素堂消息、元禄元年(1688)

◇十月『一字幽蘭集』水間沾徳編。

◇『大通庵主道円居士追善七吟歌仙』

◇素堂、『素堂亭十日菊』

◇素堂、『芭蕉庵十三夜』

 

(9月30日改元)

元禄1年( 戊辰)1688(47歳)   

 

◇十月『一字幽蘭集』水間沾徳編。

「俳林一字幽蘭集ノ説」

素堂著、佐々木文山(書家)写(別掲)

河骨やつゐに開かぬ花ざかり        素堂

一葉浮て母につけぬるはちす哉            々

魚避て鼬いさむる落葉哉             々

茶の花や利休が目にはよしの山            々

 

◇『大通庵主道円居士追善七吟歌仙』

内窪のくぼかなるより洩る月        素堂

 

◇素堂、『素堂亭十日菊』

蓮池の主翁(素堂)又菊を愛す。

きのふは龍山の宴をひらき、

けふはその酒のあまりをすゝめて、

狂句のたはふれとなす。

なを思ふ、明年誰かすこやかならんことを

 

いざよひのいづれも今朝の残る月  はせを                          

残菊はまことの菊の終りかな        路通

咲事もさのみいそがじ宿の菊        越人

昨日より朝霧ふかし菊畠            友五

かくれ家やよめなの中に残る菊           嵐雪

此客を十日の菊の亭主あり          其角

さか折のにひはりの菊とうたはゞや  素堂

 

よには九の夜日は十日と、

いへる事をふるき連歌師のつへしを

此のあした紙魚を拂ひて申し侍る。

又中頃恋になぐさむ老のはかなさ、

むかしせし思ひを小夜の枕にて、

我此心をつねにあはれぶ。

今なほおもひつまゝに

はなれじと昨日の菊を枕かな      素堂

 

◇素堂、『芭蕉庵十三夜』

ばせをの庵に月をもとあそびて、

只つきをいふ。越の人あり、

つくしの僧あり、

まことにうき草のこらず水にあへるがごとし。

あるじも浮雲流水の身として、

石山のほたるにさまよひ、

さらしなの月にうそぶきて庵にかへる。

いまだいくかもあらず。

菊に月にもよほされて、

吟身いそがしひ哉。

花月も此為に暇あらじ。

おもふに今宵を賞する事、

みつればあふるゝの悔あればなり。

中華の詩人わすれたるににたり。

ましてくだらしらぎにしらず、

我が国の風月にとめるなるべし。

もろこしの富士にあらばけふの月見せよ    素堂

 

☆柳沢保明御用人となる。