭をよぎった。

 

ガマガエルはやっとの思いで歩き出した。

でも、冬になる前にほとんど何も食べていなかった。

這うように歩くのがやっとだったけれど、ここにはいられない。

それだけの思いで歩いた。

住みかに戻ると、アマガエルの言葉が思い出された。

払っても払っても・・次の日もその次の日も・・

 「怖い顔、ひどい声・・かわいそうだから・・。」

アマガエルの無邪気で、残酷な言葉が頭の中で何度も響いた。

住みかに残っていた食べ物を少し口にしたけれど、飲み込めなかった。

 

ガマガエルは消えてしまいたかった。どうして目が覚めてしまったのか。

あのまま凍えてしまえば良かったのに・・

それからは、夜になってもつらくて眠ることができなくなった。

そうして、幾日か過ぎ、思い詰めたガマガエルは迷わず歩き出した。

前に何度も行ったことのある神社の道に向かって歩き出した。

そこには石の階段があった。散歩に行くと、麗らかな日も、風が吹きぬける日も、

石段を上から下から駆け足している人間を何人も見たものだ。

人間は時々、ガマガエルにはわからないことをする。

「あんな階段の下を歩いたら、踏み潰されてしまうなァ・・」

砂利のある木陰で見ながら、そう思ったこと・・それを思い出したのだ。

ガマガエルはよろめきながらも、その石段に向かった。

楽になる方法は他にないと思ったのだ。

階段の目の前に来て、ガマガエルは一気に横の溝を滑り落ちた。

早く下に行かなくては・・

そして、僕は人間に踏み潰されるんだ。

 

          

第4章 石段の下

 

階段の下にころげるように着いた時は、もう夕暮れに近かった。

でも、その時間が一番、走る人が多いことを知っている。

ガマガエルは階段の下に歩き出して、そこにうずくまった。

もうすぐ楽になる。アッという間だよ。きっと・・。

ガマガエルは冷たい石段の上で目を閉じた。

もう開くことはないと思った。

 

遠くから走って来る人間の靴音が聞えた。もうすぐだ。

その時ふと、ガマガエルは違う人影を感じた。

夕日を背に受けて、人間が一人、ガマガエルの前に立っている。

遠くから近づいた靴音は、その人間が邪魔だったようで、道をそらし

ガマガエルのすぐ横を、勢いよく走り抜けた。

(この人間は何をしているんだ。僕をその場所から踏みつける気かい?

それでもいいけれど、ああして走っている人の重みの方が楽なのに・・)

ガマガエルは動く気力もないまま、冷たい石段から人間を見上げた。

 

その人間はまわりを見回し、離れた場所から枝を拾ってきた。

そして、ガマガエルの目の前に座り込んで、後方から無理やり押し出した。

仕方なく、ガマガエルは手足を動かした。するとまた棒で押す。

ガマガエルの目の前には紙袋に入った平らな台があって、

そうやって、とうとう乗せられてしまった。

人間はそのまま、ガマガエルの乗った台を持って歩き出し、

かがんで、階段脇の水路の横あたりに穴を掘った。

ガマガエルはそこに入れられ、まわりに枯れた落ち葉を敷き詰められた。

もう、日は落ちていた。昼間の暖かさが嘘のように、冷え込んできた。

動きたくても、ガマガエルはもう動けない。

翌日からまた寒くなり、その次の日は雪になった。

踏み潰されなかったガマガエルは、再び深い眠りについてしまった。

 

 

第5章 出会い

 

「起きて。・・起きた?これを食べて。」

ガマガエルが目を覚ました時、自分と同じガマガエルが上から覗き込んでいる。

そして、穴の底のガマガエルに食べ物をくれた。

「はじめまして。私はレディ マーガレット。マギーと呼んでね。」

「マーガレット?マギー?」

「そうよ。ほら、今は咲いていないけれど、あそこに白い花が咲くの。

前に神社にお参りに来た人間が、きれいなマーガレットって言ってたのよ。

だから、私の名前にしたのよ。貴方の名前は?」

「僕には名前なんてないよ。」ガマガエルはそう答えながら、

(あの花はマーガレットじゃないよ。僕の住みかのそばの花と同じ葉っぱだ。

神社の偉い人が、いつも秋になるときれいな浜菊だ。と言っていたんだからね。

あの花は、僕の住みかに咲く花と同じ浜菊だよ。

でも、まあ そんなことは今はどうでもいい・・。)と、胸の奥でつぶやいた。

 

