
投稿者: ilkuji_99 全船員の半数が交替されたその船舶は職位別引継ぎと引受けで目茶苦茶忙しかった。学校のとき軍事教育団の制式訓練担当の軍曹が言ったことが思い出す。忙しすぎることを何といえば一番いい表現になるだろうか?それは「放尿してから亀頭をはたく暇がない」とのことだ。
とにかく私も前任二等航海士から引継ぎしてもたっらものの、船内雰囲気が悪くてちょっと働きにくいといわれて少し心配した。前任者たちが離船してから次の日、いわば乗船の次の日の朝、船長が呼ぶのでいってみたらサロンボイが泣きそうな顔をしていて、船長が代理店の人に連れていくように言った。サロンボイとは船長、機関長、1航士、1機士および通信長の食事の厄介をみたり部屋掃除を担当している職位だけど、昨日一緒に乗船したサロンが一日ふりに降りるなんて何か間違ったことをやったんで船長が退去させようとするらしい。
一旦代理店の人と一緒に船を降りたサロンは半日過ぎて帰ってきた。規定により乗船一日では退去が不可だそうだ。船長は渋い表情をしたがサロンは振り向いて笑ってる。多分船長が飴を食わされたのが面白いとのことか。船長が怒った理由を聞いたところ、乗船の日の夜、埠頭近所の酒場にいってメスサロン(女サロンじゃなく2―3航海士・機関士の面倒をみるサロン。サロンの下)と酒を飲んでるのに船長も奥のテーブルに座っているのをみつけて、カウンターで酒代を払うとき手の親指で後ろを刺してはそのまま出て行ったとのことだ。
あとで船長がサロンの酒代を払わせられ、来たばかりのサロンが敢えて無礼なことをしたと興奮して追い出そうとしたのだ。後でわかったことだが、上陸して船長に酒場で出会ったら無条件逃げるのが上策だそうだ。なぜなら自分が払うのはさておき、船員たちに酒を奢ってくれと押されるなら誰も好きじゃないはずだ。最初はイタズラだと思ったのに、それがそうじゃない船長の癖だった。そんな船長に敢えてサロンの奴が酒代を代納させられたら興奮するのも可笑しくないだろう。
始めから憎みを売ったサロンは船長に毎日苛められながら生活した。後ほど少し直ったけど今度は逆にサロンが船長にそろそろ飴を食わしはじめた。船長がTシャツを渡し、アイロンをかけるように命令したら、べつにアイロン要らないほど綺麗だと下級船員の食堂で(当時本船には階級群別に食堂が4つあった。サロン、メスサロン、甲板部、機関部船員用)楽しく遊んだ後、アイロンかけずにそのままそのシャツを持って帰って「船長様、アイロンかけました」という。まるで昔、中国の秦始皇が死んだ後、その息子が執権したら大臣など部下たちが彼に飴を食わすために彼が馬をみて馬と呼んだらば「違います、陛下。それは犬です」と無理押ししたとの古事があるけどその様だ。
自分の奥さんの自慢は常に口につけてる。結婚式のとき、式場の入口に立っていたら女優みたいな女が近づいてきて自分の腕を組んだって。びっくりしてどちら様ですかと聞いたところ、自分の新婦だとやっとわかったとか。そのサロンが乗船6ヶ月経っていきなり船長に帰郷したいといったら今度は船長が許可しないという。憎みが変ったのかは分からないものの状況が逆転されたというべきか。
そのまま又何ヶ月経ってから今度こそ帰らなければならないそうだ。事由を聞いたところ、奥さんが浮気して逃げたとの消息を家族からの手紙で知ったそうだ。そんなに自慢してたお嫁さんなのに結局逃げたのか。とにかく我らと同期乗船したけど我らより一、二ヶ月早く降りた。船を継続乗船したら今ごろ調理長になっているはずのあの男。この頃みたいに楽しみがないときに偶々思い出す男である。
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