ヒメコウゾ(クワ科コウゾ属) 姫楮
ヒメコウゾ(クワ科コウゾ属)姫楮 別名 こうぞ 古名 (たく) 楮(かぞ) 穀(かぢ) 紙麻(
かみを) 楮(かず) 楮(かんず)楮(こぞのき)かご 紙木 山楮 山楮(やまかじ) 山麻(やま
そ)黒麻(くろそ)
本州、四国、九州に分布する樹高2〜3mの落葉低木。雌雄同株で花期は4〜5月、新枝に雄花と雌花を
付ける。雄花序は1cmほどの球形で新枝の基部の葉腋につく。雌花は、5mmほどの球形で新枝の上部の葉
腋につき赤紫色の花柱が目立つ。葉は単葉で互生し4〜10cm、歪んだ卵形から2〜3深裂するものまで
ある。
樹皮は、褐色で細長く楕円形の皮目が目立つ。果実は、集合果で1〜1.5cmの球形で6〜7月に赤褐色に
熟す。クワ科の植物には、コウゾ、ヒメコウゾ、カジノキ、桑にも山桑、真桑とあり、葉の切れ込みの形
状は良く似通っています。画像は、ヒメコウゾで樹皮の繊維を和紙の原料とするコウゾはヒメコウゾとカ
ジノキの雑種と言われています。カジノキは、雌雄異株で、ヒメコウゾは雌雄同種であり、コウゾには、
カジノキ型とヒメコウゾ型があり双方の性質を受け継ぐ交雑種があるようです。ヒメコウゾの根は、地中
に縦横に広がり途中から新芽を出し群生する傾向があり、樹皮は切れ難く、刈り取っても次々と新芽を出
す特徴からヒメコウゾも古くは和紙や織物の原料とされていました。
万葉集には、たく・たえを表す文字としてが用いられています。
水沫(みなわ)なす脆(もろ)き命も縄(たくなは)の 千尋(ちひろ)にもがと願い暮しつ 巻五・九〇
二 山上 憶良
縄の永き命を欲(ほ)りしくは 絶えずて人を見まくほりこそ 巻四・七〇四 巫部 麻蘇娘子
領巾(たくひれ)のかけまくほしき妹が名を この能勢山にかけばいかにあらむ 巻三・二八五 丹比真人笠麻
呂(たじひのまひとかさまろ)
たくひれの白浜波の寄りもあへず 荒ぶる妹に恋ひつつそをる 巻十一・二八二二 作者不詳
衾(たくふすま)新羅へいます君が目を 今日か明日かと斎(いは)ひて待たむ 巻十五・三五八七 遣新
羅使人
春過ぎて夏来たるらし白たへの 衣ほしたり天の香具山 巻一・二八 持統天皇
白たへの袖別るべき日を近み 心にむせび音(ね)のみし泣かゆ 巻四・六四五 紀女郎(きのいらつめ)
白たへににほふ真土(まつち)の山川に あが馬なづむ家恋ふらしも 巻七・一一九二 藤原卿(ふじわ
らのまへつきみ)
あらたへの藤江の浦にすずき釣る 白水郎(あま)とか見らむ旅行く吾を 巻三・二五二 柿本人麻呂
留め得ぬ命にしあればしきたえの 家ゆは出でて雲隠りにき 巻三・四六一 大伴坂上郎女
置きて行かば妹恋ひかむかもしきたへの 黒髪しきて長きこの夜を 巻四・四九三 田部檪子(たなべのい
ちひこ)
神山(みわやま)の山辺真蘇木綿(まそゆふ)短木綿 かくのみからに長くと思ひき 巻二・一五七 高市
皇子尊
山高み白木綿花に落ちたぎつ 瀧の河内は見れど飽かぬかも 巻六・九〇九 笠金村
コウゾの古名はタク(栲)と呼ばれていました。このタクが布を表すタエへと転じたようです。ヒメコウ
ゾ、コウゾ、カジノキは、皮を剥ぎ蒸して水に晒し繊維にします。この繊維を糸にしたものを木綿(ゆう
・ゆふ)と呼び、この糸で織り白布としたものを栲(たえ)栲布(たくぬの)と呼ばれたことによります
。現在も白妙として引き継がれています。さらにのちには、この繊維で紙が漉かれるようになると楮紙(
コウゾガミ)と呼ばれ、いつしかコウゾと呼ばれるようになりました。コウゾは、「紙のソ」であり ソ
は繊維を表しています。独特な葉の形状には理由があると思われます。下から見上げると光合成に都合の
良い構造に見えます。葉が重なり合っても葉の隙間から光が差し込むのが良く分かります。これも植物の
持つ知恵なのでしょう。