「まァ 名前がないの?ということはもしかして、森から来たの?」

「どうしてわかるんだい?」

「だって、この辺で見たことないし、貴方をみつけて誰?って

驚いたのよ。えーっとそれで、名前のことね。前に森から降りてきた

物知りカラスがいてね、森のカエルには名前がないと教えてくれたの。

森には大きなアウトローという名前のアオダイショウがいて、必ず、

君には名前がある?と聞くんだって。それで無いと食べられちゃうんだって。

それで私は念のため、自分で名前を付けたのよ。」

 

(あの大きなヘビのことか・・)

「でも、どうして、森のカエルにそれを教えてあげないだ?」

「だって、皆に名前が付いたら、アウトローは食べるものがなくなってしまうでしょう?

だから、それは『森の掟』なんだって言ってたわ。

それに自分で気が付く頭のいいカエルなら、きっと生き残れるって。」

マギーはまるで昔から知っている友達のように弾んだ声で語っていた。

「まだ 貴方のことをよく知らないけれど、私が名前を付けてあげる。」

「いいよ。意味がないよ。」ガマガエルは怒って吐き捨てるように言った。

「どうして?」マギーは不思議そうに首を傾げた。

「僕は生きる望みがないんだ。想っていた相手に嫌われて・・

心がズタズタに傷ついているんだ。

あの階段で踏み潰されるために、やっとの思いでここに来たんだ。

だから、生きるための名前なんていらなんだよ。」

 

マギーはとても驚いたように目を大きく開き、しばらく黙った後につぶやいた。

「そう、かわいそうに・・。」

「かわいそう?同情なんてしないでくれ。」

「貴方の心に同情なんてしてないわよ。」マギーはまっすぐ目を向けた。

「貴方の手や足がかわいそうって思ったのよ。そんなに立派な体なのに、

丈夫そうな足なのに、心が望みを失うと一緒に潰されるのね。

手も足も・・体は生きていたいはずなのに・・。

手足が傷ついてつらくても、心が丈夫なら生きていけるのに、

心がズタズタだと、丈夫な手足も道連れで一緒に潰されるのね。」

 

「君に何がわかるんだ。心も体も一緒だよ。こんなにもう弱っている。」

マギーは黙って、ガマガエルをみつめた。

(もう、自分には生きる望みがないんだ。

あの可愛いアマガエルは、あんなに僕を嫌っていたんだ。

あの時にヘビに食べられていたら、あんなにつらい言葉を

アマガエルから聞かずに済んだのに・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そうか、ヘビか、どうして気が付かなかったんだ。

僕はそこでヘビに食べられて生涯を終えよう。)

起き上がろうとしたが、思うようでない。ずっと何も食べていないのだ。

「ねぇ君、僕は食べ物をもらうよ。最後の食事にするよ。

僕はそのヘビのエサになる。教えてくれてありがとう。」

ガマガエルは急いで食べると、穴から這い出した。

そして、今度は強く踏み出し、同じ道を戻った。

石段の横の急な溝を這いつくばって、手足に力を込めて、つぶやいた。

「僕の目的は、あのアウトローというヘビに会うことだ。」

何度も何度も滑り落ちては昇り、ガマガエルはあの森に帰って行った。

 

 

第6章 命の原動力

 

やっと森の入り口にたどり着き、ガマガエルはふと泥だらけの手足に気付いた。

あれ以来、ずっと、ろくに水にも入らず、体中が泥で汚れている。

これじゃ、まずそうで食べてもらえないなァ・・

ガマガエルは久し振りに笑った。住まいの涌き水に寄ると、水はまだ冷たかった。

でも、洗った体はさっぱりして、心の底が湧き上がるように温かくなっていく気がした。

ヘビに食べられに行くためなのに、体は食べ物をもらい、洗ってもらい、

まるで、手足の先が喜んでいるように光ってみえた。

きれいに凛々しくなったガマガエルは外への一歩を踏み出した。

 

森の奥に奥にと、ガマガエルは歩き、邪魔な木立ちの根や石は飛び跳ねて進んだ。

不思議だ。力が湧く。エサを食べたせいなのか?ガマガエルはよくわからなかった。

食べられるために森の奥に進むのだ。これが残った道だと思ったのだ。

その目的のためなのに、道連れにされるのに、体は元気になっている。

体の奥底の声と、自分は違う道に歩いているのではないか?

