今井登志喜著『歴史学研究法』より
概説
           (
歴史学とは・史料とは・史料批判とは・史料批判の必要性について)

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(歴史学とは
歴史学経験科学であり、経験的な証拠物件を基礎として実証的に成立する学問である。

(史料とは)
歴史研究の証拠物件が史料である。

史料とは、文献口碑伝説のみならず、碑銘、遺物遺跡、風俗習慣など、「過去の人間の著しい事実に証明を与えうるものすべて」である。

(史料批判とは・その必要性について)
史料批判
は、収集された多くの史料が、証拠物件として役立つかどうか、またもし役立つとしたら果たしていかなる程度に役立つかを考察することである。これは大体、前から用いられていた考証という語に当たるが、Kritikという鋭い原語を生かして、この訳語を用いることにする。

以下は文献史料を中心に述べるが、偽造・錯誤・虚偽などについての検討は、美術品・工芸品や遺物・遺跡にも当てはまる。

史料として提供されるものには、しばしば「全部もしくは一部が本物ではない(偽作)」とか、あるいは「それまで承認されていたようなものではない(錯誤)」、というようなことが発生する。

偽作(贋造)のできる動機を数えると、

好古癖・好奇心・愛郷心・虚栄心などに基づく動機、宗教的動機などが挙げられるが、なんと言っても利益、ことに商業的利益の目的を動機としたものが最も多い。そしてこれらの動機に基づく偽作は、ほとんどすべての種類の史料に行き渡っている。

中世ヨーロッパでは、領地などの権利を強固にするため、多くの偽文書が作られた。そのほか、家格を良くするための虚栄心からくる偽文書がある。わが国でも戦の感状などに偽造がある。西洋では教会に偽文書が多くある。ローマ法王に関するイシドールス法令集は偽文書としてよく挙げられるものである。偽作の種類は非常に夥しい。

また、何らかの理由で錯誤が起き、その史料が、違う時代や人物に当てられ、間違った説明が加えられて、踏襲されたりすることもある。 これら偽造や錯誤が、全部でなく、一部であることもある。 したがって、史料の正当性・妥当性は、常に注意深く吟味されなければならない。

また、史料が証言する内容について、どの程度信頼できるか、どの程度証拠力があるかを、評価する必要もある。証言者は事実を述べることができたのか、事実を述べる意志があったのか、という二点で検討されなければならない。

史料批判は一般に、史料の外的な条件を検討する「外的批判」と、史料に記された内容を評価する「内的批判」とに分けられる。