オケラ(キク科オケラ属) 朮
オケラ(キク科 オケラ属)朮 古名 うけら(宇家良)をけら
本州、四国、九州にかけて分布する草丈30cm〜60cmのキク科多年草。花期は9月から10月
で枝の先端に白、又は淡紅色の頭花を付ける。雌雄異株で筒状花の先端は5裂し、雌花は花柱が
飛び出し雄花には花粉を持つ。葉の変形した硬い魚骨状の総苞が花を守るように花全体を包む。
葉は互生し卵形で先端は尖る。下部の葉には長い柄を持ち、奇数羽状複葉で縁には剛毛があり硬
い。果実はそう果。根茎は、やや長く節があり有毒であるが、白朮(びゃくじゅつ)と呼ばれる
生薬として用いられる。オケラは古くは、ウケラと呼ばれ、花を包む苞葉を魚具の筌(うけ:竹
で作った川魚を捕る籠:)に例えた説、三裂した葉を昔の雨具、朮(うけら)に見立てたとする
説などがあります。京都の八坂神社では、毎年、大晦日から元旦にかけて「朮祭り(おけらまつ
り)と呼ばれる神事があります。鑽り火(きりび・ヒノキなどの堅い板に堅い棒を揉み込み起こ
した火)により、きりだされた御神火に、ひとびとの願いを記入した「をけら木」とともに、夜
を徹して焚かれます。火縄に移したその火を消さない様にくるくる回しながら持ち帰る「をけら
火」を神棚の灯明にしたり、雑煮を炊く火種とします。
この無病息災の祈願「朮火」に焚かれるのがオケラの根茎とされます。このお祭りは、オケラの
薬効に由来しているようです。オケラの根茎を乾燥したものは、生薬「白朮( ビャクジュツ)
」と呼ばれ、痛みや炎症を抑える作用、利尿作用、潰瘍を抑制する作用、胆汁分泌を促進する作
用などの薬効があり、健胃、整腸、利尿、鎮痛の目的で胃腸病、神経痛、動機息切れなどに適用
されています。この薬効から無病息災の神事「朮祭り」へと発展したようです。
オケラは古名ウケラ(宇家良)と呼び、万葉集には三首が詠まれています。
恋しければ袖も振らむを武蔵野のうけらが花の色に出なゆめ 巻十四・三三七六 作者不詳
我が背子をあどかも言はむ武蔵野のうけらが花の時なきものを 巻十四・三三七九 作者不詳
安齊可潟潮干のゆたに思へらばうけらが花の色に出めやも 巻十四・三五零三 作者不詳
見た目には地味な花ですが、その特徴からかえって目立つ花の様子が詠まれています。長野県の
里謡に「山でうまいはオケラにトトキ(ツリガネニンジン) 里でうまいはウリナスビ 嫁に食
わすも惜しゅうござる」と歌われるように若芽を山菜としているようですが、どちらもこれまで
縁がなく一度は食べてみたいものです。園芸種なのではと思えるほど奇妙な形をした花ですが、
古くから、山菜、生薬、歌にも詠まれ、さらには文化へと身近に親しまれて来た植物です。