 

でも、ガマガエルは、深く考える余裕がなかった。

アウトローに会うんだ。それだけを胸に刻みつけた。

池を越え、この前、ヘビに会った道をたどって奥に進んだ。

木々はとても大きくて、日差しの届かない場所もあった。

ガマガエルは迷いを消すように力を込めて、奥へ奥へと進み続けた。


 

 

第7章 内なる叫び

 

その時、木立ちの横で大きな影が動いた。

この前、池のそばで見たアオダイショウだった。

その大きさに、ガマガエルは一瞬たじろぐ。

ヘビは高く首を持ち上げて、それから尋ねた。

「僕の名前はアウトロー。君の名前は何と言うんだい?」

「僕には名前はないよ。」

頭上で、狙いを定めたヘビの口が大きく開いた。

ガマガエルは目をつぶり、覚悟を決めた。

(ごめんよ。僕の体・・)

 

その時、耳の奥で声が聞えた。

「ジャンプ!」

ガマガエルはその声に大きく横にジャンプした。

獲物をはずしたヘビの体が地面に当たり、再び襲いかかってきた。

「ジャンプ!」また聞こえた。今度は遠くからの声だった。

ガマガエルはまた大きく反対側に飛び跳ねた。

 

「やめて!、アウトロー。」今度は後から、はっきり大きく聞こえた。

振り返ると、そこには、いつのまにか、マギーがいた。

泥だらけで、肩で息をしているマギーがいた。

「私はマギー。よ、よろしくね。そして、そのガマガエルにも名前があるのよ。」

アウトローは首をもたげたまま制止し、マギーを見つめた。

マギーは震えながら、アウトローに話しかけた。

「このガマガエルは、ズタズタに心が傷ついて、それで、貴方に食べてもらいたくて、

ここに来たのよ。大好きな相手に嫌われたのよ。つらくてたまらないことでしょう?

でも、階段の下で潰されそうになった時に、人間が助けてくれた命なのよ。

私は見ていたの。だから、心配でそばにいたの。お願い、だから食べないで。」

 

アウトローは驚いた顔をして、それから首を静かに傾けた。

そして、マギーに頷き、それからガマガエルの方を見た。

「そうか、君があのガマガエルか・・。」

「僕を知っているの?」

 

「この前の暖かい日の夕暮れに、カメリン3の声がまた聞こえたんだ。

カメリン3って言うのは、僕に名前を付けてくれた人間だよ。

そして、こう言ったのさ。

『アウトロー 賢い目をしたガマガエルを助けたから、間違って食べないでね。』って。

そうか、君か、良かったよ。食べなくて。ダメじゃないか、名前を言わなくちゃ。」

アウトローは静かに向きを変えて、森の更に奥に戻ろうとした。

そして、ふと振り返った。

「ところで、君、本当は何て言う名前なの?」

ガマガエルは固まった。今度は飛べなかった。

すると、マギーが「ジャ、ジャ、ジャンピーよ。」

「そうか、ジャンピーか。僕のアウトローの方がいい名前だな。」

そう言って、大きく笑い、今度は優しい目でつぶやいた。

「嫌われたからって、一々潰されたり、食べられていたら、

僕たちヘビは誰も生きていけないよ。

まわりの声じゃないよ。賢い自分の中の声を大事にしろよ。」

「それから・・」アウトローはマギーの方にそっと目を向けて、

もう一度、ガマガエルに、そうジャンピーに言った。

「・・大事にしろよ。君を救いにここまで来たんだ。」

アウトローは今度は振り返らずに森の奥に入って行った。

 

 

 

