海洋手記第一弾
2002/ 9/ 6 17:08
メッセージ: 3305 / 6014

投稿者: メッセージを送信ilkuji_99

本トピの活性化のために、又、常に尊敬している旅人木おっさんと
マーボーおっさんに感謝の表現として私の航海士体験談を定期的に
載せるようにします。よろしく。



海賊に出会う

日本の水島を出港した本船は一途中近東のアカバを目的地にして南支那海を切り走った。出港する前、本社の無電連絡を受けた船長は1、2、3等航海士をサロンレストランに呼んだ。船長は本社の電文をみせながら「南支那海航海途中、ベトナム難民船を発見するか難民船から救助を要請されても無視して全速航進せよ」との命令を下ろした。航海士として命令に従うしかないが人道主義より利益だけを追求する商業主義を冷たく感じた。勿論難民たちを救助するえば予定航路を外れて隣の港に入港すべきであるし、彼らの入国手続などで時間が遅滞され予定とおり運航ができず、従って金銭的に会社が多くの損害をうけるのは事実である。

水平線と海だけみえる退屈な航海がまた始まった。たまに本船と走り試合をするようんい並んで走りながらジャンプをするイルカたちと翼のようにヒレをばたつかせて飛ぶ飛魚だけが唯一な友だ。心配してた難民船とは遭遇しなかった。そしてシンガポルを過ぎながら片思いで終ったあの看護婦を思い出した。

狭いマラカ海峡。東西洋の関門というこの海峡は陸上道路の中央線みたいに海図上に出ている線の両側にわけて往来する船が航行する。世界で航海者に一番難コースで有名な日本の瀬戸内海のように航路が乱れている。漁船や大小貨物船および旅客船が横断し灯台はあちこちでライトをきらめく。レーダーをつけて一を確認しながらスマトラ島の西側先をレーダーのスクリン上で確認するのにかいぞと模様が違う。慌てて仔細にみると海峡のほうに海を埋立したようにふくらんでいるのに海図はのっぺりしている。海図の制作年度をみたら1935年。海図制作以降、海を埋め立てたのだ。

夕方10而頃、海図室から出て真っ黒のブリッジで目絞りを調節しながら舵手と話をしていた。彼らは何より女話が好きだ。それで負けたくないので学校のとき、女を食った経験をもっと誇張して話したり、一片、女を一日一人づつ食ったという彼らの話を聴いてやらなきゃならない。

突然、11時方向から横断する船舶を肉眼で探知した。航海灯をみたら小型船だけど速度は速い。レーダー上では2マイル前方である。そのまま置いたら危険そうなので舵柄を取っている舵手に命令した。「Port easy!」左へ10度くらい針路を変えろとの意味だ。「Port easy!」と舵手が復唱し、 舵柄を回した。

大きな船が徐々に船首を左側へ回すと一旦危急状況は免れたよう。ところが今度はその船が方向を回し本船1時方向から再び入ってくるのだ。私は「Port!」と命じた。左へ15度との意味だ。しかしその船はもう本船の船首を左にして過ぎる状況だった。私が「Midship!」と叫んだら「Midship!」と舵手が復唱しながら 舵柄を正中央へ戻したら既に本船の前に来ている。再び「Hard Starboard!」と命じた。右へ25―30度とのことだ。

本船が大きく円を描きながら右へ回転するともう本船の左側に付こうとしている。そしてサーチライトをつけて本船に発光信号を送る。無線電話で呼んだら「Water police. Stop engine」と停船を要求する。海上警察だけど調査することがあるそうだ。一旦エンジン・テレグラプ(変速機)をstop 位置に回したら本船の後ろからロープを上げようとしている。

船長が急いで上がってきて「不思議だね」と呟いた。軍服ぶりの人たちが警備艇サイズのボートに乗り、縄ばしごを上げようと熊手のついたロープを投げていあ。 船長の表情が一瞬変ったら「海賊だ!」といって「Full ahead!」と叫んだ。また全速前進をはじめた。2等航海士が船尾へ降りていって欄干にかかている彼らのロープを非常斧で切った。ボートが船尾にあったので本船プロペラの揺れに後ろへ押さえられ激しく揺れた。そしたら騒々しく機関銃の発射音が聞こえた。海賊たちが乗船に失敗すると、むやみに乱射していたのだ。

機関室から 騒々しく電話がかかってきて「どうしたのか?バンカーC油なのに何故停船し、また全速か」と大騒ぎだ。船舶では入出港時やエンジン変速を頻繁しするときはバンカーA油を使い一旦大洋航海がはじまるとバンカーC油をつかうので燃料を変えるときは前もって機関室に連絡し用意をさせるのが普通だが、それをする暇がなかったのだ。

アカバに到着して埠頭に降りたら船尾の鉄板があちこち表に打たれたように入っている誰かがそこに立っていたら即死したはずだった。くらっとした瞬間だった。

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