今井登志喜著『歴史学研究法』東大出版より


外的批判と内的批判

                                        ホームへ戻る    概説へ     内的批判へ

史料批判は一般に、史料の外的な条件を検討する「外的批判」と、史料に記された内容を評価する「内的批判」とに分けられる。

外的批判

史料の外的な条件を把握することが必要である。これらは史料の証拠価値の判定基準となる。例えば、次のような視点から史料の確かさを検討する。

(1)偽文書でないかどうか(真偽)

偽作についての検討

1. その史料の形式が、他の正しい史料の形式と一致するか。古文書の場合、紙・墨色・書風・筆意・文章形式・言葉・印章などを吟味する。

2. その史料の内容が、他の正しい史料と矛盾しないか。

3. その史料の形式や内容が、それに関係する事に、発展的に関係し、その性質に適合し、蓋然性を持つか

4. その史料自体に、作為の痕跡が何もないか。その作為の痕跡の吟味として、以下のようなことが挙げられる。


    (1) 満足できる説明がないまま遅れて世に出た、というように、その史料の発見等に、奇妙で不審な点はないか
    (2) その作者が見るはずのない、またはその当時存在しなかった、他の史料の模倣や利用が証明されるような      ことがないか。

    (3) 古めかしく見せる細工からきた、その時代の様式に合わない、時代錯誤はないか。

    (4) その史料そのものの性質や目的にはない種類の、偽作の動機から来たと見られる傾向はないか。

その他、偽作がその内容の種本にした史料との比較によって、明らかに偽作とわかったりすることもある。

   * 偽作に関しては、身近な例として「偽書」や絵画の贋作、「旧石器捏造事件」 を思い出していただきたい。

錯誤についても、偽作を検討する作業の中に、適用できるものが含まれる。混入変形がある場合の吟味の基礎は、詳細な比較研究である。

(2)史料が作られた時・場所・人間関係を吟味する(来歴)

古い時代の文学作品等には、作者や著作日時が不明のことが多い。また公私の記録文書、ことに原本がなく写しのみの場合、例えば人々の書簡集のようなものには、これらが欠け、または不十分なことが多い。 日時・場所を明らかにすることは、事の経過や状況を知るための基本である。

史料の日時を考察する。外的・内的の両方の吟味を行う。



外的吟味
            1、ある日時の明らかな史料のことが、その史料の中に出てくる。

            2、ある日時の明らかな史料の中にその史料の事が出てくる。

            3、共存する他の時間的関係の知られている史料から判断する。

         4、時として技術的関係からの判断による。たとえば手紙に日付がなくても、
           その到着した時がわかっている場合。

            5、それが時間の知られている史料の断片であることの考証による。など

内的吟味
            1、比較研究。すでに日時の明らかにされている他の史料と、外形的特徴たとえば
            様式材料技術等を比較する。


         2、文献的史料では、特に言葉、スタイルなどがおおいに標準となる。文語体でも時々
            何か時代をあらわす要素が含まれている。


            3、記録等の場合、その記事の内容に手がかりを求め、それによって判断する。
            ある時より、前か後かを明らかにできるだけでも、その史料の利用に役立つ。


その他、場所の吟味、人物の吟味など。

言語で表現された史料の場合、その史料の作者の地位・性格・職業・系統等が明らかにされれば、それがその史料の信頼性等を判断する根拠となって、その史料を用いる際に都合が良くなる。

(日常語の「来歴」という言葉でイメージする、例えば当事者の子孫に代々伝えられてきたのか、出所不明なのか、などの要素は、外的批判が対象とする、史料の外的条件全体に影響する要件であるが、史料批判用語とは少し意味が違うので、どちらの意味かについては注意が必要である。たとえば偽書関係の文献):以上()内は筆者

(3)オリジナルの史料かどうか(本源性)

史料の利用について特に注意するべきことは、オリジナル史料借用史料の区別である。各史料の要素を細かく分解し、親近関係が疑われる史料と比較し、これによってそれらのオリジナル性や従属性を確かめる。その理論的根拠は

         1、一つの出来事について、各人の観察把握の範囲および内容は、すべての個々のことについて、
          特に偶然的なことについて、みな一致するということはない。


         2、各人が同じ一つの事を述べるとき、その表現の形は同一ではない。

         3、すでに他人によって言語的に発表された表現内容に一致する証言は、少なくともその付随事項の一
         致により、またしばしば誤解があることによって、その従属性が明らかになる。

         4、二個以上の報告が同じ内容を同じ形式で述べる時、それらの史料には親近関係がある。
         これらの史料にどういう系統関係があるかを判断する。