アウトローの姿が消えても、しばらく二匹は呆然として森の奥を向いていた。

二匹のガマガエル、ジャンピーとマギーはやっと、落ち着いてお互いを見つめた。

「あの石段の坂を君は上がってきたの?」

「そうよ。貴方が最後の食事なんて言うから、心配で追いかけたのよ。

初めてあの坂を昇ったわ。それは大変だった。

道に迷って、他のカエルやリスにも一番近道でヘビに会う方法を聞いたのよ。

ほら見て。こんなに真っ黒よ。元々、白くないけどね。

でも、間に合って良かった。食べられなくて良かった。」

マギーの目が潤んで見えた。

二匹は並んで、来た道を戻り出した。

 

「ねえ君、あのアウトローに僕が食べられそうになった時、声をかけた?」

「ジャンプ!って一度、叫んだわよ。貴方は大きくジャンプしてヘビをかわしたわ。」

「一度?一度だけ?」

「そうよ。それから、『やめて、アウトロー』と言った気がする。

後は覚えていない。夢中だったから。」

(あの最初の「ジャンプ!」は誰の声だったのか・・。

自分の体から湧き上がるような声だった。

手や足や、目や口や耳が一斉に僕に呼びかけたのか?

もっと生きろと、僕の体と僕の心の声が叫んだのか?)

 

「貴方の名前、森に向かいながら考えてたのよ。

でも、道が険しくて、よくわからなく大変で、浮かばなかったの。

それで、あの時、とっさにジャンピーって。気に入らない?

そう言えば、アウトローが言ってたね。カメリン3っていう人間が

貴方を賢い目をしたガマガエルだって。そう言ってたね。

私もね、最初にそう思ったのよ。

賢い目をしたジャンピーね。」

マギーは下を向いて、恥ずかしそうに笑った。

 

しばらく歩くと、そこに池が見えた。

あの池だ。ほとりで歌が聞こえた。あのアマガエル達だ。

でも、ジャンピーはもう怖くなかった。

そばに行くと、アマガエルはピタリと歌をやめた。

ガマガエルのジャンピーは目で二匹に挨拶をした。

マギーが水辺で汚れを落としながら、弾んだ声で話しかけた。

「はじめまして。私はマギーよ。貴方達は?」

アマガエル達は顔を見合わせ、困った顔をした。

「貴方はレイン。彼女はサニー。それがいいわ。よろしくね。」

 

池から離れて、マギーは木立ちの奥を見つめながら、つぶやいた。

「二匹だけの名前なら、森も見逃してくれるわよね。

だって、サニーもレインも貴方を知っているみたいに驚いていたもの。」

マギーは、「本当は・・」と続ける言葉を飲み込んだ。

(本当は貴方のために考えた二つの名前なの。でも花の名の私に必要なのは

晴れなのか雨なのか・・決められずにいたのよ。アウトローが振り返った時、

ホッとした直後で動けなくなった貴方に「ジャンプ!」とまた言おうとして、

とっさにジャンピーという名前にしてしまったの。だから、ここに来る

まで考え続けた名前は、あの・・もしかして貴方が想っていた相手かも・・の

アマガエルさんと彼にあげることにしたのよ。)

 

深い思いを秘めたマギーの眼差しが、ジャンピーには眩しかった。

マギーに名前を付けられたアマガエル達はきっと無事に過ごすだろう。

苦しめられた相手だけど、そう願う気持ちが湧きあがった。

湧き上がる気持ちを教えてもらった・・。

 

風のそよぎを聴きながら、ジャンピーはマギーを見た。

体の中の声を教えてくれたマギー。

泥だらけになって、救いに来てくれたマギー。

ジャンピーは心の中で繰り返しながら、マギーを見た。

 

その瞳は夕日を浴びてキラキラ光り、真っ直ぐ前を見ている。

「マギー」

「初めて名前で呼んでくれたのね。嬉しい。

貴方のこと、ジャンピーって、これからも呼んでいい?」

ジャンピーは頷いて、そして振り返り、森の奥に呼びかけた。

「アウトロー 大事にするよ。約束するよ。」

心の声が深い森にいつまでも、いつまでも響いていた。

 

                

ハイライトシーン画像

                                      
    石段の下にうずくまる失意のガマガエル      ヘビに会う目的を持って戻るガマガエル       助けに来た泥だらけのマギー

          
            ガマガエル達に語るアウトロー                             マギーとジャンピー
 

        A love story of  toad.  His name is jumpy                  文・絵とも by kamerin3

     
                              
