船窓夜話-第25話-トンキホテ-その3
2003/ 6/19 8:50
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投稿者: メッセージを送信 ilkuji_99

東南アジアを通じて中近東まで往復する航海なのでサウジを出港するときから副食がだんだん干始めた。常に副食費横領を疑われていて調理状態が不実だと怨嗟の的になっていた厨者(厨房長)なので今更副食倉庫の状況を知ったとしても納得する船員はあまりいなかった。印度洋を渡って帰ってくる途中、船長の令で傭船会社側に電文を浮かべた。シンガポルで副食を買うから入港を許可してくれるように。しかし会社側は埠頭滞船料を負担するのが嫌なので入港申請を却下し、日本に来て副食を載せるように提案した。船長は自分の申請を却下した会社側に歯ぎしりをした。

ある日、航海中に開かれた会食の場で数名の甲板部船員が厨者に副食状態について不満を吐露し、相席中のストーキが厨者の肩をもつ通信長(商船では厨房チームは司厨部と呼ばれ、司厨部の頭の通信長の指揮を受ける)と口喧嘩を開いた。酔ったこともあるし、ストーキは船員たちの立場を代弁するとの英雄心も作用しただろう。多血質のストーキは通信長に無礼を犯し、常によく泣く通信長はその場で泣きながら船長室に上がっていった。船長はサロン士官たちを招集、紀綱委員会を開いた。この席で通信長が未だ泣きながらストーキの無礼さを涙で訴えたし、船長は1航士に対策を聞いた。“ストーキをどうする?”1航士は自分が紀綱担当士官だから聞かれたというより自分が連れて来た船員がトラブルを起こしたのでどうするというように聞えた。

“行かせましょう”と1航士が答えた。下船させようとのことだ。系統上直系上司ではないが下級船員が司厨部の頭の高級士官に欠礼をしたのでいくら連れて来たとしても仕方がない。もし、その場で1航士がストーキを弁護したとしたら今度は1航士の勤務姿勢が裁判されるところだった。実は船長自身も義理の弟を甲板部員で連れて来た立場だが誰が敢えて船長を批難できるか。下級船員たちとしては偶には士官や船長の悪口もしたいけど同僚の中で船長の義理の弟がいるので悪口もできずストレスが凄く溜まる。

青春を青い波の上で流し、やがて甲板部一般船員の花と呼ばれる甲板長になる直前に下船処分を受けたストーキは茫然自失した。自分は船員達を代表して副食状態の不良を問い詰めるつもりだったのが酒のせいで 司厨部の頭を傷つけて泣かせてしまったので今更後悔してもしょうがない。ストーキはその日から意気消沈になり自分の部屋から出ようともしなかった。その数日後、ストーキはウィスキをいっぱい飲んでから夜中に船長室に上がっていて戸を叩いた。寝ていた船長は招待してないストーキの訪問を受け、困っていた。ストーキは声を出し“俺、大江(大洋)で飯食った者なのにこんな待遇をしていいんだ?”といって“一度許して!”と叫んだ。船長は翌日話そうと答えたがストーキは帰ろうともしなかった。“俺がいかにこの船のためにチンポが落ちるほど働いてたのにこんなことするのかよ?”といいながら拳で壁を打った。そしてウウンとトラが咆哮するように泣き出した。

ストーキの大声に驚いて走って来た1航士と2航士が船長室に入ってストーキくを止めようとしたら今度は1航士に飛び掛かった。“初士、お前が俺にこんなことしていいのか?”1航士は“早く出ていけ!”と引張って出そうとしたら髪の毛がストーキの手に掴まれ、あちこち引っ張られた。2航士が“ストーキさん、一旦降りていきましょう”と宥め、実習航海士まで飛び掛かって数人でストーキをやっと引っ張り出した。船長は怒って“黙っていたら甲板長昇進上申書を出してやろうとしてたのに駄目だな”と顔を顰めて呟いた。1航士は船長の商船大14年後輩だが全ての麺でお互い合わなく特にストーキの反抗事件などでこれ以上本船生活が不可能だと判断、船長に自ら下船届けを出した。

(続き)

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