船窓夜話―第20話―タンパにて
2003/ 3/19 18:32
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投稿者: メッセージを送信 ilkuji_99

ある日、秋の風がかなり寒くて冬を予告するように吹いてたとき、アメリカのフロリダ州のタンパに寄港するようになった。当時は静かで小さな田舎の町だった。治安問題でひとりで上陸しないように薦められたが、荷役が遅く終ったため、帰国お土産を買いに埠頭近所のスーパーに一人で行った。腹が減ったせいかお土産より食料品を多く買ったのでいっぱいなった分量を持ってカウンターにいったら黄色い紙のパックに入れて両腕を開かせた後、その上においてくれる。

両腕でそれを持って外へ出たら埠頭まで歩いて行くことが大変だった。人が通らない暗い道を歩いていたら旧型乗用車が来て隣りに止まった。中の黒人女二人が俺に乗せてくれるそうだ。少し恐かったけど仕方がなくて乗った。船員といったら埠頭まで乗せてやるから友達一人を呼び出して4人でグループセックスをしようと誘われた。彼女らの年は20代程度でみえたが、もしかして強姦でもされるかを考えたら恐くなった。信じない読者もいるはずだが。埠頭に到着して待たせて帰船したが、行こうか辞めようか迷ったが一緒に行ってくれる人がいなくて諦めて足洗ってから寝た。

翌日にも夕方暗くなってから同僚二人と外出した。道の両側に葦の茂る人道を歩いていた。しばらく歩いたら後ろから乗用車が矢のように走ってきて車道に近く歩いていた機関士を一機に引いてバンパーの上に載せたまま走った。あっという間に起こった出来事だった。女子運転者がスピード違反して走ってて不注意で人道を歩いていた人を引いてしまったのだ。その車は被害者を落してからそのまま逃げた。落ちたところを走っていってみたら動いてなさそうだ。一旦負ぶってタクシを呼んで病院にいったところ、既に死亡した後だった。警察に申告したが別に事務的な態度にもっと腹が立った。自国民がやられても同じ態度だっただろうか。

翌日の朝、現場に行ってみたら既にブルド―ジャーで現場の周りの葦を奇麗に除去した後だった。現場保存のためにもそのまま置いとくのが常識なのにわざと現場を毀損したのだ。捜査を助けるために?いわば全部車道なので車道を歩いてた被害者が悪いようにさせるためだった。数日を待っても容疑者を取ったとの連絡はなかった。そもそもそういう態度で捜査をして取れるもんか。取れないんじゃなく、とらなかったかも知れない。

死んだ機関士は筆者と仲のいい友で韓国には年寄りの両親しかいない一人息子だったのに、既に死んだ人は仕方ないとしても老父母は誰が扶養するかを考えたらヤンキーたちの無誠意で傍観的な態度がもっと憎かった。補償は全然もらえずに本船はそこを離れるしかなかった。

帰国後、同窓会に寄って事件顛末を打明け、老父母を助けるために募金を始めた。一人息子が外国で横死したあと、彼らは毎日を涙で夜明けしていた。ある程度募金して伝えてからも同窓会では持続的に助けるようにした。船に乗りながら多くの友達と同僚を失った。しかし誰かがやらないといけないこと。今はもっと便利な世の中になり後輩たちの船乗りも楽になったと聴いた。しかし先輩たちの血と汗で立てた海運立国の過去を忘れてはいけないと思う。

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