           写真提供↑KiGi's Nature Land

                                    アウトロー スネーク ストーリー(森に来る前のアウトローが登場します。)                     

                            あとがき

  最後まで読んで下さってありがとうございます。 今回の物語は思いがけずに出来た内容です。
  2月末の掲示板で、神社の石段にうずくまっていたガマガエルを、 袋に入っていた買って来たばかりの
   本に乗せて、階段の横の道端に移したことをお知らせしたのですが、その時、亀のサイトの先輩管理人さん
   であるカメカワさんに「ガマガエルの物語も」というコメントをいただいたのです。
   アウトロー・スネークはらいむさんの掲示板に書いたことが、きっかけですが、今回もそういう応援
  して下さる先輩の皆さんの声をきっかけに、一つの物語が出来あがりました。

  アウトローの時は、どうして、あんなに伸び伸びと私の前で日向ぼっこしていたのか?が物語の糸口
  でしたが、今回は家で飼っている金魚やマリモや、 実際にあったエピソードが記憶に残っているアウトローと
  違い、石段で会っただけのガマガエルなので接点もなく、物語の展開は頭をひねるばかりでした。
  でも、石段から動かしたことと、賢い目に見えたことは事実で、どうして階段の下の踏み潰されるような場所
  にジッとしていたのか?がストーリー展開の発端でした。 せっかくなのでアウトローも再登場させました。^^

   また、石段で潰されることを避けた・・という事実を基に、苦慮するガマガエルのジャンピーが 、自分の
  苦しみを語れる相手に出会い、今、することをみつけ、そのために食事をしたり、きれいな身支度に自分を
  変えるという形からの変化を積み重ねながら、最終的に自分の中の生きようとする声に気付くという 内容で、
  「生きる」ことのテーマも、私などにはおこがましい内容と思いつつ、折り込ませていただきました。
   物語の上でも、現実でも、ガマガエルが再び、石段の下でうずくまることのないよう願いを込めて・・。
  
    せっかくなので、登場する動物達の補足させていただきますと、主人公ジャンピーは、森のはずれで神社に
  近い場所の湧き水のほとりに暮らす設定であり、日頃、宮司さんの言葉を耳にして、花の名前を学んだり、
  人間を観察したりする賢いガマガエルです。またマギーもカラスの知恵を素直に受け入れ、時に冷静に、時に
  健気に生きており、春まだ浅い日にウトウトと目覚めて、ちょうど石段の下の出来事を目撃し、心配で食べ物を
  運ぶ心優しいガマガエルです。 また、アウトローは名前のあることを誇りに、森で懸命に生きており、ちょっと
  悪者になってしまったアマガエルも、理想の相手を前にして、ガマガエルがいないと思っていたから、つい、
  けなしてしまっただけで、助けてもらった相手を傷つける気はなかったのです。
   ジャンピーはアマガエルを何度も助けますが、助けたからと言って、恋が実る訳ではない現実を受け入れ、
  ラストにはアマガエル達の無事を祈る思いに行き着きます。 歩む力を教えてくれたマギーをみつめながら・・。

  森の中で生まれた恋の物語・・もし、お疲れの日々をお過ごしの皆様のひとときが、このつたない物語で
  和んでいただければ、とても嬉しく思います。

  偶然ですが、恋の物語にした内容を、ちょうどホワイトデーに10,000件を達成できた記念にアップできた
  ことを嬉しく思います。心からの喜びと感謝の元に、披露させていただきます。

   本当にありがとうございます。
                                                                                                    2004.3.14   

   追伸
   文字だけの物語でしたが、ハイライトの数カットだけ絵を描いてみました。イメージが伝わると嬉しいです。
                                              2007.4.8
 

        
      ガマガエルの恋物語トップに戻る
      アウトロー スネーク ストーリー(森に来る前のアウトロー)  2匹の亀ちゃん物語トップに戻る
 

                   この物語の著作権はカメリン3にあります。無断転写をお断りします。 
                                     写真は提供元に著作権があります。併せて無断転写をお断りします。