
投稿者: ilkuji_99 船長は痩せた感じでとても神経質的な人だった。複雑な航路なのに航海経歴って
学校のとき、実習船に乗っただけの私が一人で航海当直ができるわけがない。
船長はこの航路のベテランだったが、私の当直に見視しかできないので船長が
実質的に当直を担当する形である。それに狭水路を通過するときは必ず船長が
直接指揮して運航する。当然、休む暇が少ない。
しかし
狭水路通過し船長はパイロット手当をもらうので給料がわるくないはずだ。
通常、総トン数5千トン以上の船が内海を通過するときは必ずパイロット
(導船士)が乗船、運航するようになっている。が、定期運航船は船長が運航
できる。
釜山の象徴、五六島をまがって針路112度に固定して航進した。夜間航海には
前方がよくみえるように電灯を消すので真っ黒のブリッジだが対馬付近のイカ
漁船の集魚灯は遠くても明るすぎてすぐ近くにあるようにみえる。イカは明るい
光が好きなので
集魚灯をつけたら互選の周りには集まったイカの群れで水面の
下が白くみえる。
関門海峡に入ったらもう翌日も朝だ。船長は前方をみて連続的に操舵命令を
下ろす。ブリッジの中で船の両側をみていると、まるで車で走ってるような
気がするほど狭い海峡だ。1度の誤差も許さない正確な操舵が必要なところだ。
関門橋の下を過ぎてしばらくすると海はいきなり広くなる。いわば周防灘である。
漁船があちこち集まり、もしくは単独的に作業をしている。小さな島は無数に
散在していて、又、本州と四国を繋げるフェリ船は頻繁に本船の針路を横断する。
灯台の閃光周期と閃光の長さを海図で確認してちょっちゅう針路を変更しなけれ
ばならない。あまりにも複雑な航路で混んでるので陸上道路の中央線のように
海図に中央線が描いてあり、実際海上にその中央線にブイが浮かんでいてまた
閃光を発している。
海図をみて灯台を確認し、針路変更するにはもう遅い。変針点にいきなり
フェリが入ってきたり漁船が停泊しているのだ。先ずはぶつからないように
避けないといけない。やはり無数な島と灯台、それにどこの島やブイを過ぎると
何度に回すかをおぼえていなければならない。初回の航海にそれができる
はずがないが、船長はめちゃくちゃ叱る。当直が終わり自分の部屋に戻ると
そのまま倒れるほど緊張の連続だった。(つづき)
(INDEXに戻る) (1つ前に戻る)
|