海洋手記(第二弾)
2002/ 9/ 7 13:20
メッセージ: 3307 / 6014

投稿者: メッセージを送信 ilkuji_99

マーボーおっさん、お久しぶりです。
海洋手記お好きでしたら、こちらも勇気を出して続けて連載してみます。よろしく。


(懐かしいシンガポール)

台湾の基隆で雑貨をいっぱい載せて南支那海を滑るように走った。農産物を附帯に入れた貨物を船内起重機で載せるとき、附帯が張り裂けて甲板上に落ちることがたまにある。落ちた生姜を拾って誰かが韓国焼酎に入れ生姜酒を漬けた。大人の拳何倍ぐらいの大きさでまだ土が付いてる奴を洗って皮を抜いてそのまま焼酎に漬けて一ヶ月ぐらい経ったら引き出して飲むのだ。しかし一ヶ月もどうやって待つの。

一週間後シンガポールに入港し次第、ふたを開けた。酒好きの一等航海士が夕食の終わった後、自分の事務所に甲板部全員を招集した。久しぶりに甲板部の酒席を設けたのだ。厨房長冷凍されたマグロを何皿いっぱい切って来て皆、順番でまだ熟成されてない生姜酒を飲みながら食卓を箸で叩きながら歌を歌った。1、2、3等航海士、見習航海士、甲板長、甲板長補、1、2、3舵手、1、2、3、4甲板員に見習甲板員まあで、総員14名が夕暮れから集まり、飲み始めた。

時間がだんだん流れ体力の弱い老人たちからそろそろ消え始めた。朝、気付いたら残った人は2等航海士と3等航海士の私だけだった。日が水平線に立つのを眺めながらきっちり喜悦を感じた。多分そのように長時間酒を飲んだのはそれが最初で最後だったろう。

いろんな雑貨を降ろすには何日間かかった。甲板長補がある日、突然歯痛を訴えた。私が医薬品担当の航海士だったんで通訳を兼ねていっしょに上陸した。市内の病院に行ったら20代ほどの女医者が出て歯を抜いた。そして終わったんで帰るようにいわれた。廊下に出て船に連れて行ってくれる代理店の人を待っていたら甲板長補は再び歯痛を訴え始めた。慌ててその診療室へ戻って看護婦に聞いたら医者は昼食時間なので出ていったので1時間待つようにいわれただけ。

甲板長補は椅子に座って待ってたが痛いと下にべたんと座ってから、もうころころ転がった。そしたら痛みが消えると、また座り直すのを繰り返した。どうしょうもない状況だった。気が付いたらその看護婦が18、9才くらいの中国系らしけど可愛かった。それで女に久しぶりに言いかけたくていろんな話をして、つい愛を告白した。彼女の顔が真っ赤になった。そして住所を交換した。後であの医者が来て、また治療を受けて船に戻ってきた。

ダイアモンド形の島国、シンガポールは最初、西洋から来た船員たちが発見したとき、獅子が暮らすのをみたとその島の象徴として獅子像を海辺に建てといた。その海辺に整然と並んでいるサテー料理屋。焼き鳥の一種でサテーというマレー系の独特なソースを塗って焼くとその匂いが食欲を懇切に刺激する。現代式ビルと伝統の料理屋が調和して異色的な雰囲気を出すその海辺。

出港後、2週間でスエズ運河に到達、その看護婦に手紙を送ったが受けたがどうか、もしくは本船が不定期船なので返書をこちらがもらえなかったかは分からず、一年後、他の船でシンガポールに行ったとき、その病院のあるビルを探したが歯科病室自体が消えてしまった。マドロスの虚しい恋だったのか?     

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