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**CR小説**
オレには、居場所が2つある。
「あ、母ちゃん?二三矢だけど。」
『まあ、もう着いたの?随分早かったのねぇ。』
「うん、予定より1本早いのに乗れたから……兄ちゃんは?」
『元?惜しかったわね、ついさっき出たばかりよ。
確か、バイト先に用事があるとか言ってたわ。』
「そうなの?迎えはいいって言おうと思ったんだけど……
だったら、改札の近くで待ってた方がいいかな。」
京都−ここは「帰る場所」。
「兄ちゃん、こっちこっち!」
「二三矢?なんだ、えらい早く着いてたんだな。」
「うん、1本早いのに乗れたから。兄ちゃんこそ、用事はもういいの?」
「ああ、忘れ物を取りに行っただけだからな。
さてと……そうだ、どっか寄ってくところはあるか?」
「んー、それじゃ……」
ここではみんな、オレのことを「二三矢」と呼ぶ。
「岩ちゃん、久しぶりー!」
「よぉ、二三矢やないか!今日こっち来たんか?」
「うん、さっき着いたところ。」
「なんや、そうと分かっとったらみんなに連絡しといたのに。
今年もやっぱ、山に篭るんやろ?」
「そうだけど、しばらくは家でゆっくりするつもりだよ。」
「よっしゃ、そんなら今度の週末あたりに同窓会やるで!
時間と場所は後で連絡するから、そのつもりでな。」
「はは……やっぱり今年もそうなるかー……」
だから、そう呼ばれると「帰ってきた」って実感できる。
そして千葉、トムキャッツ寮−ここは「戻る場所」。
「加縫、酒希!」
「おう、遅せーぞ四方!」
「おまえなー、5分前に来たくせに威張んじゃねーよ!
今年もよろしく頼むな、四方。」
「ああ、こちらこそよろしく。……5分前?」
「そうなんだよ、実はこいつ……」
「だあっ、それ以上言うんじゃねーっ!!」
ここでは皆、オレのことを「四方」と呼ぶ。
「四方さんって、今年も山に篭ってたんですか?」
「ああ、そうだけど?」
「すごいですね、山なんてオレが行ったら速攻で遭難しそうですよ。」
「遭難って、冬山登山じゃあるまいし……そりゃ全く危険がないとは言わないけど、こうしてオレが戻ってきてるんだから大丈夫だよ。」
「いや、それで『大丈夫』と言い切られても……」
だから、そう呼ばれると「戻ってきた」って実感できる。
「だぁっ、やっぱ短距離じゃ四方に勝てねーっ!」
「でも、マラソンじゃ雄根さんには到底かないませんから……
せめて短距離くらい、オレに勝たせてくださいよ。」
「いーや、次こそは絶対おまえに勝つ!
で、負けた方が今度の休みにメシおごるってことでどうだ?」
「おおっ、それいいっすね!オレもまぜてくださいよ。」
「おう、何人でもかかってこい!」
「加縫、おまえ雄根さんにも勝ったことないのにいいのか?」
「あーっ、おまえもう自分が勝った気でいるだろう!」
そして、「戻ってこられた」ことをうれしく思うんだ。
『さぁこれでツーアウト満塁、トムキャッツは一打出れば逆転だ!
ここで次のバッターは4番四方、これはシャークスにとって本日最大のピンチです!!』
「よーし四方、思いっきり打っちまえ!……あーでも、オレの出番も少しは残してくれよな。」
「……それはつまり、ホームランを打つなってことか?」
「いや、打ってもいいけどランナーを一人くらいは残しとけ。」
「無茶言うなー!」
オレは……あと何回、ここに戻れるんだろうか?
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