
投稿者: ilkuji_99 (一等航海士の恋)
一等航海士。寡黙だが自分の任務には徹頭徹尾で上官の命令には絶対服従し、
船内紀綱を担当する位置にある模範的な士官である。入港後、航海に
疲れた体を運んで酒場を訪ねた。そこには毎日変化のない暮しと
お客さんたちからの酒乱に揉まれていた奇麗なホステスが一人いた。
そして彼らはお互いに惚れて愛をするようになった。停泊中、毎日二人は
会ってデイトをしながら将来を約束した。
作業を終えた船舶はやがて出港を目前にした。再会を約束して別れを告げる
彼に彼女は自分を連れていってくれるように訴えた。しかし旅客を
乗せられない商船、特に女子乗船を禁止する船員法を違えることは
できなかった。(当時の韓国船員法は商船の女子乗船を禁じていた)
何より規律担当の自分がその規律を違えるのはできなかったのだ。しかし
女は泣きながら哀願した。悩んでいた彼は仕方なく女を密かに乗せて出港した。
そして自分の寝室に隠した。
数日後、目的地に到達した船は再び錨を降ろすようになった。いったん
停泊をしたらその港の税官員が上がってきて痛感手続とサーチをする。
寝室に女をおいたままでは発覚されるので、彼は入港前に錨を格納する
ホースパイプの中に女をぶら下げておいた。船首両側のアンカー(錨)の中、
右側のアンカーだけを船長が習慣的に使うことを知っている一等航海士は
左側アンカーのホースパイプの中に女を隠したのだ。アンカーの
シャフト(軸)が入るとほぼ空き間のない垂直のパイプの中で女は
シャクル(錨の鉄線)を取って待っていた。
All Standby のベルが鳴ったら船長がブリッジに立って入港を総指揮し、
三等航海士は船長の指示をマイクで船首と船尾に連絡し、一等航海士は
船首に出てアンカーを降ろすため、甲板員たちを指揮し、同時に
二等航海士は船尾で接岸のため甲板員たちを指揮する。
その日はどうしたか船長が直接マイクを取って一等航海士に言った。
「おい、初士!(一等航海士)今日は天気が晴れて凄く気分がいいね。
いつも starboard anchor (右側の錨)だけ使ったね?今日は
port anchor
(左錨)を降ろしてみようか?よし、そうしよう!」といって
「Standby port anchor!」と命じた。
瞬間、一等航海士は自分の耳を疑ったが命令を違えるのはできない。
「Standby port anchor!」と復唱し甲板長に左側の錨の投下準備を指示した。
まもなく「Let go anchor!」と命令が下りた。一等航海士は
「Let go anchor!」と復唱して、同時にウィンドラス(錨投揚機)に
かかっていたアンカーのシャクルがパイプを通じて滑り降りた。同時に
血霧が飛散しながらアンカーは投下された。女との恋が血霧で散華する
瞬間だった。
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